国内電通グループは5月19日、AI技術を活用した独自の戦略「AI For Growth」の最新版「AI For Growth 2.0」を発表した。イグニション・ポイント、電通、電通デジタル、電通総研の4社が連携し、マーケティングの全工程にAIエージェントを組み込む「AIネイティブ化」を加速させる。企業の業務効率化と価値向上の両立を実現し、顧客や社会の持続的成長に貢献することを狙いとしている。
新戦略の中核を成すのは、大規模調査データや社内の専門人材による知見といった独自アセットを、AI技術と融合させた「AIモデル」の高度化である。とくに注目されるのが、1億人規模の仮想ペルソナを再現可能な「People Model」と、クリエイターやプランナーの思考プロセスを学習した「Creative Thinking Model」の拡張だ。
「People Model」は、電通が蓄積した大規模な意識調査データをベースに、大規模言語モデル(LLM)を用いて高解像度なペルソナ群を仮想的に構築する。このモデルにより、従来のように調査対象者の確保に苦労することなく、柔軟な仮想インタビューや多面的なアンケートシミュレーションが可能となる。設問数に制限がなく、コンセプトやアイデアの検証も迅速に行える点が特徴であり、関連技術は現在特許出願中である。
一方の「Creative Thinking Model」は、2024年に発表されたAIコピー生成ツール「AICO2」に続く取り組みとして、東京大学AIセンターとの共同研究を通じて進化を遂げた。社内専門人材の発想法やアイデア創出のプロセスをAIが学習し、これまでにないビジュアルアイデアの生成を可能にした。このモデルも、既存の手法と比べて品質やインパクトにおいて有意な向上が認められており、特許出願が行われている。
電通グループではこれらのAIモデルに加えて、「AIQQQ FLASH」「AIQQQ TALK」「∞AIⓇ」「AICO2」など、既存のAIアプリケーションと連携させた「統合マーケティングAIエージェント」の開発にも着手している。このAIエージェントはユーザーとの対話を通じて最適な解決策を自律的に導き出す仕組みで、今後は社内利用だけでなく外部企業への提供も進めていく予定である。
また、同社はAIトランスフォーメーションの実現に向けて、業務プロセス改革の伴走支援や、企業ニーズに応じたカスタマイズ型AIエージェントの開発・導入にも取り組んでいる。これにより、マーケティング業務の高度化・高速化・効率化・内製化を同時に推進し、企業の競争力強化を後押しする。
AI人材育成にも力を入れており、2024年11月時点で国内39社の社員1114人が日本ディープラーニング協会(JDLA)の「G検定」を取得するなど、AIリテラシーの底上げを図っている。