映画「もう一度生まれる」 |2023年3月25日(土)~池袋シネマ・ロサほか、全国順次公開
2023年3月25日(土) ~
4月7日(金)
池袋シネマ・ロサほか、全国順次公開
「もう一度生まれる」の元となったドキュメンタリー作品「還る」も同時上映

Introduction

スーパー銭湯に流れる「二つの時間」あの時の記憶がよみがえる

スーパー銭湯が舞台で、コロナ禍で様変わりした日常を描く本作。 人々に拠り所を与え、心と体を癒やしてくれるスーパー銭湯だが、コロナの影響で閉店になり、 役割を果たせなくなる。しかし、清掃員(スタッフ)という立場を通して、 今一度、空間に触れ、綺麗にしていくことでまるで空間が生きているような… 生まれ変わる瞬間を描き、演出・脚本面ともに高い評価を受けた。
第8回京都国際映画祭入選・優秀賞、第32回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭入選。
監督は、フジテレビ報道番組「Live News α」のディレクターとしても活躍。当時、ADだった時に監督・プロデュースを務め、報道の世界で培った経験が作品に反映されている。新鋭・堀川湧気監督がスーパー銭湯を舞台に喪失と再生の二つの時間を描く-

Story

スーパー銭湯の新人清掃員として働く市川亮太(20)は仕事を通し、“当たり前の景色を保つこと“の難しさを知っていく。
髪の毛1本でも気にする仕事の姿勢や、心臓部でもある「ろ過装置」の存在を知ることによって、清掃業の世界にのめり込んでいく。次第に、スーパー銭湯を物として捉えるのではなく、生き物であると捉えるようになる。

そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、スーパー銭湯は休業を余儀なくされる。 休業の間、清掃作業からも遠ざかり、客を向かい入れていた“当たり前の景色“は失われていった。 休業期間が長引く中、店長から1通のメールが届く。

それは営業再開に踏み切ることなく、スーパー銭湯の閉店を知らせるものであった。 メールを通し、閉店を知った亮太は、大きな喪失感を露わにしていく。 清掃員たちは各々の形で、スーパー銭湯の最期に向き合うことになる。

休業期間の浴場施設に足を踏み入れた亮太は、黒カビが生えた浴室を見て、「休業中もこの空間は生きていた」と改めて実感する。 閉店を前に、亮太と清掃員たちの最期の清掃作業が始まっていく。

Cast

  • 市川亮太
  • 斉藤天鼓
  • 映画『飢えたライオン』(2017)でデビュー。主演作『ねぇ、気付いて』(2021)がショートショートフィルムフェスティバル&アジアにて優秀賞を受賞。主な出演作にドラマ「エルピス―希望、あるいは災い―」(2022)、Netflixオリジナルドラマ「FirstLove初恋」(2022)、映画『無頼』(2020)、『AWAKE』(2020)、『お揃いの孤独』(2021)、『明けまして、おめでたい人』(2022)などがある。
  • 成澤玲奈
  • 笠松七海
  • 『わたしの王子』(2014)でデビュー。主演作『かべづたいのこ』(2015)での演技により、福岡インディペンデント映画祭2016俳優賞を受賞。その後も話題の若手映画監督の作品に出演、主演作『おろかもの』(2020)が第13回田辺・弁慶映画祭にてグランプリ・俳優賞を含む5冠を受賞。他の出演作に『空(カラ)の味』(2016)『次は何に生まれましょうか』(2019)、『誰かの花』(2021)、舞台『さらば箱舟』(2023)などがある。
  • 木下健一
  • 入江崇史
  • 演劇集団円研究所/文学座養成所出身。1979年N.Y.に渡り、6年後帰国。テアトル・エコー入団。30年に渡りニール・サイモン、レイ・クーニー、エリック・ロメール等の舞台に出演。主演の一人を演じた舞台「ルームサービス」で文化庁芸術祭大賞を受賞、市川崑監督作品「鹿鳴館」で映画デビューを果たす。その後、様々なジャンルの映画、CM、ドラマに出演し現在に至る。
  • 長浜佳子
  • 伊澤恵美子
  • 俳優/プロデューサー、9歳の初舞台をきっかけに俳優を志す。主な出演作に、映画『子宮に沈める』、『あ・く・あ〜ふたりだけの部屋〜』、ノーミーツ『門外不出モラトリアム』、『Gift』、『みんな生きている〜2つ目の誕生日』などがある。その他TokyofmAuDeeの「山田玲司とバグラビッツ」レギュラーやフードコラム連載『お茶に漫画が合うのだが!!』等、活動の場を多岐に広げている。
  • 銭湯にいる父親
  • 沖田裕樹
  • 劇団ギャングエイジ・シアター創設メンバーの一人で、2000年~2010年の活動期間中の全ての作品に出演。主な出演作品は、映画『百円の恋』(2014)、『殿、利息でござる!』(2016)、『忍びの国』(2017)、『翔んで埼玉』(2019)、『決算!忠臣蔵』(2019)、ドラマ「メガバンク最終決戦」(2016)、「タチアオイの咲く頃に~会津の結婚~」(2016)、「名もなき復讐者ZEGEN」(2019)等、多数出演。
  • 銭湯にいる子供
  • 小山蓮
  • 劇団ひまわりに所属。主な出演作品は、だいにぐるーぷ(主演・母を探す少年)「今年の心霊スポット生活は中断になりました。」「旅館で出会った子を、北海道まで届けます。」「そして、最後の別れ。」などがある。
  • 店長
  • 小川北人
  • 清掃員エキストラ
  • 二宮蓉、木許昌子、折戸律夫

