関東には世間様に知られていない変わった建物がごろごろある。そこに人が居住しているとなればさらに驚く。彼らは何を思い、どのように暮らしているのか…。

今回、CREATIVE VILLAGE編集部では、関東圏にある珍スポット、あさくら画廊、On the blue、八潮秘宝館を取材。何故このような家を造るに至ったのか、お話を伺った。

竹ノ塚発ピンクの居城

東武伊勢崎線竹ノ塚駅から徒歩15分強。閑散とした住宅街に忽然と姿を現すあさくら画廊。近隣の住宅と比較して明らかに目立っている。

「(建物の色について)近隣の方から何か言われなかったですか」と聞くと「徐々に(ピンク色で)侵食していったんで、目が慣れたんじゃないですかね」と話すのはここあさくら画廊の家主、辻修平さんだ。

「俺より絵がうまい奴はいっぱいいる」東京芸大を三浪し、失敗して気づいた事

天井、壁、床。余すことなく全て辻さんの作品で埋め尽くされている。

休館日を除くと、20:00就寝で朝は3:00に起床。4:30から絵を描き始めている。寝食以外は絵を描くことに没頭している辻さんの生活は芸術家そのもの。

開封済みのお菓子の袋が天井に張り付いている。

幼少期から絵を描くことが大好きで、先生からもよく褒められていたそう。小学生の時から図工の成績は良く、5段階中5点満点を取っていた。

「(自分は)絵が上手いとずっと思ってたんです。でも、世の中には俺より絵が上手い奴はもっといるって、知らされました。東京藝大三回受けて失敗して…。受験に受かるための絵は描けなかった」その時から今まで絵を描き続けて20余年が経つ。

「あさくら画廊を開くまでは『仙石画廊』という名前でやっていたんですよ。実家が豆腐屋だったんで、その跡地で作品を作り始めたのが、今のあさくら画廊につながってます」

「コンセプトアート」が苦手だという辻さん。形にしようとすると、言葉として作品に現れる。

「ピンク×毒×ギャル」好きなものをいっぱいに詰め込んだ

「可愛いの中にある毒」を一環としてテーマに持ち、ピンク色を使って最大限にその世界観を構築していくあさくら画廊。辻さん自身がギャル好きで、部屋の至る所にギャルがモチーフとなっている作品が立てかけられている。

「作品そのものより(あさくら画廊がどんな場所なのか)この現象を見に来る人がほとんどですね。女性とかだと自分を被写体にして写真撮影する人が多いです」と辻さんは話す。

“可愛いモノ”が溢れている場所に、女子は引き寄せられていくのか…。

辻修平さん

名称 あさくら画廊
場所 東京都 竹ノ塚
最寄り駅 東武伊勢崎線竹ノ塚駅
所要時間 徒歩15分強
営業時間 水曜休み 7:00-19:00
入館料 大人1,000円 年パス3,000円

海のない埼玉に存在するビーチハウス”On the Blue”

JR戸田公園駅に到着し、歩くこと5分。ピンクとブルーのコントラストがまぶしい、何やら大量の装飾品が施されている建物が見えてきた。

パーツの一つ一つを注視していると、背後から突然、英語で話しかけられた。一瞬、外国人かと思ったがオンザブルーの家主、大谷和夫さんだった。

時折、英語とギャグを交えて話す大谷さんはとても陽気だ。憩いの場所として利用しているベンチがあるというので、そこでお話を伺った。

出版社勤務時代に培われたクリエイティブ性

道行く人は異彩を放つオンザブルーを指さしながらヒソヒソ話したり、時には笑ったりしている。

家の前には交差点があって、毎日様々な車、自転車、人が行き交う。そういった人たちへの注意喚起なのか。「人生急ぐな!信号を守れ!」と書いてある時計を発見。

取材中も時々、自転車に乗っている人や車に向かって交通ルールを守るよう、呼びかけていたのが印象的だった。

英語の“God Knows(訳:神のみぞ知る)”と「神の味噌汁」をかけている。タトゥーではない。

地元の同級生だという人からも「はいはい、(いつもの調子で)また言ってるのね」などと話しかけられていた。大谷さんを中心に、埼玉のビーチハウスはあらゆる人とのコミュニケーションが生まれる場所なのだという風に感じた。

