NVIDIAは11日(米国時間)、カナダ・バンクーバーで開催中のSIGGRAPHにおいて、ロボティクス分野の開発と展開を加速させる新しいOmniverseライブラリと世界基盤モデル(WFM)「NVIDIA Cosmos」を発表した。併せて、最新のRTX PROサーバーやDGX CloudなどのAIコンピューティングインフラも公開し、開発者が世界中のどこからでも高度なシミュレーションや物理AIモデルのトレーニングを実行できる環境を整える。
新しいOmniverseソフトウェア開発キット(SDK)とライブラリは、産業用AIやロボティクス向けシミュレーションアプリケーションの構築を支援し、リアルタイムでの大規模デジタルツインやロボティクスシミュレーションを可能にする。特にNuRecライブラリは、3D Gaussian Splatting技術を用いて現実世界を高精度に再構築できる点が特徴で、CARLAやForetellix、FiftyOneなどの主要プラットフォームにも統合された。Boston DynamicsやAmazon Devices & Servicesを含む複数企業が、この技術を活用して新たな製造・ロボティクスソリューションを開発している。
Cosmos WFMは200万回以上のダウンロード実績を持ち、テキストや画像、映像から多様なトレーニングデータを生成可能にする。新モデル「Cosmos Transfer-2」は生成速度と精度を向上させ、3Dシーンや高解像度マップなどの空間データを活用したフォトリアルな合成データ作成を効率化した。また「Cosmos Reason」は、ロボットやAIエージェントが人間のように推論し、複雑なタスクを常識的に分解・実行できる視覚言語モデル(VLM)として開発された。UberやMagnaなどが既に導入を進めており、交通監視や自律配送の分野でも活用が広がっている。
さらに、NVIDIAはロボティクス開発全般を支えるインフラとして、トレーニングから合成データ生成、シミュレーションまでを単一アーキテクチャで処理できるRTX PRO Blackwellサーバーと、クラウドから大規模なOmniverseアプリケーションを提供するDGX Cloudを発表。AccentureやHexagonが先行採用した。加えて、OpenUSDカリキュラムと認定制度の新設やLightwheelとのオープンソース協業を通じ、ロボティクス分野の開発者エコシステムの拡大も目指す。
NVIDIAのRev Lebaredian副社長は「コンピューターグラフィックスとAIの融合がロボティクスを根本的に変革する。物理的に正確なシミュレーションとAI推論を組み合わせることで、次世代のロボットや自動運転車の開発が加速する」と述べた。今回の発表は、産業界全体におけるフィジカルAI活用の一大転換点となりそうだ。


