注目企業の中の人によるコラム
昨今、世間の注目を集めるようになったMA(マーケティングオートメーション)。カスタマーとのコミュニケーションを自動化、最適化するこのプラットフォームが、今ではBtoB領域においても活用されるようになってきました。
今回は株式会社リクルートコミュニケーションズ第3ソリューション局でマーケターを務める福塚隆志さんに執筆を依頼。“魔法の杖”とも評されるMAの可能性について寄稿いただきました。

マーケティングの新しい可能性を探りたい

リクルートグループNo.1のマーケティング課題解決集団になる!
それが、私が所属する第3ソリューション局 ソリューション推進部のミッションです。

日々、リクルートグループを横断して飲食や住宅、採用、ブライダルと多岐にわたる事業領域と対峙しながら、「どうやったらビジネスは成長できるのか」「どうやったらカスタマーとの良好な関係を築けるか」と、マーケティング戦略について知恵を絞っています。

部としては、新規カスタマーや既存カスタマーに対するソリューションを多く保有していますが、私がマネジャーを務めるCRMビジネスソリューショングループが専門としているのはBtoB領域です。

リクルートグループが運営するメディアのカスタマーではなく、広告等を出稿してくださっている法人企業やお店向けのカスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)を主に担当しています。

これまでCRMの“カスタマー”という言葉は一般的に消費者のことを指していましたが、それが近年、新たなマーケティングテクノロジーとして「BtoB」への応用が適用されるようになってきました。

世界の最先端事例を研究しながら、マーケティングテクノロジーの新しい可能性を探る。当社の社風でもあるのですが、こうしたエキサイティングなミッションに携われることはマーケターとしては非常にありがたいことだなと思っています。

「Job理論」が、BtoBマーケティング成功の鍵なのではないか

MAとは、昨今マーケティング業界で注目を集めているマーケティング・プラットフォームのことです。カスタマーとのコミュニケーションを自動化、最適化することで、「ユーザーがほしいときに、ユーザーがほしい情報を配信する」ことができるようになります。BtoCではすでに多彩な成功事例が生まれていますが、こと海外と比較するとBtoBでの成功事例は未だ成長途中だと感じています。

私たちのチームでは、「リクナビHRTech転職スカウト」という企業の採用をサポートするスカウトツールのCRMを担当しています。

採用を希望する企業の採用担当者様にとって、すべてのアクションや意思決定の起点は“Job”。「中途社員を採用したい」「企業課題を解決したい」といった業務が発生することによって、「どうすれば良い人材を採用できるのか、その手段は何が最適か」と検討し始めることになります。

ここにはビジョンや企業風土などの“法人格”はもちろん、担当者個人の、例えば「このサービスを使えば簡単に良い人材を見つけることができるのか」「優良な人材を採用すれば自分の評価も上がるのではないか」という欲求も大きな影響を与えます。

コミュニケーションという手段を使って採用担当者様の心を動かすためには、相手が何を課題としているのか、何を解決したいのか、どうすれば解決された状態と言えるのか、を理解するところから始まります。

オートメーション化された世界では、人間理解の深さが問われる

「リクナビHRTech転職スカウト」では、サービスに関心を持ち、お問合せいただいた企業様やサービスを導入いただいた企業様へのコミュニケーション等にMAを導入しています。

この設計を始めるにあたり、まず私たちが重視したことは、サービスやサービスを利用している企業様に対する本質的な理解です。そのために、サービス開発者や、利用いただいている企業様と日々向き合っている営業担当者やコールセンター担当者10名ほどに、「開発者はどんな想いでサービスをつくったのか」「サービスを利用する企業様はどのように活用しているのか、困りごとや良い活用事例はないか」等を詳しくヒアリングしました。企業様の情報を集める際には、業界や企業規模・採用フェーズに偏りがないようにヒアリング先を選定することも心がけました。

