「すべてが相互につながる『よりよい世界』を実現する」という理念のもと、広告事業・インターネットサービス事業・プラットフォーム事業等の事業基盤を活かした新たな価値の提供を目指す、Supership。
同社デザイン統括室の室長で、デザイナーとしても幅広い活躍をされている上谷真之さんに、人材育成の効果的な方法や、クリエイターに求められることなど、お話を伺いました。

 

■ デザインを介して社会に影響を与えられるような仕事がしたい

絵を描くにしても工作をするにしても、ひとつのことに固執するタイプで、物事に対してこだわりが強い子どもでした。家の壁や床等を自分仕様にリノベーションすることが楽しくて、インテリアデザインの専門学校へ進学したものの、高校生の頃から組んでいたバンド活動に本腰を入れた結果、学校へはあまり行かなかったですね (笑)。

卒業後も定職には就かず、20代中盤までは音楽にのめり込んでいて。そういった中でも、PhotoshopやIllustratorを使ってバンドのグッズをデザインしたり、Webサイトを制作したりしていましたが、このままではいけないと思ってWebの制作会社に入社しました。その後数年間、受託制作の仕事を続けた後に、前職で自社事業をおこなう企業に転職しました。

事業やサービスに対して経験を重ねていく上で、キャリアパスとして「次はどこに向かおう?」と考えた時に、“デザイン”というキーワードで、組織や社会に向けて何か影響を与えられるような仕事ができないものかと次第に考えるようになりました。

株式会社nanapiの面接の際に、代表の古川と話をする機会があったのですが、業界的にデザインへの理解がある経営者がまだ少ない中で、デザインやサービス開発の本質的な話を視座高く話すことが出来たんです。そうやって数回に渡り話をしていくうちに、「この人の元でなら自分自身の成長はもちろん、組織や社会に対してもデザインを軸にした様々な活動を進めていくことができる」と自然に思えたので、転職を決意しました。

 

■ テキストを一切使用しないサービス開発の裏側

キャリアを積んでいく一方で、Web業界のデザイナーのプレゼンスがなかなか高まらないことに対して、ずっと課題を感じていたんです。国内の事例を見てみると、オペレーション寄りなポジションにおさまってしまいがちで、ステップアップが臨めないといったケースがまだまだ多いのが現状でした。

デザイナーに対しての固定概念を変えるためにも、これまでとは違う新たな考え方や取り組み、対外的な発信が必要であり、まずは自分の仕事を通してそれらを発信していこうと考えました。
FacebookやTwitterといったSNSが盛んな中、逆転の発想で非言語のSNSアプリを作ってみようと、2014年の後半に『emosi(エモシ)』というサービスを立ち上げました。

“ネガティブな感情をポジティブに変えてくれる、新感覚コミュニケーションアプリ”をコアコンセプトにした、テキストは一切使わず、画像や動画や音声でコミュニケーションをするサービスで、企画から開発まで僕とエンジニアの二人で進めました。「こういったデザイン/サービスづくりの思考や手法があるんだ」ということを、実際のサービスを通して社内に向けて発信できたことは大きかったですね。

たとえば「この手法を使えば、こうなる」というのを、周囲に丁寧に説明しながら制作を進めていったんです。新規プロジェクトが立ち上がってからリリースし、サービス改善を進める中で、組織の学びが着実に蓄積されていく実感を持ちながら進めることができました。

その後、同様な取り組みを社内で続けていき、自社のデザインや開発のスタイルが確立されナレッジが蓄積していく中で、それらを取り入れながらサービス改善を続けているのが、即レスコミュニティアプリの「アンサー」です。

 

■ 相手の意欲を引き出す、コーチングを中心とした人材育成

人材育成に関しては、「人の成長をあきらめない」ということを信条に、マネジメントに携わっています。特にこの業界は人材の流動性が高く、自分に合わないと思ったらすぐに辞めてしまう。それに加えてどの企業もマネジメントリソース不足のため、人材育成に力を入れている企業が少ないのが現状です。
だからといって、新卒や若手のデザイナーを採用するだけして、育成を後回しにする理由にしてしまうのは何か違うと思うんですよ。長期的な育成アプローチの中でしか身に付かないことはたくさんあるので、それらに対する支援を怠ることなく、徹底していくことが成長をマネジメントする上で重要な事だと思っています。

