たまたま見かけたブログに掲載されていた写真をコピーしたり、YouTubeで流れていた動画を自分のサイトに埋め込んだり……。
「これくらいなら大丈夫だよね」「この人の写真がすごく気に入ったからシェアしよう!」といった気持ちが湧いてしまうこともあるでしょう。

しかし、そういった行為は著作権侵害とみなされることもあり、最悪の場合、訴えられて懲役刑や罰金刑を科されるといった大事にも発展しかねません。

この記事では、おもにインターネット上の著作物における著作権について、特に知っておきたい点を、銀座ウィザード法律事務所の小野智彦弁護士に伺いました。

プロフィール100_100編集協力 銀座ウィザード法律事務所代表 小野 智彦 弁護士 
浜松市出身。平成11年4月弁護士登録。手品、フルート演奏、手相鑑定、カメラ等と多趣味。手品の種明し訴訟原告代理人、ギミックコイン刑事裁判弁護人、雷句誠氏の漫画原稿の美術的価値を求めて小学館を提訴、等の代理人を務めた。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。

1 そもそも、著作権とは?

著作権とは、著作物を守るための権利です。著作物の定義は、著作権法で「思想又は感情を創作的に表現したもの(著作権法2条1項1号)」と定められており、学術・文芸・美術・音楽の範囲に属しているものを指します。わかりやすく例を挙げると、写真、小説、楽曲、絵画、地図、アニメーション、マンガなどが該当します。

著作権の基礎知識

著作権と同様に、創作物を守るための法律には、工業製品などが該当する産業財産権があります。しかし、工業製品は学術、文芸、美術、音楽に属していないので著作物とはいえません。また、単なるアイデアも創作的とはいえないため、著作物ではありません。

なお、著作権は作者の届け出を必要とせず、創作と同時に発生する権利です。この権利を持つ作者は自身の著作物の使用を独占でき、著作物を無断利用する第三者を排除できます。反対に、他者の著作物を勝手に使用すると著作権を侵害したとみなされ、刑事罰や民事責任の追及を受ける恐れがあるので注意しましょう。

2 あの有名なダンスを踊った動画を公開するのは“著作権法違反”?

2016年末、ある恋愛ドラマと、その主題歌に合わせて踊るダンスが大流行しました。キャッチーな振付に魅せられて、踊ってみたことがある方も多いはずです。人気に火が付き、一般の人々がそのダンスを踊った動画が、次々とSNSや動画配信サイトに投稿されたのは記憶に新しいでしょう。しかし、こうした行為は著作権的に問題ないのでしょうか?

2.1 文章や音楽、動画などは「著作物」として、保護されるべき権利が生ずる

対象となるダンスは、感情などを創作的に表現した著作物として存在します。踊った動画を、自分の家族や友人など周囲の方に対して、自分のスマートフォンやパソコンなどのデバイス上で見せるのであれば、私的使用の範囲内として問題にはなりません。しかし、YouTubeのような不特定多数の人々がアクセスするプラットフォームに動画をアップロードすると、違法となってしまいます。

また、営利目的か非営利目的かという観点からすると、たとえ非営利目的(単純に見て楽しんでもらいたい、など)であっても、“送信可能化”にすることで、違反扱いとなります。ただし、動画をアップロードしたとしても“非公開”とすれば問題はありません。

この件に関して、主題歌を作詞作曲したアーティストの所属レーベルは、一定の条件を提示することで、ダンスを自由に踊って撮影し、拡散しても良いという見解を発表しました。それにより、損害賠償請求や配信の差し止め請求が行なわれることはなく、刑事告訴をされることもありませんでした。

今や、広告プロモーションの手法の一つとして広く浸透しているSNSは、いかに情報を拡散・シェアさせるかが重要になります。しかし、著作権法の観点からすると「違法行為」となってしまうケースもありますので、著作権に関する最低限の知識はしっかりと身につけておきましょう。

