派遣先での編集業務に加えて、個人で受けているライティングの仕事や、知人から頼まれた校正の仕事。気づけば複数の仕事を同時に抱えていて、「どれも中途半端なのでは」「一つの仕事に絞った方が安定するのでは」と不安になることはありませんか。一方で、複数の仕事を持っている状態は、必ずしも「キャリアが定まっていない」ことを意味するわけではありません。それぞれの仕事が自分に何をもたらしているのかを整理すると、バラバラに見えていた仕事が、一つのキャリアを構成する要素として見えてくることがあります。
この記事では、複数の仕事や役割を組み合わせてキャリアを捉える「ポートフォリオ」の考え方をヒントに、今の働き方を整理してみます。

複数の仕事を「一つのキャリア」として見てみる

この不安を整理する手がかりとして、経営思想家チャールズ・ハンディが提唱した「ポートフォリオ」という考え方があります。一つの組織、一つの肩書だけでキャリアを見るのではなく、複数の仕事や活動、役割を組み合わせた全体として自分の働き方を捉えるという考え方です。

たとえば、

  • 派遣先で編集業務をする
  • 個人でライティング案件を受ける
  • 知人から校正を頼まれる

という働き方をしている場合、それぞれを別々の仕事として評価すると、「どれも中途半端かもしれない」と感じるかもしれません。しかし、全体を一つのポートフォリオとして眺めてみると、「編集」「執筆」「校正」という経験が互いにつながり、自分なりの専門性を形づくっているとも考えられます。大切なのは、仕事の数だけを見るのではなく、「それぞれの仕事が、自分のキャリアの中でどんな役割を持っているのか」を見ることです。

今抱えている仕事を、一枚の紙に並べてみる

複数の仕事を掛け持ちしていると、それぞれの締め切りや依頼元への対応で頭がいっぱいになり、全体を俯瞰する余裕がなくなりがちです。そこでまず、今抱えている仕事を一枚の紙やメモに書き出してみましょう。仕事ごとに、次の4つを並べてみると整理しやすくなります。

  • どのくらい時間を使っているか
  • どのくらいの収入につながっているか
  • どんな経験・スキルを得られているか
  • どんな人や次の仕事とのつながりが生まれているか

書き出してみると、それぞれの仕事が違う役割を果たしていることに気づく場合があります。たとえば、派遣先での仕事は毎月の収入を支えている。個人のライティング案件は、自分が得意とするテーマを深める機会になっている。知人からの校正依頼は、新しい人や仕事とのつながりを広げている。このように整理すると、バラバラに見えていた仕事が、実は「収入」「経験」「つながり」など、それぞれ違うものを支えていたとわかることがあります。「一つに絞った方がいいのでは」と考える前に、まずは今の仕事がそれぞれ何を支えているのかを確認してみましょう。

組み合わせのバランスが崩れているところを見つける

仕事を並べてみたら、次に確認したいのが「偏り」です。たとえば、収入のほとんどを一つの派遣先に依存していて、契約が終了した場合の備えがない。反対に、個人案件を多く引き受けすぎて、収入は増えていても休む時間がほとんどなくなっている。こうした場合、不安の原因は「複数の仕事をしていること」ではなく、その組み合わせや比重にあるのかもしれません。偏りが見つかったら、すぐに仕事を一つに絞るのではなく、比重を調整できないか考えてみます。

  • 収入源が一つに偏っているなら、小さくても別の収入につながる仕事を育てる
  • 個人案件に時間を取られすぎているなら、受ける本数や納期を調整する
  • 同じ仕事ばかりで経験が広がらないなら、少し違う領域の案件を試してみる

掛け持ちを続けるか、仕事を一つに絞るかという二択ではありません。「どの仕事を、どのくらい持つのが今の自分に合っているか」という視点で考えると、選択肢はもう少し広がります。

仕事のバランスは、月に一度など定期的に見直すのがおすすめです。「収入」「時間」「経験」「つながり」の4つを確認するだけでも、忙しさに流されて偏りが大きくなる前に気づきやすくなります。

「今の仕事を続けながら、ほかにどんな選択肢があるのか知りたい」と思ったら、まずは編集・ライティング関連の求人を眺めてみるのも一つの方法です。すぐに転職するつもりがなくても、自分の経験がどんな仕事につながるのかを知ることで、今後の組み合わせを考えやすくなります。

仕事の組み合わせは、その都度変えていい

一度つくった仕事の組み合わせを、ずっと維持する必要もありません。派遣先の契約が変わったとき。個人案件が増えてきたとき。生活環境が変わったとき。その都度、「収入」「時間」「経験」「つながり」のバランスを見ながら、仕事の比重を調整していけばよいのです。組み替えるときは、「今の自分にとって、何が足りていないか」を基準にしてみましょう。

  • 収入が心もとない → 安定した仕事の比重を増やす
  • 経験を広げたい → 新しい分野の案件を少し試してみる
  • 今後につながる人脈を広げたい → 人と関わる仕事やプロジェクトに参加してみる
  • 時間に余裕がない → 負担の大きい案件を減らす、受け方を変える

組み替えるために、必ず新しい仕事を探す必要があるわけではありません。今抱えている案件の本数を減らしたり、仕事に使う時間を変えたりするだけでも、全体のバランスは変わります。すべてを一度に変えようとするのではなく、今の自分に合うように少しずつ比重を調整していくくらいに考えてみてください。

まとめ|「一つに絞る」以外にも、キャリアを安定させる方法はある

複数の仕事を掛け持ちしていると、「一つに絞った方がキャリアとして安定するのでは」と感じることがあります。しかし、ポートフォリオという視点で眺めてみると、掛け持ちしていることそのものよりも、複数の仕事をどう組み合わせているかが重要だとわかります。

  • 収入が一つの仕事に偏っているなら、別の柱を少しずつ育ててみる
  • 時間の使い方が偏っているなら、負担の大きい仕事の比重を調整する
  • 経験が偏っているなら、新しい領域を小さく試してみる
  • 今のバランスに納得できているなら、無理に一つに絞らず維持する

「仕事を一つにまとめること」だけが、安定ではありません。複数の仕事を持ちながら、自分に合ったバランスに整えていくことも、一つのキャリアのつくり方です。まずは今抱えている仕事を一枚の紙に並べ、「収入」「時間」「経験」「つながり」のうち、それぞれが何を支えているのかを書き出してみてください。

その一覧は、次に新しい案件を引き受けるか、今の仕事を減らすか、あるいは別の働き方を探すかを考えるときの判断材料になります。「今の掛け持ちを続けるべきか」「編集経験を生かして、次はどんな働き方ができるのか」と迷っている場合は、一人で答えを出す必要はありません。これまでの経験や希望を整理しながら、自分に合ったキャリアの選択肢を考えてみませんか。