その過程で、このサービスは「企業様が抱える課題」を解決するために生まれたサービスであることを知り、また、開発時に想定していた利用とは異なる活用をしている企業様の存在を知りました。例えば、ヒアリング結果のように、企業様の切実な悩みを知るとともに、上手に本サービスを活用していただき、予想以上の成果が出て喜んでくださっている企業様の存在も知りました。もっと多くの企業様にこの喜びを体験していただきたいと思い、ヒアリングで得た情報をメールコンテンツに取り入れMAで配信するなど、もっと喜んでいただけるサービスにするためにも活用しています。

生の声を聞くことで、私達がコミュニケーションを行う企業様の視点になることができ、その結果、新しい“気づき”を得られます。
忘れてはならないのは、たとえメールという無機質なチャネルを通したコミュニケーションであっても、その先にいるのはひとりの人間であるということ。現在もPDCAを回していますが、会員登録のあとに「ありがとう」と感謝を伝えるメールがあるかないか、不安解消メールを一週間以内に送るかどうかで離脱率が大幅に変わってくるんです。「自動化=機械的」、そんな誤った認識に陥らないように、コミュニケーションのプロフェッショナルとして「相手を深く理解すること」が重要だと思います。その上で、正しくテクノロジーを活用することが一番大切なことだと思います。

まだまだこの挑戦は始まったばかりですが、それでも結果として「契約までのリードタイムを62%に短縮できた」「サービスの定着率が3倍になった」などの成果が見えてきたため、BtoB領域におけるMAの可能性のひとつを示すことができたのではないかと思っています。

その他ヒアリング結果(抜粋)

    • 清掃スタッフ管理の採用に苦戦しており、採用人数は年に1人程度でしたが今では2、3か月に1人は採用にいたっています。(建築業界:清掃スタッフマネジメントの募集に活用)

    • 複数のエージェントに登録していましたが要件にあった紹介が上がってこず、採用活動は非常に難航していました。「転職スカウト」を活用したことで。月の紹介目標数にたどり着くことができました。(建築業界:施工管理者の募集に活用)

    • 同業界の大手出身者で、30代前半の即戦力人材を探してましたが、なかなか応募につながらない状況でした。登録者検索機能で絞るべき点と広げるべき点を明確にしておくことで、自社にマッチした優秀な人材を見つけ出し、確実に応募につなげることができました。(広告業界:中堅/ミドルクラスの募集に活用)

  • 沢山の応募はあるものの、その中から自社にマッチした人材に出会えない状況でした。そこで、フリーワード検索機能を活用し、「規模感」や「世界観」が近いショップ経験者に絞りスカウトを行った結果、要件とマッチした登録者を見つけ出すことができ採用成功につながりました。(小売り業界:販売職の募集に活用)

最終的な目標は、MAでファンをつくること

現在、「リクナビHRTech転職スカウト」では、MAを通じて2万社以上の企業様にサービスを提供しています。プロジェクトの成功をきっかけにして、サービスを運営する株式会社リクルートキャリア側にMAの専門グループが立ち上がることになりました。また、最近では「自動化によって生まれた“時間”で新規開拓に力を注げるようになった」という声も耳にするようになりました。

「MA=楽ができる」と考えている方も多いと思うのですが、MAが持つ可能性というのは生産性だけではないと思います。これからさらにデータが溜まっていくことで、ジャーニーマップがより明確になっていき、得られた結果や分析したデータを使うことで、人間の想像を超えた未知のサービスやマーケティング施策を生みだすことができるかもしれません。私の最終的な目標は、リクルートグループで世界に負けないBtoBマーケティングを実現することです。

これからもあらゆる技術や手法を吸収しながら、たとえメールなどの非対面型コミュニケーションであっても「このサービスが好きだ」「このサービスを他の人に紹介したい」というファンをつくれるようなCRMを築いていきたい。どのようにコミュニケーションをデザインすれば、まるで対面しているかのような“信頼感”を築けるのか。先端事例を研究し続ける中で、BtoB領域におけるMAの可能性を模索し続けていきたいと考えています。


企業プロフィール

Recruit Communications Co., Ltd. リクルートグループにおいて、クライアントの集客ソリューションから、Webマーケティング、メディアの制作・流通・宣伝、カスタマーサポートまでを担当する。
〒104-0054 東京都中央区勝どき1-13-1 イヌイビル・カチドキ
URL:https://www.rco.recruit.co.jp/