Webサービスは、現代の世の中ではなくてはならないものとなっています。多様な新技術が登場して新しい形のサービスが生まれ、今後Web業界はますます発展していくと考えられます。そんな中、異業種からWeb業界に入りたいと考える人や、新規にWebでの活躍を考えているクリエイターも増えているようです。
今回は、Web草創期からディレクターとして活躍しているクリーク・アンド・リバー社の塚野雅人さんに、Webディレクターの仕事内容やその魅力を語っていただきました。

塚野 雅人(つかの まさと)
クリーク・アンド・リバー社 デジタル・コミュニケーション・グループ シニアリーダー
音楽イベント代理店に在籍していた1998年に、自社サイトの立ち上げを任されたことをきっかけにWeb業界入り。クリーク・アンド・リバー社の転職支援や出向により、電機メーカーの製品サイト、サプライチェーンマネジメントサービス、医療系情報サイト、消費財メーカーのブランドサイト、教育関連サービス企業サイトなど、さまざまなWebサービスに携わる。2020年からはクリーク・アンド・リバー社内でデジタル制作部門の横断的な業務管理や人材育成事業に注力している。

草創期からWebに関わり、現在は後進の育成も

──塚野さんは、未経験からWebディレクターとして活躍できる「次世代Webディレクター育成プロジェクト」に参画しているそうですね。
Webディレクタ-・塚野氏
はい。Webディレクターは恒常的に人材不足が続いています。その原因のひとつは、Webディレクターという職業が実態以上に難しいと思われていることではないかと考えています。
そこで、未経験からでも基礎的な知識をつけた上で実際の業務に就き、働きながら力をつけていけるプロジェクトを進めています。先輩や上司からの指導を受ければ、未経験でもWebディレクターとなって、キャリアを積んでいけることを、20〜30代の若い皆さんに広めているところです。

未経験でも働きながらスキルアップできる!Webディレクタ-育成プログラム

──プロジェクトについては詳しくうかがっていく前に、長年のWebディレクター経験をお持ちの塚野さんに仕事の魅力を教えていただきたいと思います。
まずは、どんなきっかけでWeb業界に携わることになったのか聞かせていただけますか。

Webの仕事に関わったのは1998年、Webの草創期の頃です。当時音楽系のイベント代理店に在籍していて、自社Webサイトの新規立ち上げを任されたのです。
その経験から今後はWebなどデジタルが情報発信の中心になると考え、Web専門の広告代理店に転職しました。
転職では、クリーク・アンド・リバー社の転職支援を活用しました。以降、所属企業や働く場所は何度か変わりましたが、Webディレクターの仕事を続けていてクリーク・アンド・リバー社とのつき合いもずっと続いています。

人と人、技術をつなぎ、最適なソリューションを提供する

──Webディレクターとは、そもそもどんな仕事で、どんな役割を持っているのでしょうか。

ひと言で言うと、お客さまとクリエイターとの間をつなぎ、最適なソリューションを提供する仕事です。
お客さまと話し、要望や予算に合わせて最適なコストバランスでのアイデアを出し、つくるサイトの機能や基本デザイン、内容を決めていきます。
そしてデザイナーやコーダーなどのクリエイターに指示を出し、制作中もお客さま、クリエイターとよく連絡をとり、スムーズな進行をしていきます。
Webディレクタ-・塚野氏
今「つくるサイト」と言いましたが、お客さまの課題を解決するために制作するのはサイトとは限りません。
紙媒体や映像を使うほうが、よりよい解決につながる場合もあり、そういうときには、Webサイト以外のツールや表現手段を含めて、最適解を探し出して提案をする必要があります。広い視野が必要な仕事です。

──広い視野でお客さまに提案するには、クリエイターの持つ技術やかかるコストなど、知識が必要ですね。

そうですね。どんな技術がどのくらいの時間とコストでできるのかは、折にふれてクリエイターとしっかり話さないといけないと思います。そのヒアリングの集積でベースの知識ができていきます。
もちろんお客さまに対してもヒアリングが大切なのは同じです。「相手が何を考えていて、何を欲しているのか」ということを感じとらなければ、最適なソリューションを提供することはできません。