3 【クリエイターの著作権侵害】安易に作った“まとめサイト”は落とし穴がいっぱい?著作権侵害の罠

“広告収入で稼げる”などといったふれ込みで、まとめサイトを作りたい!と考えている人は多いようです。しかし、こういったまとめサイトは、インターネット上の記事や投稿、画像や動画といった情報を集めて作るのは、簡単なように見受けられますが、“他人の著作物を利用する”という認識をきちんと持てていないために、著作権侵害として訴えられるケースも少なくありません。

文章や絵、写真などの著作物にはそれを保護するための権利が発生します(ただし現行は保護期間は50年)。まとめサイトを作ったり、You Tubeに動画をアップロードしたりするなど、ブログやSNSツールでシェアをするにあたっては、その権利を侵害することの無いよう、特に以下について注意が必要です。

3.1 正しく転載・引用する

掲載したいサイトなどのリンク先を貼るだけなら違法ではありません。しかし、テキストの流用や写真・画像の無断転用などは著作権侵害にあたります。まずは、使いたい情報の掲載元の利用規約をきちんと確認しましょう。媒体によっては転載を一切禁止しているものもあります。

一方、引用については、引用元からの許可がなくても行なうことが可能です(著作権法32条)。ただし、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 他人の著作物を引用する必然性があること
  • 本文が“主”であり、あくまでも引用部分は“従”であること
  • 段落を変える、「」を付けるなどして、引用部分を明確にすること
  • 引用元について明記すること

3.2 著作物の権利者に許諾を得る

媒体により、著作物としての画像や動画を掲載する際は、権利者からの許可を得るよう明言しているものもあります。したがって、まずはその媒体の利用規約や著作権に関するポリシーが記載されたページを確認しましょう。

また、事前に著作物をどのように引用・転載したいのかを具体的に伝えることも大切です。「こんな風に使われるのであれば、引用や転載を許可しなかったのに」とあとになってトラブルに発展することも防げるでしょう。

一般的に、著作権が侵害されたと認められた場合、権利者は損害賠償や記事削除・配信差し止め請求ができます。ただし、するかしないかは権利者(被害者)の自由です。ちなみに、著作権侵害罪については、被害者の告訴がないと検察官は起訴できないという、いわゆる親告罪とされています(著作権法123条)。

ただ、引用元を明示しなかったり、派手に転載したりすると、著作者の怒りを買いやすく、損害賠償などの請求がされたり、刑事告訴にまで発展したりするなど、起訴されてしまうこともありうるのです。

今後は著作権法違反の非親告罪化が検討されており、最悪の場合、懲役刑や罰金刑を科せられる可能性もあるため、安易な引用・転載は行なわないようにしましょう。

4 【クリエイターの著作権侵害】気を付けたい”フレーム内リンク”とは

いわゆるまとめサイトなどでは、SNSなどからの写真を転用する「フレーム内リンク」を表示しているものが数多く存在しています。フレーム内リンクとは、他人のサイト内の文章や画像部分をそのまま取り込んで自分の記事の一部として表示するものです。複製とは認められないものの、著作権侵害にあたる可能性があるため注意が必要です。

4.1 「同一性保持権」侵害の可能性

著作者は、意味を持って文章や写真を自分のSNS上に置いていますが、これを他人がフレーム内リンクとして、著作者の意図とは違う形で自らのサイト上などに取り込むと、その著作物の意味づけが異なってくることになります。こうした行為は著作権法上、同一性保持権(著作権法20条)の侵害にあたる可能性が高くなるため注意が必要です。

また、著作者の名誉や声望を害する、利用行為(著作権法113条5項)に触れる可能性も出てきます。著作者には創作意図があり、創作物を芸術として考えている場合もあります。

したがって、無断でコマーシャルに利用されたり、フレーム内リンクをされたりすると、著作者の名誉、声望を害することにもつながりかねません。SNS以外でシェアしたい場合は、必ず著作者の承諾を得るようにしましょう。