Staff

  • 監督・脚本・編集:堀川 湧気
  • ⽇本⼤学藝術学部映画学科で、映画やドキュメンタリーの制作について学ぶ。
    卒業後は、テレビ業界に進み、フジテレビの報道番組「Live News α」の制作に携わる。
    現在はディレクターとして、現場への取材、原稿執筆、編集までを主に担当する。
    学⽣時代、監督作品が NHK E テレ「岩井俊⼆の Movie ラボ シーズン2」にノミネートされ、テレビ出演を果たす。
    出演時には、岩井俊⼆監督とゲストの堤幸彦監督に作品についての講評を頂く。
    また、監督を務めた卒業制作が優秀作品に贈呈される「⽇藝 特別賞」を受賞。
    2021年、監督・脚本・編集・プロデュースを務めた映画「もう⼀度⽣まれる」が京都国際映画祭にノミネート。
    ノミネートを通じて、優秀作品に贈呈される「優秀賞」も受賞する。
    2022年には、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」にもノミネート。
    映画と報道制作、あらゆる映像ジャンルで活動の場を増やしている。
  • 監督・脚本・編集:堀川 湧気

Comments

  • 都会で働く人たちの休息の場としての湯殿。お湯。 その場と湯を支える人たちの汗もまた人生を巡る。 そんな余韻の物語でした。
  • 岩井俊二(映画監督)
  • ラスト、登場人物がヤケクソになる映画が好きだ。 『もう一度生まれる』も一種のヤケクソ映画だと思う。 コロナ禍の影響で閉店が決まったスーパー銭湯。 静まり返った真夜中に従業員たちがひっそりと集まり、二度とお客が来ることの無い浴場の清掃を始める。せめて綺麗な姿で送り出すために。 意味の無いことだと笑われるかもしれないけれども、そのヤケクソが彼ら、彼女らの譲れない矜持なのだ。 誰も知らない真夜中の静かなヤケクソに、人間の美しさが詰まっている。
  • 吉野竜平(映画監督)
  • 短編映画 ショートフィルムは、時代を素早く敏感に映し出す。 映像作家が伝えたい世界は、モノガタリが本来持つべき長さで表現されてこそ胸に迫る。 モノガタリそのものを体力とスガタとカタチ。 コロナが強引に連れてきた未来が沢山ある。 良いコトも、悪いコトも。 ヒトが集まるスーパー銭湯。 その現在進行形の「強引な未来」では、銭湯も姿を変えていかざるを得ない。 それは、僕たち自身も同じこと。 銭湯が、イキモノのように発する声、息遣いに耳を傾け、銭湯が優しく抱きしめてきた記憶が、かかわる人々を通じて覚醒する。 湯船に浸かって1から10まで数えた、僕自身のあの想い出も蘇る。 全ての営みに、始まりがあれば、終わりがある。 でもそれは、この作品のタイトル通り、「もう一度生まれる」ためなのだ。
  • 別所哲也(俳優)
  • 自主映画の映画祭の審査員として過去1000本ほどの作品に触れてきましたが、その中でトップクラスの出来でした。 登場人物たちの配置や出し入れ、個々のキャラクター描写に申し分ないのも素晴らしかったですし、物語構成や編集も卓越したものがありました。 そして何より音の使い方です。風呂場の床を磨く音、ボイラーが稼働する音、お湯が流れ出る音。こうした効果音を繊細に積み重ねていくことで、舞台となるスーパー銭湯がまるで生きものかのように映し出され、それが「最期の日」を迎えるという設定をより感動的なものにしていました。
  • 春日太一(映画史研究家)