どうしたらこんなカラフルな家が誕生するのだろうかと気になり「退職前はどういったお仕事をされていたんですか」と聞くと「出版業界で働いていた」と話してくれた。

当時のインスピレーションを一身に受けて、この場所はできあがったのかと思っていたが、勤務当時から装飾していたというわけではない。20年前に最愛だった奥様を亡くしてから見た目がどんどん派手になっていったそう。現在はお母様と二人暮らしで、年金生活を送っている。

家の外壁にニセ札が張られていた。

ガラクタはただのゴミではなく、アートの一部になり得るもの

話しかけてきた際、大木らしき物体を引きずっていた。それは何なのかと聞くと「良さそうな素材だったんで拾ってきた。コレクションにしようと思う(外装の)」と話してくれた。

日々、モノが増殖していくオンザブルー。拾ってきたものを外装の一部にし、これからも大谷さんのアイデアが家を飾るパーツになっていくと思うと楽しみだ。

大谷和夫さん

名称 On the blue(オン ザ ブルー)
場所 埼玉県 戸田市
最寄り駅 JR戸田公園駅
所要時間 徒歩5分

ラブドールがひしめき合う桃色宇宙

自宅が秘宝館になっている場所があると聞き、埼玉県は八潮市を訪れた。某所は海外メディアからの取材依頼も多いと聞いている。

2000年に亀有の空き地のゴミの山に捨てられていたマネキンを拾ったことが、八潮秘宝館を開館するきっかけとなったと話すのは館長である兵頭喜貴さんだ。

―「人であって人でないものが好き」―。大好きだと自負する人造人間やサイボーグといったフェチが爆発した空間でお話を伺った。

当初は「八潮秘宝館を作ってやるぞ!」といった意気込みはなかった

自宅を秘宝館にしているということで、在宅率は高いと話す兵頭さん。普段は掃除屋で週に3日、アルバイトをしている。来館者の男女比や特性について聞いてみた。

「半々ですね。若干女性の来館者の方が多いですけど、一見さんとか。支持される理由は、珍スポ好き・可愛い物好きの人がラブドールのことを好きになっていますね。自分を人形のように扱ってほしい願望がある子だったり。お母さんに引き連れられてきた子が一番若かったですよ」

年齢制限を設けているわけではないが、子供だけで来たら入館できないそう。

次元高い人にいっぱい会ってたくさん吸収して

「30代半ばの時、アンダーグラウンド界隈ではトップに君臨するような人と仲良くさせてもらってました。その人の家の中に入った時があって、とんでもない家に住んでいましたね。すごくなりたいと思うんだったら、普段の環境からすごくしないとって、思いましたね。当時の体験が八潮秘宝館を開館するに至った原点の一つです」

「次元が高い人に直接接していっぱい刺激をもらいました。20代とか30代のまだ伸びるうちに、そういう人に会って話して可能であれば何か一緒にやれればいいですよね。自分の場合は、小学生の時からカメラをいじったり、特撮や面白いと思ったアニメを一生懸命観ていました。」

八潮秘宝館は兵頭さんが生きてきた過程で、吸収してきたものを全て混合し、そしてそれを爆発させた、そんな空間であるように思う。

今期のテーマはSF映画の『ブレードランナー』で2月中旬まで展示。同映画のセバスチャンの部屋から着想を得ている。次回は未来編でサイバー系を意識した展示をやりたいそう。

兵頭喜貴さん

名称 八潮秘宝館
場所 埼玉県 八潮市
最寄り駅 つくばエクスプレス 八潮駅
所要時間 バスで10分
営業時間 会期によって異なるので公式サイトを要確認
入館料 1,000円

撮影:ヒロヤス・カイ/インタビュー・テキスト・企画・編集:ショーコ・ヲノ(CREATIVE VILLAGE編集部)