音楽スクール市場が急成長している。シェアウェル株式会社が運営する月額制音楽スタジオ「STUDIO楽」は、最新の市場動向とユーザーの課題に関する調査結果を公表した。2023年度、音楽スクールの市場規模は受講料ベースで約1,075億円に達し、音楽教育全体の約5.4%を占める規模に拡大している。これまで市場の中心だった6~15歳の児童向けレッスンは、少子化の影響もあって2015年比で約17%減少し、市場全体に占める割合は約62%まで低下した。
一方で、大人やシニア層の需要が急速に伸びており、特に50歳以上のシニア層は市場全体の28%以上を占めるまでに成長している。ヤマハ音楽教室の“大人の音楽レッスン”にはすでに11万人以上の会員が在籍するなど、音楽学習に対する中高年世代の関心が高まっていることが明らかとなった。市場構造の変化に伴い、音楽スクールには子ども中心から大人・シニア重視への質的な転換が求められている。
こうした中、音楽教育におけるオンライン対応も進化を遂げている。世界のオンライン音楽レッスン市場は2023年に約18億ドルとなり、2032年には最大で73億ドルに達すると予測されている。日本国内でも同市場は約5,000億~1兆1,000億円とされており、全ジャンルの中でも3番目に大きな市場に成長している。多くの音楽スクールでは、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド授業や、ZoomやTeamsを用いた双方向型レッスン、録画動画による補講スタイルなどを導入しており、時間や場所にとらわれない学習環境が整いつつある。
特に大人・シニア層のピアノ学習においては、単なる趣味の域を超え、「認知機能や健康の維持」「自己実現」「生活の質の向上」といったライフロング教育の側面が強くなっている。また、月謝を子ども向けより高く設定できることから、音楽スクールにとっても収益面で有望な顧客層となっている。
ただし、課題も顕在化している。まず、シニア層の目的に応じたカリキュラム設計が求められている。健康支援や趣味の延長線上にある講座の内容や、発表会・グループ活動を通じた参加型の構成が重要となる。また、オンライン導入の進展により、デジタル機器の操作に不慣れな層へのサポートも不可欠である。さらに、多くのユーザーが「継続」に対して壁を感じていることも課題のひとつだ。特にレッスン時間外の個人練習環境が不十分であることから、成長を実感しにくく、モチベーションが維持できないケースが多い。
こうした課題に対し、「STUDIO楽」は月額制のスタジオ利用サービスを通じて、ユーザーが自由に練習できる環境を整え、音楽学習の継続支援を図っている。



