アーティストの窪田望が監督したドキュメンタリー作品『AIが消し去る声』が、ドイツの国際映画祭「Berlin Indie Film Festival」でショートドキュメンタリー部門の最優秀監督賞を受賞した。本作は、人工知能の発展とともに進む社会的排除の構造を問い直す内容で、国際的な注目を集めている。
作品は、生まれつき5本指ではなく暮らす裂手症の当事者や家族、医療従事者への取材を通じ、AI社会の背後に潜む「分類の暴力性」を浮かび上がらせる。生成AIの開発現場では、欠けた指などを「エラー」とみなし修正する行為が日常的に行われるが、窪田監督はその過程に潜む「排除の構造」を問題提起している。
『AIが消し去る声』は、これまでにアメリカやタイ、インドで4つの国際アワードを受賞しており、今回の受賞で通算5冠に達した。特にハリウッドのHollywood Stage Script Film Competitionで「BEST SHORT DOCUMENTARY」、ニューヨークのICP Entertainment Film Festivalで「BEST HUMANITY FILM」を獲得するなど、高い国際的評価を得ている。
国内でも上映と議論の場が広がっている。2025年12月には東京ドキュメンタリー映画祭で上映され、渋谷で開催されたAI BB TOKYO 2025の特別プログラムとしてトークイベントも開かれた。イベントでは窪田監督が登壇し、「AIに何を教えるべきか」「倫理的態度をどう保つか」といった問いを来場者と議論した。続くクロストークでは、出演者の浅原ゆき(NPO法人Hand&Foot代表理事)と裂手症当事者のすらいむが登壇し、「存在しなかったことにされる恐ろしさ」を語った。
窪田はAI技術の研究者であり、20件のAI特許を持つ企業経営者でもある。AI開発で排除されがちな「外れ値」に焦点を当て、社会で見落とされる存在の意味を掘り下げてきた。彼が掲げるコンセプト「外れ値の咆哮」は、テクノロジーの光の外にある声を可視化する試みである。
作品『AIが消し去る声』は、進化するAI社会における倫理と包摂のあり方を問うドキュメンタリーとして、今後も国内外で議論を呼び続けそうだ。


