ビジネスを課題解決に導くデザインスキルや、UI・UXを設計するデザイン思考は、UI・UXデザイナーにとっての必須スキルとなるでしょう。しかし、「デザインだけでは頭の中のイメージをうまく伝えられない」という悩みを抱えているデザイナーは決して少なくありません。

そこでデザイン的観点に加えて、身につけることをおすすめするのが「言語化スキル」です。的確な言語でデザインの意図を補完して相手に内容が詳細に「伝わる」ようになれば悩みは解消され、さらにプロジェクトメンバー間の連携や共通認識を高めることにもつながります。4年以上のキャリアを積んだUI・UXデザイナーだからこそ備えておきたいスキル「言語化」について解説します。

ビジネスで言葉や考え方は伝わらないと意味がない

UIUXデザイナーの言語化_伝えることのイメージ

UI・UXデザイナーの中には、「自身のデザインの意図が相手に伝わっているだろうか」と不安を感じている方もいるでしょう。導線が明確で誰もが直感的に理解できる設計ができればいいですが、それは決して簡単なことではありません。ビジネスにおいて言葉や意思は伝わって初めて意味を成します。クリエイティブの幅を広げるためにもどのように伝える努力をすべきでしょうか。

UI・UXデザイナーの理想と現実

AppleやBloombergを顧客としてきたユーザビリティ・コンサルタントの第一人者にスティーブ・クルーグ氏という人物がいました。彼はUI・UXデザインの本質について、「Don’t make me think(考えさせるな)」という考えを提唱しています。たしかに、パッと見て感覚的にやり方が分かるデザインは理想的だと言えます。しかし、その境地をデザインで表現することは難しく、うまく考えが伝わらないという壁にぶつかっている人も多いはずです。

UI・UXデザイナーのほとんどが1度は、デザインで伝えようとしたものの「本当に伝わっているのか?」と疑問や不安を抱いた経験があるのではないでしょうか。そして試行錯誤してもうまく伝わらず、どうしたらいいのか最適解を見出せずにいるかもしれません。現実的な話をするならば、どんなに素晴らしいデザインであっても、伝わらなければビジネスとしては成立しません。顧客はもちろん、利用するエンドユーザーにデザインの意図が正しく伝わる必要があります。

「伝わる」ことは、UI・UXデザイナーの武器になる

頭の中には漠然と答えが出ているにもかかわらず、周囲に的確な言葉で伝えきれないことはクリエイターに限らず誰にでもよくあることでしょう。しかし前述の通り、伝わることがビジネスにおいては大前提です。では伝えるためには何が必要でしょうか。人が自分の意思を他人に伝えたいと考えた時、もっとも有効なツールは「言語」です。クリエイティブな仕事をするうえで、説明を通して相手に正しく理解されることは大きな強みとなります。

たとえば考えをきちんと言語化できれば、顧客にデザインの意図をより具体的に説明できます。「どうしてこのデザインにしたのか」「なぜここに導線を配置するのか」という理由を述べたうえで、デザインを確認してもらうことで相手の理解も深まるでしょう。つまり、正しく考えを言語化できる「伝わる」コミュニケーションは、UI・UXデザイナーにとって大きな武器となるのです。

「伝える→伝わる」へ進化させる鍵が言語化

UIUXデザイナーの言語化_UIUXデザイナーのイメージ

UI・UXデザイナーを筆頭に、クリエイティブは極論伝わらないと意味がないと言えます。伝わることで初めて、ターゲットやユーザーの行動変容に影響を与えられて成果につながるからです。アウトプットの質を「伝える→伝わる」に進化させることを意識すべきでしょう。そのうえで鍵となるのが言語化のスキルです。言葉にしてコミュニケーションを取ることのメリットを紹介します。

顧客の意図を読み取り提案力が上がる

UI・UXデザイナーが仕事を進めるうえでは、解決したい課題と解決する手段の2つの考察が重要です。たとえば、顧客から「ある1つのボタン配置を変更してほしい」と依頼が来た場合、課題となるのは何かを考えるでしょう。