  • わたしたちが寝静まる頃、人間の知らないところでおもちゃが活動を始める。 かつて、そう夢想したのと同じように、ひと気のない夜のスーパー銭湯が静かに息衝いて ゆく。「銭湯は生きている」のである。『もう一度生まれる』は、コロナ禍に撮影された。 現実の街並みからも人の姿が消え、世相に寂寞感が漂っていたように、 この映画にも同様の寂寥がある。それは、本来であれば聞こえないような物音を、 敏感に感じ取れるような音響設計が為されているからだ。 例えば、誰かと会話をしている時、周囲の音は気にならない。 音が鳴っているにも関わらず、喧騒にかき消されるからだ。 そういった繊細な<音>が、銭湯を擬人化させている。 「銭湯は生きている」と感じさせる由縁だ。そもそも、銭湯に張られた<水>は、 生命の源を暗喩させるモチーフだったりする。“生まれる”のは、コロナ禍の終息に伴って “再生”=“Re Born”する日々の営みなのだろう。
  • 松崎健夫(映画評論家)
  • 2020年。 新型コロナの感染拡大によって私たちの生活は一変した。 これまでの当たり前の日常が当たり前ではなかったことを知った。 水の音、湯桶の音、湯気の温もり、人の声、、、 人が命を吹き込むことで輝く空間が虚けた時、人は何を思うのか。 そして空間が命を宿していく時、人の心には何が生まれるのか。 銭湯という日常を舞台に描かれる終わりと始まりの物語である。
  • 三田友梨佳(フジテレビアナウンサー)
  • 床のタイルを磨く音、水が流れていく音、子供の笑い声… 音がとても心地よく効果的に使われていて、耳を澄ませて見聞きしたくなる作品です。 慌ただしい日々の放送業務に向き合いながら、さらに映画を撮るという バイタリティ溢れる堀川監督を尊敬しています。 それだけ表現したいものへの想いが強い、ということ。 コロナ禍で沢山の取材に出向き、 沢山の人の生の声を聞いた堀川ディレクターだからこそ表現された、 登場人物一人一人の繊細でリアルな感情がそこにあるように感じました。
  • 内田嶺衣奈(フジテレビアナウンサー)
  • 「セントウシーンがリアルなセイソウ映画」そんな製作者の洒落から生まれた 映画なのかと思いきや…とんでもなくピュアな思いに溢れた映画だった。 なお劇場の音響システムで鑑賞されると抜群の音浴効果が得られるはず!
  • 天明晃太郎(放送作家)
  • そこに魂や命があるというのを、理屈や言葉ではなく感じさせてくれる映像でした。 仕事が無くなる、なんて単純なものでは無いんだよなぁ…。今が切り取られた素晴らしい作品でした。
  • せきぐちあいみ(VRアーティスト)
  • 最初は自分も銭湯のスタッフになったような(実際過去にスタッフでしたが!) わびしさ、悔しさ、「今後の生活どうしよう」という焦りに共感して見進めていましたが、ラストに近づくにつれて自分の身体がスーパー銭湯の施設そのものになっていくような、排水管を流れるお湯は血液で、胃カメラ的なもので体内を見ているような、 不思議な感覚になりました。亡くなった人間を見送る際にも湯灌という行程がありますが、最後の清掃はそれを感じる尊さがありました。ずっと人を洗い、温める側だった銭湯が、 最期に心をこめて洗ってもらえて嬉しかったです。切なさで胸がいっぱいになってしまい、尺がたったの38分なことが信じられなかったのですが、どうにかあと1時間ちょいくらい使って閉店を食い止めていただけないかと、勝手な事を思ってしまいました。 マンションにしないでください!
  • 蟹めんま(イラストレーター)
  • お風呂屋さんって、ある人にとってはただの建物、ある人にとっては毎日通うホーム、 ある人にとっては旅の目的地かもしれない。 想像しかできない、会う事のない誰かのために命を吹き込む清掃員。 光を当てなければ見えない世界がこんなにも広がっている。熱い想いが沸いていた。 そして今日もわたしは、あたたかいお湯が湯船いっぱい張られているお風呂屋さんへ 歩いて行くのだ。
  • みかん(月刊サウナ編集部/OFR48)