5 その他、クリエイターが気を付けたい著作権侵害の例

著作物にはさまざまな形態のものがあり、利用のされ方も多種多様です。それに対応して著作権にもさまざまな権利が定められているので、著作権侵害とならないためにも細心の注意が必要になるでしょう。

著作権の基礎知識

以下に、著作権違反とされる可能性のある、身近な例を紹介します。

5.1 新聞や雑誌、書籍のコピーをとる

新聞や雑誌の記事、書籍は著作権を有する著作物です。コピーをとりたい場合は、その著作物の管理を担っている日本複写権センター、または著作権者の許諾を得なければなりません。しかしながら、目的が“私的使用”であれば、著作権者の許諾がなくてもコピーが可能です。(著作権法30条1項)

例えば、個人または家庭内などでの使用を目的としたコピーは“私的使用”に該当します。業務での利用が目的の場合は“私的使用”にあたらないため、著作権者の許諾を得る必要があります。有益な記述だと感じて、資料のためにコピーをとり仕事のメンバーに配るという行為であっても、“私的使用”にあたらず著作権違反になるため気を付けましょう。

5.2 他人の画像やイラストを参考に、新しいものを作成する

新しく画像やイラストを作成する場合、既存のものを“参考にする”こと自体は著作権侵害になりません。しかし、“本質的特徴部分”が類似しているとみなされると、著作権侵害になります。

過去の判例では、招き猫が片方の手を上げているイラストは、“ありふれた招き猫としての表現”であるとして、著作権侵害にはならなかったケースがあります。その一方で、オリジナリティが認められる表現方法が類似していて、それが“本質的特徴として作成されている”と著作権侵害が認められることもあります。他者の画像やイラストを参考にして作成したものを自社製品に使用する場合には、特に注意が必要です。

5.3 著作物のインターネット配信

著作権者の許諾を得ずに、マンガやアニメ、映画が無断でインターネット上に配信されるケースが増えています。近年、手軽にコピーや撮影ができる機器が出回るようになり、動画配信サイトへ簡単にアップロードができることも原因の一つといえるでしょう。

マンガやアニメ、映画は著作権を有する著作物であり、製作者は独占契約を締結しています。過去に、サイト“漫画村”に著作権者の許諾を得ず、勝手にマンガを掲載したとして訴えられ、逮捕者が出たこともありました。著作権者の許諾を得ずに、マンガやアニメ、映画をインターネット配信する行為は、著作権のなかの“公衆送信権”と“出版権”を侵害することになります。

5.4 パロディ作品の作成

パロディとは、既存する美術や文学作品などの著作物の特徴的な部分を引用して別の作品を作り、モデルにした著作物を風刺・批評する行為のことです。日本では替え歌などの慣習があり、マンガやアニメの登場人物をパロディにした同人誌なども多く発行されていることもあり、パロディに著作権侵害にあたるかどうかの定めは特にありません。

しかし、パロディ作品が著作権者から抗議を受けたという過去の例もあります。反対に、作家の筒井康隆の小説『日本以外全部沈没』は、小松左京の『日本沈没』のパロディ作品でしたが、きちんと著作権者である小松左京の許可を得ていたため、訴えられることはなかったとのことです。パロディ作品についての著作権侵害の定めはないとはいえ、著作権者の許諾を得ておくに越したことはないでしょう。

6 まとめ

インターネット上のさまざまな情報は“無料”で、“簡単”に取り入れられる時代になりました。

一方で、FacebookやTwitterといった“シェア”することを特徴とするSNSでは、その情報(著作物)が持つ著作権の認識があいまいになり、私たち一人ひとりの意識から薄れていっているように感じられます。また、メディアの多様化にともなって「こういうケースは著作権侵害に当てはまるの?」という疑問が生じる場面も多々あることでしょう。

しかし、何よりも大事なことは、著作者に対して“許諾を得る”ことです。これは権利の侵害だけでなく、権利を持つ方に対するマナーであるともいえます。

多くのメディアでは著作権に関するポリシーや規定を明示していますので、まずはその内容をきちんと把握したうえで、正しいメディア運用を心がけましょう。