2025年5月8日、オーストリア・ヴァッテンスのSwarovski クリスタル・ワールドにて、日本人アーティストの塩田千春氏が手がける新たなChamber of Wonder (不思議の部屋)である「Crystallizing Identity」が華々しく公開された。本作は、ひとりひとりの輝きと、星の導きによって結ばれる人と人とのつながりに捧げられたインスタレーションとなっている
Swarovskiのクリスタルを初めて作品に取り入れた塩田氏は、多面的なこの素材を通して、「ありのままの自分」であることと、他者と誠実で深い関係性を築くことの両立を探求。複層的に展開する本作は、日本に古くから伝わる「赤い糸伝説」にも着想を得ていry。運命によって結ばれた人々は、目に見えない赤い糸で生涯つながっている──そんな物語が繊細なクリスタル・ビーズを織り交ぜた赤い毛糸のネットワークとして空間を包み込みむ。糸はやがて収束し、Swarovski Manufakturの技術によって生み出された足、腕、そしてアーティスト自身の手のかたちとなって具現化される。
塩田千春氏
「私たちは自分だけの経験をしていると思いがちですが、実はすべてがつながっています。肉体は分かれていても、思考の宇宙は共有している──その緊張感に惹かれます。Swarovski クリスタル・ワールドの“巨人”にインスパイアされ、この命の謎に改めて向き合いました。風景に溶け込む頭部、芸術的営みを内包するお腹── “巨人”は、私たちの存在が出会った人々や見えない糸によって形作られていることを象徴しています。」
Swarovskiチーフ・コマーシャル・オフィサー、ミケーレ・モロン
「130年にわたり、Swarovskiは革新と芸術性を融合させ、感動とインスピレーションこそが真のラグジュアリーだと信じてきました。この記念すべき年に、Swarovski クリスタル・ワールドはChamber of Wonder (不思議の部屋)を通して感情を呼び起こし、つながりを生み出し、ポップ・ラグジュアリーの概念を刷新する存在として。人々の心に響く物語をクリスタルで紡ぎ続けます。」
Swarovskiツーリズムサービスのマネージング・ディレクターであるステファン・イッサー
「塩田千春さんをSwarovski クリスタル・ワールドにお迎えできることを心より誇りに思います。彼女の作品は、美しさと深い思索性を併せ持ち、Chamber of Wonder (不思議の部屋)に新たな質感をもたらしてくれました。クリエイティブとクリスタルが出会うこの空間が、30周年を迎える私たちのクリエイティビティの舞台に新たな輝きを添えてくれることでしょう。」
Swarovski クリスタル・ワールドのChamber of Wonder (不思議の部屋)は、アーティストやデザイナーとの対話を促す創造的な空間です。Swarovskiの光の魔法と、それぞれのクリエイターの個性が融合し、記憶に残る没入型の体験を訪れる人々に届けています。草間彌生、ジェームズ・タレル、イ・ブルといった世界的アーティストも、この空間に作品を提供している。
塩田千春氏による「Crystallizing Identity」は、2025年5月8日より一般公開される。
塩田千春氏について
1972年大阪生まれ、ベルリンを拠点に活動。
塩田千春の創作のインスピレーションは、しばしば個人的な体験や感情に端を発し、それを生命、死、そして人間関係といった普遍的なテーマへと昇華させている。靴、鍵、ベッド、椅子、ドレスなど、日常的なオブジェを収集し、それらを糸の巨大な構造体で包み込むことで「不在の中にある存在感」を可視化。彼女のインスタレーション作品は、この独特の感覚を探求するものであり、彫刻、ドローイング、パフォーマンス映像、写真、キャンバス作品においても、目に見えない感情を表現している。2008年には芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞、2024年には再び同賞を受賞するなど、その活動は日本国内外で高く評価されている。
彼女の作品は、世界中の著名な美術館や文化機関で展示されてきた。たとえばグラン・パレ(パリ/2024)、中之島美術館(大阪/2024)、ハマー美術館(ロサンゼルス/2023)、クイーンズランド近代美術館(ブリスベン/2022)、カールスルーエ・アート・アンド・メディア・センター(カールスルーエ/2021)、ニュージーランド国立博物館(ウェリントン/2020)、森美術館(東京/2019)、グロピウス・バウ(ベルリン/2019)、南オーストラリア州立美術館(2018)、ヨークシャー・スカルプチャー・パーク(英国/2018)、パワーステーション・オブ・アート(上海/2017)、K21(ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館/デュッセルドルフ/2015)、スミソニアン協会サックラー・ギャラリー(ワシントンD.C./2014)、高知県立美術館(2013)、国立国際美術館(大阪/2008)などが挙げられる。また、愛知トリエンナーレ(2022)、奥能登国際芸術祭(2017)、シドニー・ビエンナーレ(2016)、大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ(2009)、横浜トリエンナーレ(2001)など、数多くの国際芸術祭にも参加。2015年には第56回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表作家に選出された。
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