  • この作品を観て、私自身も温浴施設を休業せざるを得なかったあの頃の心境を 思い出しました。誰もいない館内を見てまわったこと、営業再開を熱望するお客様からの 電話、先の見えない不安な気持ちなど、今振り返っても経営者として一番辛かった時期で した。作品は人のいない温浴施設の独特な空間が表現されており、そこにある寂しさや 不安が伝わってきました。当たり前に存在していたものが存在しなくなることの寂しさや、それでも従業員が思いを込めて清掃するシーンに胸が熱くなり、私も自身の施設を しっかりと運営して行こうと改めて感じることができました。
  • 内田茂樹(楽久屋 代表取締役)
  • 閉店後の清掃、機械室の濾過循環設備など、 普段お客様からは見えない温浴施設の裏側を見ることで、 多くの人がお湯のありがたみを感じてくれたら良いなと思います。 リアルな描写で、なんだか本当におふろの国が閉店してしまうような気がしてきて 寂しくなりましたが、そんなことを言ってはいられません。 年間何万人ものお客様、多くのスタッフ、取引先など、 地域に生きるたくさんの人々の生活と深く結び付つくことで存続している温浴施設。 多くの方の人生をあたためていくためにも、簡単に閉店させてはいけない。 コロナ禍や燃料費高騰などでいまも逆風が続く中ですが、 この業界を守らなければ!とさらに仕事のモチベーションが高まりました。
  • 望月義尚(アクトパス 代表取締役)
  • 新型コロナウイルスで当たり前の日常が無くなりいつ終わるかも分からない状況の中、 自分はただ待つことしか出来ない葛藤がとても共感出来ました。 そんな中でも当たり前の日常を取り戻す為に、今の自分に出来る事の一歩を 踏み出す大切を学んだ作品でした。
  • 楠本拓也(スパ・ガーデンオアシス 美健SPA湯櫻 支配人)
  • 今までの日常が大きく変わり、生活の様式もいろいろと変化しました。思い出の場所がなくなる、馴染みの場所が変わってしまうなど、いろいろと悲しいことも多かった時期だったと思います。「もう一度生まれる」別れを惜しむだけでなく、次の一歩に進む、そのための卒業式のように感じました。 これからの一歩を、後押しするためのきっかけになる作品であると思います。
  • 湊 和行(奈良健康ランド 奈良プラザホテル 温泉ソムリエ)
  • 映画「もう一度生まれる」は実は堀川監督がボクのおふろの国での深夜の浴室清掃を撮ったドキュメンタリー「還る」を基点とした、いわゆるパノラマ世界のもう1つの同じ場所での物語だ。「還る」はコロナ以前であり「もう一度生まれる」はコロナ禍である。登場人物の生き方や取り巻く状況は違えど、舞台は同じくおふろの国だ。あえて基点と言ったのはパノラマ世界と言えども、2つの世界の時間軸は同じであるということ。その軸の上で人は存在し、何もかもがいつかは消えてゆく。かつてそこに在った、だが今は存在しない、すべてはうたかた。そしてこの映画のタイトルの様にみんなまた別の宇宙で「もう一度生まれる」のだ。
  • 井上勝正(熱波師)
  • 最初はおふろの国が舞台になった映画と聞いていたので、どんなふざけ方をしているのかと思って見進めて行くと、時間を忘れて最後まで観てしまいました。しかもコロナが始まり数年が経ち、実際に潰れて行くお店が増えてくる現状にリンクしていて引き込まれてしまいました。その中での店舗スタッフの心の移り変わりやお店への想いが心に響き印象に残りました。リアルにこれからも無くなって行く店舗の裏側を想うと複雑な気持ちも残った映画でした。
  • 大森熱狼(熱波師)
  • 日常の当たり前を作るために沢山の音が溢れている。柔らかい音、硬い音、滑らかな音、つまる音、そのわずかな音の変化を日々感じ、いつもの音に変えていく。いつものあの笑顔、沢山の笑い声が、こだまする空間に変えていく。お客様のいなくなった時間。人知れず静かな空間だけど、活きてる、生きてる音がする。
  • ドラゴン相澤(熱波師)