さまざまな方向からお客さまのビジネスを知る

──お客さまから、要望を引き出すことは難しくありませんか。どんどん話していただけるものですか。

「自分たちのビジネスは自分がいちばんよくわかる」というスタンスのお客さまもいらっしゃいますし、なかなか本音を語ってもらえないという場合もありますね。そうすると、プロジェクトの本質が見えなくなって方向性を失ってしまうことがあります。
最終的にはしっかり話し合い、提案に至るものですが、お客さまからの信頼を得るのに苦労することは、やはりあります。

──本音を話していただけないときはどうするのですか。
本当にお客さまが望むことは何だろうかと考えると、お客さまの展開する商品やサービスのユーザーが何を望んでいるのかを考える必要が出てきます。
コストがかけられるのであれば、調査会社に依頼して調査をすることもあります。難しければ、ターゲットになる人たちがどんなことを考えているのか、インターネットで調べたり、まわりの人に尋ねたり、お店でお客さんがどう選んでいるか観察しに行ったり。いろいろな方法でエンドユーザーが考えていることを知って、お客さまのビジネスを知り理論武装をしていきます。
Webディレクタ-・塚野氏
──なるほど。広く世の中を見ていくことも必要なのですね。

お客さまに提供するWebサイトは広く世の中に発表するものであり、Webディレクターの仕事は世の中への影響も大きいんですよ。

組み合わせていくクリエイティビティと俯瞰の力

──世の中への影響というのは、Webディレクターの仕事の楽しさにもなっていますか。

エンドユーザーをはじめ、世の中の人に見てもらえる喜びというのはあります。
仕事の楽しさとしては、デザインやコーディングなど、個々の技術を組み合わせてひとつのサービスとして作り上げられる点かなと思います。
小さなブロックを組み合わせて一つの大きな形にする。自分でコードを書くわけでもデザインするわけでもないですが、組み合わせて総合して、ひとつのプロジェクトを成り立たせることもクリエイティブであり、Webディレクターならではの楽しさだと思っています。
いろいろな専門性をもったクリエイターとつきあって、無限に知識を仕入れられる点も、この仕事のとても好きなところです。

──先ほど、話すことが重要というお話がありましたが、ほかにもWebディレクターが気をつけるべきことはありますか。

ディレクターは、常に少し引いた位置でプロジェクトを検証していく立ち位置にいる必要はあると思います。プロジェクト全体を、ちょっと離れて見たり、いろいろな方向から見て「これでいいのか」考えたり。それが制作する中でのPDCAにもつながっていきますが、検証し続けることが大切です。
私の経験でも、チーム内でお互いに確認せずに「これでいいだろう」で進んでいった結果、気づいたときには、お詫び文を掲載しないといけない事態になっていたということもありました。こうした単純なミスの防止も含めて、一歩引いた位置でプロジェクトを検証することはディレクター職の大切な役目だと思います。
Webディレクタ-・塚野氏(横顔)
そういう意味では、「ディレクターなんて難しそう。できない」と思うような人、不安を抱えやすい人は、検証しながら物事を進めていくことが得意ですから、Webディレクターに向いているといえるかもしれません。

──ディレクターは検証の繰り返しをしていくことが必要なのですね。

はい。プロジェクトは最初に決めたことでずっと進むわけでもありません。途中で新しい要望が出てくることも頻繁に起こります。
そういう意味でも、こまめな検証が必要ですし、途中で出てきた要望や細かい方針変更の調整は、ディレクターが責任をもって行わないと、クリエイターに大きな負担がかかります。
クリエイターは自分の領域に特化して専門性を発揮します。プロジェクト全体を俯瞰して見るのはディレクターの役目。クリエイターを守り、適切な方向に導いていくことも大切です。

クリエイターをプロモーションする役割も担っている

──クリエイターがきちんと力を発揮できる環境をつくるから、いいものができるということでしょうか。

そうです。いいものができれば、関わったクリエイターはお客さまから評価されて、さらに新しい仕事にもつながります。クリエイターのプロモーションをするのもディレクターの仕事だと私は考えています。クリエイターが褒められればよいのです。

