Maya(3Dアニメーション、モデリング、シミュレーション、レンダリング用ソフトウェア)ユーザーの間では“バイブル”となっているブログサイト『CG自習部屋 Mayaの時間』。
24時間365日、CGのことだけを意識してしまう、という有坂さんにとって、CGとはどんな存在なのか、CGにかける情熱がさく裂する「有坂ワールド」満載のインタビューです。

デジタルアーティスト 有坂 浩一(ありさか・こういち)
フリーランスで仕事をしながらWebサイト『CG自習部屋 Mayaの時間』を運営。
2014年から開設し、現在4年目となる。
基本的にはCG関連のTipsやスクリプトなどのクリエイターが必要としている超実践的な情報サイトとなっており、業界でかなり多くのクリエイターが本サイトを閲覧している。

制限なく好きなものが作れるデジタルの世界で実現できる表現に魅了される

僕はごく普通にゲームの好きな子どもだったのですが、ある時『デザエモン』というシューティングゲームを自分でデザインできるゲームにハマって、「ゲームで遊ぶより、作る方が好きなのかもしれない」と思うようになり、ゲーム業界を目指すようになりました。
でも、どういう進路を進めばいいのかわからなくて、結局、情報系の大学に入学しました。

当時大学にはCGの学科はなかったのですが、ゲームや映画などでCGが目につくことも多くなり、その性質を分析していると、一度モデリングしてしまえば何度でも使用できるし、それは手で描くよりずっと正確である、ということがわかったんです。

これならなんでも好きなものが作れるという期待から、「ああ、自分がやりたかったのはCGだったんだ」と気づいて、それからは独学で勉強しました。
そして、念願だったゲームのグラフィックを描くモデラーになったんです。3DCGによるキャラクターも背景も担当する仕事は楽しくて、自分にとって天職でした。

仕事以外は“自習時間”。CG漬けの日々から生まれた『CG自習部屋』

Mayaを2015にバージョンアップした時に、新機能のメモがわりにブログを始めました。僕がCG制作の自習をするための場所にしようと思い、タイトルを『CG自習部屋』と名付けたんです。
昔から仕事で「この作業は時間がかかってしまうな」と感じたものは、帰宅後プライベートの時間を利用してスクリプトを書き、後日それを仕事場にもっていって作業の時間短縮を行っていました。

そのようなことを繰り返しているうちに、スクリプトは増えていき、自分でも管理があいまいな状態になってきたので、整頓の意味も含め、ちょうど始めたばかりのブログにアップすることにしたのです。思いのほか整頓が長引き、スクリプトがメインになってしまいましたけどね。

ブログにはあまり表れていませんが、スクリプト以外にも、少しでも仕事やプライベート作品でよいものを作りたいという考えがあるので、時間を見つけては何か作ったり、ツールを勉強したり、自習は日々行っています。

想像を形にできるCGの世界こそ、まさに自分が求めていた理想郷

僕は趣味がCGで、何事もCG制作に使えそうだなぁと考えてしまう性分なんです。今はおかげでそれが仕事にも活かせる生活を送っているので、ストレスはほぼありません(笑)。

例えば、休日にドライブに行ったとします。その時もカメラは必ず持っていき、よい景色やかっこいい構図、テクスチャに使えそうな素材があったら、写真を撮るなど、CGにとってプラスになることとセットにして行動します。そうやって意識すると、日常のやることすべてがCGに活かせるんですね。

先日も後輩に「お正月は実家に帰ったりするんですか?ずっと閉じこもってCGやってそうですよね」と言われちゃいました(笑)。
確かに時間があったら何かしようとノートパソコンは持って帰っていましたが…。
むしろ他のことをしていると新しい技術に置いていかれるのではと不安になってしまいますね。

なぜここまでCGにハマっているかというと、想像していることを形にできるから。
「どうやって形にしよう?」と思うような難しいものも、作るうちに形になっていく。最初はゴールが見えてなくても、作っていくうちに「あれ、これは失敗だな」とか「これならうまくいく!」とかわかってきます。誰かが作ったことのあるものではなく、自分で“最適な形”にたどり着くことに達成感があるんでしょうね。周りも「どうやって作ったの?」と興味を持ったり褒めたりしてくれるので嬉しいですしね。

ブログ公開1周年記念で開設したTwitterの反響の大きさに驚き

そんなこんなでブログを開設してから1年がたった頃、記念にTwitterを始めたんです。そしたらわずか数日でフォロワーが一気に増えて、とても驚きました。
業界で有名な方がリツイートしてくださったりして、どんどん広まっていったんです。

僕は当時、モデラーとして企業先に出向して仕事をしていたのですが、そこで自分のブログが参考にされているのを見かけることがありました。職場の人に「有坂くんって『CG自習部屋』を真似してスクリプト書いてる?」なんて言われたこともあって(笑)。
このブログは会社の時間外でやっていることなので、管理人であることは公にはせずにいました。なので、実際に仕事に役立ててくださる方がいることを目の当たりにすると、内心とても嬉しかったですね。

ブログのこだわりは「自分が読みたいかどうか」。
僕は文章だけの資料を読むのは苦手ですし、あまりに難しいものも理解できないです。
目指しているのは自分が体験した苦労を、他の人にさせないで済むような、実践的なブログです。
そのためにも、ブログを読むこと自体が読む人の苦労にならないように気を付けています。
僕自身が困ったことや、他人が悩んでいることを解決できるような情報を発信していきたい。実際、「読んでためになった」と喜んでいただくこともあります。

たまに「ブログに書くと、せっかく苦労したことが他の人に使われてしまうんじゃない?」と周りから心配されることもあります。
でもどうせ情報は古くなるので使えるうちにみんなに知ってもらった方がいいです。特にスクリプトは時間短縮を目的に作ったものなので、たくさん使うことで意味がでてきます。少しでも時間短縮になるのであれば、どんどん使ってもらえたほうが嬉しいです。

決して自己満足だけではなくて、ここでアウトプットした情報を見る人みんなの役に立てればいいな、という思いが強くあります。それを定期的に公開することで、自分自身がCGの勉強を続けていけるかなという考えもあります。

ずっと学び続けられる、奥の深いCGの世界

ずっとCGに関わっている立場から見て、ゲームグラフィック全体のクオリティはどんどん上がっています。それにより、工数が増えて、システムも複雑化している。今後はいかに作業を効率よくシンプルにしていくかが求められていくでしょう。作業数が膨大になり今までのやり方では追いつけないので、その場に合った技術をいかに使うかが大事なのではないかと思っています。

たとえば、ゲーム制作においては仕様通りに進めるだけではなく、他のツールを使えばずっと簡単ではないか?スクリプトで自動化できないか?というように作業する人がそれぞれ意識することで、無駄な作業を大幅に減らせたり、思ったよりもクオリティの高いものができるかもしれません。

現在、僕はいちフリーランスとして、ありがたいことにたくさんお仕事をいただくことができています。これからもいただいた仕事をちゃんとできる人間でいたい。苦手な仕事でも迷惑をかけず、少しでもみなさんのお役に立って業界に置いてもらいたいから、そのために勉強しているのかもしれません。ブログも今まで通りコツコツ続けて、「こんなのができましたよ」と公開したいので、ずっと『自習』を続けていくでしょうね。

インタビュー・テキスト:河野 桃子/撮影:SYN.product YUICHI TAJIMA/編集:CREATIVE VILLAGE編集部


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