同僚が転職した。以前一緒に働いていた人が管理職になった。そんな話をきっかけに、「自分はこのままでいいんだっけ?」と考えることがあります。
こうした迷いは、30代後半など、経験を積む一方で、「この先も同じ方向へ進むのか」を考え始める時期にも起こりやすいもの。専門性を深める、マネジメントに進む、環境を変える。選択肢が増えたときに必要になるのが、「自分は何を基準に選ぶのか」です。そのヒントになる「プロティアン・キャリア」から、自分なりの判断軸を考えてみましょう。
会社や役職だけでなく「自分の基準」からキャリアを考える
キャリアを考えるときに参考になる考え方の一つが「プロティアン・キャリア」です。プロティアン・キャリアでは、会社や決められたキャリアコースだけに委ねるのではなく、自分自身の価値観をもとに、変化に合わせながらキャリアをつくっていくことを重視します。だからといって、「会社に頼らず、一人でキャリアを切り開かなければならない」ということではありません。
今の会社で働き続ける場合でも、転職する場合でも、「自分は何を大切にして働きたいのか」が分かっていると、次の選択を考えやすくなります。
たとえば「専門性を高めるか、マネジメントに進むか」にも、すべての人に共通する正解はありません。「専門性を深めて、自分の強みを生かしていきたい」のか。「人を育てたり、チームで成果を出したりすることに面白さを感じる」のか。大切なのは、どちらが一般的に正しいかではなく、自分が何を大切にしたいかと照らし合わせて選ぶことです。ここから3つのステップで、自分なりの判断軸を整理してみましょう。
STEP 1|これからの仕事で「大切にしたいこと」を選ぶ
まずは、これまでの仕事を振り返りながら、「これからも大切にしたいこと」を考えてみます。
たとえば、
- 得意なことや専門性を生かせる
- 新しいことに挑戦できる
- 自分で考えて進められる
- 誰かの役に立っている実感がある
- チームで仕事ができる
- 収入や働き方が安定している
- 仕事以外の時間も大切にできる
などです。
実際に書き出せなくても構いません。まずはこの中から、「特に大切」「できれば大切にしたい」「それほど重要ではない」と頭の中で分けてみてください。
その中で、特に大切にしたいものを3つ選ぶとしたら何でしょうか。
① ____________________
② ____________________
③ ____________________
STEP 2|「求められていること」と「自分が選びたいこと」を整理する
仕事を続けていると、
「次は管理職を目指してほしい」
「この経験を生かして、この仕事を続けてほしい」
など、周囲から期待される役割も増えていきます。
一方で、「できるから任されているけれど、この先も続けたいかは分からない」と感じることもあります。
そこで、次の3つに分けて考えてみましょう。
周囲から求められていること
→ ______________________________
その中で、自分も続けたいこと
→ ______________________________
これからは別の選択をしてみたいこと
→ ______________________________
周囲から期待されていることをそのまま受け入れるのでも、反対にすべて手放すのでもなく、自分が納得して選びたいものは何かを確認することがポイントです。
ここにギャップがあれば、それも次のキャリアを考えるヒントになります。
たとえば「管理職を期待されているけれど、自分は専門性を深めたい」と分かれば、専門職として成長できる環境や仕事を探す、という次の選択肢が見えてきます。
STEP 3|「これから増やしたい経験」を具体的にする
最後に、「この先どうなりたいか」をいきなり決めるのではなく、これから仕事の中で増やしてみたい経験を考えてみましょう。
たとえば、
- 制作だけでなく、企画や提案から関わる経験を増やしたい
- 一つの領域を任され、専門性を深める経験を増やしたい
- 後輩へのフィードバックや育成を経験してみたい
- チーム全体の進行や意思決定に関わってみたい
- 今とは違う業界・ジャンルの案件を経験してみたい
- 働く時間や場所を自分で調整できる環境を経験してみたい
といった具合です。
Q. 今後、増やしてみたい経験は?
→ ______________________________
そして、ここで終わらず、その経験を増やすためにできることを一つだけ決めてみます。
たとえば、
次のフィードバック面談で「企画段階から関わってみたい」と上司に伝える
求人サイトで「ディレクション」「企画」「マネジメント」など、興味のあるキーワードを検索してみる
興味のある職種の求人を3件見て、求められている経験を確認する
社内で募集されているプロジェクトや案件を確認する
実際にその仕事をしている人の転職事例やキャリア事例を読んでみる
転職のような大きな決断でなくても構いません。自分の判断軸を使って、小さな選択を一つしてみることから始められます。
専門性か、マネジメントか。迷ったときは「どちらが上か」で考えない
ここまで整理すると、冒頭にあった
「もっと専門性を高めた方がいい?」
「マネジメントに進むべき?」
という問いにも、自分なりの答えを出しやすくなります。
たとえば、
専門性を深める方向が合いそうな人
- 特定の領域をもっと深く知りたい
- 自分のスキルや成果物そのもので価値を出したい
- 難易度の高い仕事に挑戦することに面白さを感じる
マネジメントを試してみる方向が合いそうな人
もちろん、完全にどちらかに分かれるわけではありません。
専門性を持ちながらチームをリードする働き方もありますし、まず小さなプロジェクトで人をまとめる経験をしてから、自分に合うか確かめることもできます。
大切なのは、「年齢的にそろそろ管理職だから」と選ぶのではなく、自分が大切にしたいことや増やしたい経験と照らし合わせて考えることです。
「正しいキャリア」より、自分が納得できるキャリアを選ぶ
専門性を高める。
マネジメントに進む。
違う会社へ移る。
新しい領域に挑戦する。
今の働き方を続ける。
どれか一つが、すべての人にとって正解というわけではありません。
プロティアン・キャリアの考え方で大切なのは、周囲から見て正しそうな道ではなく、**自分の価値観を基準にキャリアを選び直していくこと**です。
今回整理した、
- 「大切にしたいこと」
- 「自分で選びたいこと」
- 「これから増やしたい経験」
を、次の選択を考えるときの判断軸にしてみてください。
整理した判断軸を、実際の選択肢に当てはめてみる
判断軸が少し見えてきたら、次は実際の仕事やキャリア事例に当てはめてみましょう。
たとえば「専門性をもっと高めたい」と思ったなら、今の経験を生かしながら専門性を深められる求人にはどんなものがあるのかを見る。
「企画から関わりたい」と思ったなら、「企画」「ディレクション」などのキーワードで求人を探し、どんな経験が求められているのか確認してみる。
「マネジメントに興味はあるけれど、自分に合うか分からない」なら、実際に専門職からマネジメントへ進んだ人のキャリア事例を読んだり、セミナーで話を聞いたりする。
考えるだけで終わらず、外にある選択肢と比べてみることで、自分の判断軸がより具体的になっていきます。
まずは、今の経験を生かせそうな仕事にどんな選択肢があるのか、見てみるところから始めてみてください。
「自分の判断軸がまだうまく言葉にできない」「専門性とマネジメントのどちらに進むか迷っている」という場合は、第三者と一緒にこれまでの経験や希望を整理してみる方法もあります。