──クリエイターばかりが褒められたら、さびしくはないですか。

クリエイターが褒められれば、結果としてディレクターは仕事をもらえますから。
以前、当社からディレクターがチームを組んで代理店に出向して、消費財メーカーのブランドサイトを複数担当していたことがあります。リニューアルなど、さらに制作が必要になったとき、そのお客さまが、クリーク・アンド・リバー社のチームを指名してくださったことがありました。そのときは本当に嬉しかったです。「またお願い」と言われるときはやりがいを感じます。
クリエイターが評価されればディレクターに指名がきますし、お客さまも、クリエイターの間にディレクターがいるという価値はわかってくださいますから、さびしいことはありません。

手厚い指導のもと未経験からWebディレクターになれる育成制度

──冒頭で少し話題にした「次世代Webディレクター育成プロジェクト」について教えてください。このプロジェクトはなぜ始まったのですか。

先ほども言いましたように、Webディレクターの人材不足という背景があり、育成の重要性を感じたからです。当社では、ゲームの部門で、未経験の人を採用して教育し、企業さまに出向してもらって現場で経験を積むというプロジェクトが先行して行われて成果を出しており、これをモデルにしています。

──このプロジェクトでWebディレクターのキャリアを開始された方は何名くらいいるのでしょう。

プロジェクト開始から1年半くらいが過ぎ、現在は16名が他の企業様に出向、4名が社内にいて、ディレクション業務に携わっています。

──企業への出向は、1人で赴くわけではないのですか。

必ず指導者について仕事をします。「背中を見て覚える」なんて風潮はありません。出向先の企業としてもお金を払っているわけで、初心者1人に任せないでしょう。
笑みがこぼれるWebディレクタ-・塚野氏
──なるほど。ただ、先ほどお話をうかがったところでは、Webディレクターの仕事はとても幅広い知識や、人とコミュニケーションする力が必要なので、難しい部分もあるのではないかと思ってしまうのですが……。

どんな仕事でも同じだと思いますが、はじめからベテランと同じ働きのできる人はいません。私がお話ししたディレクターの仕事も、ある程度力をつけてきた人の話ですから、最初からすべてできないのは当たり前です。
今、プロジェクトで活躍中の方も、まずは制作の進行管理のアシスタントからはじめる、まずはデータ入力をしながらサイト制作に必要な情報やデータの中身を知るなど、無理のないことからはじめています。いきなりお客さまと話すといったことはありません。独り立ちを目指して段階的に力をつけていきます。裁量の範囲は少しずつ広くなり、それにつれてディレクションの仕事はますます楽しくなっていくと思います。
当然力をつけた後には、出向先に正社員として入社する、クリーク・アンド・リバー社に戻って別の出向先でさらにスキルを磨くなど、多様な道があります。

──後々のキャリアプランも立てられるのですか。

クリーク・アンド・リバー社はクリエイターのためのエージェント企業ですから、育成という入口だけでなく、その先も見据えた制度を設計しています。エージェントと密に連絡をとってもらい、キャリアデザインのセクションとも連携しています。
今は私もクリーク・アンド・リバー社内で管理業務をする立場であり自画自賛になってしまいますが、私自身、クリーク・アンド・リバー社のエージェント力のおかげで、さまざまなキャリアを積み、力をつけてこられました。独り立ちした後もクリーク・アンド・リバー社との接点を持って損はないと思います。
Webディレクタ-・塚野氏
──Webディレクターとして伸びていく人には、共通点があるのでしょうか。

大きくふたつあります。ひとつは、先ほど言ったように、自分の仕事に対してちゃんと検証ができるかどうか。もうひとつは、知識欲があること。お客さまについても、技術についても、クリエイターについても、知りたいと思う欲を持っている人ですね。新しいことに取り組むときに、拒否反応を起こさない姿勢は必要です。

──最後に、若い方へのメッセージをお願いします。

お客さま、クリエイターなど、いろいろな人たちの役に立てるところはWebディレクターの魅力です。私にとって原動力ですね。人に喜ばれることを糧にできる仕事です。
そんなやりがいのある仕事ですから、興味のある若い人は失敗を恐れず、Webディレクターにチャレンジしてほしいと思います。若いうちは、失敗したとしても、次にそれを経験として活かせばよいのです。周りにサポートしてもらいながら、イチから仕事を覚えて成長できるのは、二度と戻らない若さの特権です。チャレンジの気持ちを大切にしてください。

インタビュー・テキスト:あんどう ちよ/撮影:SYN.PRODUCT/企画・編集:澤田 萌里(CREATIVE VILLAGE編集部)