解体業から未来創造型産業への転換を掲げる株式会社都市テクノは、日本総合研究所および武蔵野美術大学と連携し、熊本県天草市御所浦島において新たな共同研究プロジェクトを開始した。舞台となるのは、かつて島民に親しまれていた旧酒屋「芦北屋商店」。現在は使われていないこの建物を、地域創生の拠点として再生しようという取り組みである。
都市テクノは、解体を単なる終わりではなく、「未来をつくる始まり」と位置付ける独自の理念を掲げており、同社の視点は空き家を再利用し、地域の新しい価値を生み出すプロセスにある。御所浦島は豊かな自然や漁業資源を持ちながらも、クリエイティブ産業の基盤は未発達であった。そこで三者は、地域資源と創造的な視点を融合させた新たな社会モデルの実証実験として本プロジェクトを立ち上げた。
本取り組みでは、建築・デザイン・アートといった創造的要素を通じて、御所浦島に新しい文化と産業の芽を育てることを目的としている。単なる空間のリノベーションにとどまらず、移住者や若手クリエイターが活動し、地域住民と共創できる仕組みを備えた“ローカルコレクティブ拠点”としての機能が想定されている。建物の物理的な再生のみならず、地域社会との関係性の再構築を目指す点が大きな特徴である。
また、本プロジェクトの背景には、日本総研と進める「自律協生社会」の実現に向けた共同研究がある。同研究では、都市と地方が支え合う新しい社会像の構築を目指しており、御所浦での実践はその具体的な試みとなる。一方、武蔵野美術大学との産学連携では、都市テクノが「再生の解体」というコンセプトのもと、空間再編に関わる創造的アプローチを学生や研究者と共に展開している。地域資源を活かし、クリエイティブ産業を通じた持続可能なまちづくりへの寄与が期待されている。
こうした連携の成果を広く共有するため、2025年8月5日(火)には武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパスにてシンポジウム「地域特化型クリエイティブカンパニーという生き方」が開催される。イベントでは、プロジェクト発起人である都市テクノ代表や武蔵野美術大学関係者、日本総研研究員が登壇し、地域特化型のクリエイティブ産業がいかにして新たな価値を生み出せるのかを議論する。さらに、地域で活躍する実践者たちが登壇し、各地での取り組みや課題について語り合うクロストークも予定されている。
都市と地方、伝統と創造、解体と再生といった対立項をつなぎ合わせ、新たな価値の循環を生み出すこの取り組みは、単なる地方創生を超え、都市再生の本質を問う実践となっている。都市テクノは、これからも社会の課題と向き合い、未来をつくる解体業として、実践と挑戦を重ねていく方針だ。