【CTA配置の課題を言語化】
顧客はなぜそのCTA配置が悪いと思ったのか

閲覧にストレスを感じてしまう可能性がある

あまり有益なWebサイトだと思われず離脱が多い

ユーザーにとって操作性・直感性が悪い

上記のように課題を掘下げると、「ユーザーにとって操作性・直感性が悪い」ということが根本課題になります。課題が言語化できたので、それを解決するための方向性も見えてきます。たとえば単純にCTA配置を変えてもいいですし、CTAのデザインや大きさを変更するなどの代替案も出せます。ユーザーにとって良い操作性や直感性を具体的に考えられれば、UI・UXデザイナーとしてより幅広い提案を行えます。

自己完結で終わらずに意図や根拠を明示できる

UI・UXデザイナーの仕事は自己完結で終わっては意味がありません。どんな意図で作られたデザインなのか、顧客やユーザーにとって必要である根拠などが的確に「伝わる」ことが、ビジネスでは求められます。言語化による「伝わる」を意識できれば、顧客との意思疎通もスムーズに行えますし、制作チームで目的を共有しやすくなります。結果的にそれはデザインだけではなく、プロジェクト全体のクオリティを上げることにもつながることでしょう。

デザインと言葉をリンクさせ、言語化のメリットを活かして「伝わる」仕事をすることは、UI・UXデザイナーには必須のスキルだと言えます。

ユーザーの思考回路や行動パターンの言語化を

UIUXデザイナーの言語化_思考や行動の言語化

UI・UXの設計が組めたら、その意図や根拠の説明(言語化)をセットで作成することに努めましょう。UI・UXを意識するうえでは、ユーザーの思考回路や行動パターンなども言語化して説明し、デザインの補足ができるとアウトプットの段階での伝わり方が変わってきます。

ユーザーの行動・思考パターンを理解するきっかけに

顧客から「なぜこのデザインにしたのか」と質問された場合、それに対して「かっこ良くて見やすいと思ったから」という回答ではあまりに抽象的です。これはデザイナーの頭の中のイメージでしかなく、的確な言語化できていないことを示しています。

一方で、ユーザーの行動・思考パターンを分解したうえで言語化した場合はどうなるでしょうか。「ユーザーのWebサイトの隅々まで見たいというニーズに配慮して、明暗はっきりした色合いのいデザインにしました。シンプルにすることで、周回するユーザーの目も疲れず煩わしさもなくなると想定できます。」というように、ユーザーを意識した言語化ができると、意図や根拠として説得力ある説明を行えます。

上記のようにユーザーの思考回路や行動パターンなども言語化して説明し、デザインの補足ができるとアウトプットの段階での伝わり方が大きく変わるでしょう。そのため、UI・UXデザイナーは自身の役割を「デザインで伝える」だけに留めていてはいけません。「デザインによって伝わる」という領域まで引き上げるために、アウトプットの質の向上に努めることが大切です。その際に言語化は必ず役立ちます。

UI・UXデザイナーはデザイン力+言語化の強化を

UIUXデザイナーの言語化_まとめ

【UI・UXデザイナー 言語化】

  • UI・UXデザイナーにとって言語化は必要な武器
  • 「伝えた」ことによる自己満足で終わらせず「伝わる」ことを意識する
  • ユーザーの思考や行動を理解し言語化することがデザインに役立つ

UI・UXデザイナーの多くは「このデザインは本当に理解されているのだろうか」という不安を抱えています。なぜそのような不安を抱えてしまうのか、それは「デザインで伝えよう」としているからです。もちろん、直感的にすべて分かるデザインが理想です。ただ、視覚情報だけ直感的にすべてを理解できる人ばかりではありません。だからこそ、デザイン力にプラスして「相手に正しく伝わる」言語化を武器として身につけることをおすすめします。

言語は人と人が意思疎通を図るうえでもっとも簡単で使いやすいツールです。UI・UXデザイナーとしてより精度の高い制作物を作り、顧客やプロジェクトメンバー間で共通認識を持つためにも、言語化スキルを磨きましょう。