ですから、まずは相手の話を聞いて「個人としてそもそも何がしたいのか」という根本にある意識を引き出すためにも、マンツーマンでしっかりと向き合うコーチングに重点をおいています。相手にもよりますが、人生相談に近いレベルになる場合もあります(笑)。
たとえ時間がかかっても、相手の主体的な意識さえ引き出す事ができれば、あとは少しの支援で自然と成長していく状態になります。逆に技術的なティーチングなど直接的なアプローチに関しては一切しません。その人が持つ、人間性や思考を伸ばすためのきっかけを与えることを大事にしながらコミュニケーションしています。

また、あらゆる仕事をしていく上で、自分自身と向き合い理解できているかという点も、成果や行動に大きな影響が出てきます。小規模のプロジェクトだと、一人の力がチームに与える影響は当然大きくなるので、自身のアイデンティティを理解し、その上でアウトプットし続けることも、プロジェクトにとって大事な要素になってきます。

 

■ フォーカスを“会社”ではなく “社会”においてほしい

僕自身、何事に対してもまず“批判”から入るんです。一般的に批判というとネガティブなものに取られがちですが、まず最初に対峙した事柄をゼロから問い直すことにより、その本質を見極めることができ、客観的な判断を下すことができるようになります。

例えば、昨今はUXやデザイン思考がビジネスに対して有効である、などと言われることが増えてきましたが、「本当に有用か?具体的にどの程度の成果に繋がるのか?」というところから入り、時には自分の出した答えすらも批判して思考を進めます。
また、デザイナーが流行りの技術や手法について話をしてきても、「流行っているかどうかは別として、君自身はどう思ってるの?」と、問うようにしてますね。

他にも若手のデザイナーによくありがちなことだと思うですが、Webデザインでもプロダクトデザインでも、領域の境界に固執し過ぎる傾向があると思うんですよ。そこは分け隔てることなく、柔軟に捉えておいてほしいということも伝えるようにしています。

日本のデザイナーは器用で頭の良い方が多く、時代ごとのトレンドにとても敏感です。今であればデザイン思考やUX、少し前であればFlash全盛期など、「とりあえずこれを知っておけば間違いないだろう」といった短絡的な姿勢が象徴しているように、仕事においてまず“型を知る”ということは勿論大切なのですが、型止まりになってしまう人が多いとも感じます。
だから、今後は個々がメタスキルを伸ばすことを意識し、キャリアをアレンジする応用力が必要になってくると思っています。

さらに、外部のデザイナーと話をしたり勉強会などでアウトプットするなど、できるだけ意識して外に出るように伝えています。フォーカスを“会社”ではなく、“社会”においてほしいと常々思っています。ひとつの会社から学べることって、想像以上に少ないので、会社という狭い枠に収まらず俯瞰的に可能性を追求してほしいと思います。

極端な話かもしれませんが、「なによりもまずは自分」という優先順位で仕事に取り組んでみてもいいと思うんです。特に若い方に向けて言いたいことですが、自分の輪郭をしっかりと捉えた上で、もっとワガママになってほしいですね。
余計な情報が剥がれ落ちると、自分と向き合う事も自然とできるようになる。こうすることで、流行や多すぎる情報に惑わされることなく、常にぶれないクリエイターになれると確信しています。


■ Supership株式会社
Supershipは、「すべてが相互につながる『よりよい世界』を実現する」という理念のもと、広告事業・インターネットサービス事業・プラットフォーム事業等の事業基盤を活かした新たな価値の提供を目指し、2015年11月1日に株式会社スケールアウト、株式会社nanapi、株式会社ビットセラーの3社が合併したKDDIのグループ会社です。今後、スマートフォン最大規模の顧客接点とデータ利活用により、お客さまのご期待に応える新たなサービスを提供していきます。

社名  :Supership株式会社
所在地 :東京都港区南青山5-4-35 たつむら青山ビル
設立  :2007年12月
代表者 :代表取締役社長 森岡 康一
事業内容:インターネットサービス事業、広告事業、プラットフォーム事業、その他
主要株主:Syn.ホールディングス株式会社
http://supership.jp/

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