技術の発展により、ドローンを使った新たなビジネス展開が可能となりました。
企業においてもさまざまなドローンビジネスを展開し始めており、最新のテクノロジーを導入するには良いタイミングともいえるでしょう。

ここでは、ドローン市場拡大の可能性について、ご紹介します。

ドローンビジネス市場規模の拡大


インプレス総合研究所によって発表されたドローンビジネス市場の動向を調査した報告書『ドローンビジネス調査報告2019』によると、2019年度の国内ドローンビジネス市場は1,450億円で前年度比約55%増に。
さらに東京オリンピックが開催される2020年度では2,185億円と飛躍的に伸びしろがあると予想されています。
2024年度には、2017年度の約10倍となる5,073億円に達すると予想されています。

2017年時点での予想では、その10~15%程度を下回る規模が予想されていましたが、年を追うごとにドローンをビジネスとして活用できるシーンは増え続けており、今後もさらに市場規模が大きなものになるのではという推測もできます。

これまで、ドローンビジネスに参入していなかった企業においても、今後の伸び率を考えると参入を検討する価値はあるでしょう。

ドローンの活用事例

ドローンビジネスといえば、ドローンとカメラを使った空撮技術が主流でした。
特に映像制作の分野においては、ドローン登場以前にはできなかった撮影手法、表現が可能となり、ドローンで撮影したシーンがバラエティ番組でも楽しめるようになったことは、多くの人が知るところかもしれません。
しかし現在ではドローン機体そのもののスペック向上により、空撮のみならず、他分野でのドローン活用が考えられるようになりました。
その点も踏まえ、ドローンの活用事例についていくつかご紹介致します。

空撮事業者

一般的によく知られているのが、ドローンを利用した空撮です。テレビメディアはもちろんのこと、最近ではミュージックビデオの撮影にも採用されています。

興味深い分野としては、マンションの販促映像です。マンションの敷地からエントランスまでの道のり、部屋からの眺望イメージ等、ドローンが使われる事例が増えています。

ドローン事業のメインとなるビジネスモデルでもありますが、高度な技術を必要としないことから、参入障壁も低く市場の傾向としてレッドオーシャンに傾きつつあります。
これから新規参入するのはやや難しい業界と考えられています。

農業

人手不足が心配されている農業分野でドローンを活用しようという動きが盛んになっています。時間と労力がかかる農薬散布に、ドローンを使うことで、スピーディに効率よく農薬散布ができるようになりました。また、現在研究がすすめられているのが、精密農業です。

ハイパースペクトルカメラを搭載したドローンを使って、作物の育成状況や必要な肥料量の算定などの一括管理を行い、労働生産性を向上させると共に標準化が期待されています。さらに、作物を荒らす野生動物を監視して追い払うためのシステムも実現可能だと考えられているのです。

農業用のドローン普及は民間による動きもありますが、それとは別に政府でも具体的な目標に向けた計画が進められています。

農林水産省による農業用ドローン普及計画によると、その目標として、

  • 水田を中心とした土地利用型農業の作付面積の半分以上への普及
  • 野菜や果樹、中山間地域における先進的な経営体への導入

が掲げられています。

利用分野別で見ると、農薬散布の面積を100万ヘクタールに拡大し、2022年度には水田作、畑作、露地野菜、茶といった営農において普及が完了していることを目的としています。

農業のドローン利用は民間だけでなく、政府としても課題として取り組んでいるため、税制や補助金といった優遇措置が受けられることが期待でき、ビジネスとしても取り組みやすいテーマとなります。

土木測量

国土交通省では、建設現場のIT化の一環として、i-Constructionを導入。ドローンによる空撮測量を推進しています。カメラを使った写真測量はもちろんのこと、近年ではドローンにレーザースキャナーを搭載することで、より正確で素早い測量を実現しています。

実際に北海道の工事においてドローン測量が実施され、起工測量が1週間から、わずか3日に短縮できたと評価されています。

測量に求められているテーマは効率化であることから、今後も測量を行う多くの場面でドローンの活躍が期待されています。

点検・検査

土木測量分野だけではなく、施設点検や検査やメンテナンスの分野でも、ドローンが活躍しています。工場内や工事現場、大きな構造物の屋根や高所点検で、ドローンが使われ始めています。

特に国内のインフラメンテナンスにドローンの活用が大きく期待されています。
2012年に山梨県で発生した笹子トンネル天井板落下事故を契機に道路、鉄道といったインフラの点検方法や頻度について見直されることになりました。

日本にあるインフラの多くは高度成長期に作られたものが多く、現在では老朽化が進んでいることから、今後も事故発生の可能性があることを踏まえ、点検手法の見直しが図られていますが、それにドローンを活用しようという流れがあります。

先述のトンネルや橋梁は点検中に崩落するようなことになれば大事故となるため、作業員の安全を確保するためのドローン活用が検討されています。

一般的にこれらの業務は、作業員がリフトやロープを使い高所作業を行っていましたが、非常に危険な作業のため改善が待ち望まれていました。ドローンを使うことで、安全な点検ができると期待されています。

物流


人手不足やコスト削減の対策として、ドローンを使った宅配サービス事業が注目されています。日本国内では最近、福島で郵便局が拠点間配送を始めました。中国などの海外でも実用化が進んでおり、さらにスイスの医療機関では血液や器具などをドローンによって配送する術が確立しています。

  • リスクを最小限に抑えられる飛行経路の選定
  • 飛行時間や積載量の限界
  • 悪天候時でも問題なく配送できるのか
  • 荷物の盗難の問題がないのか

日本では、上記のようなさまざまな課題があるため、事業の拡大にはまだまだ時間がかかりそうですが、技術は確実に進歩しています。

災害派遣

点検・検査の項目で触れたとおり、ドローンが活躍できる場面は危険な状況にあるといってもいいでしょう。
このことから人命に危機が及ぶような災害派遣の利用に大きな期待が寄せられています。

プロフェッショナル・エージェンシー事業を展開する株式会社クリーク・アンド・リバー社(以下C&R社)は、ドローン開発会社サイトテック株式会社(以下サイトテック)と協業し、陸上自衛隊が11月に熊本県の大矢野原演習場で行った、大型ドローンによる物資の運搬や投下の目視外操作演習に協力いたしました。

国産の大型ドローンによって、20kg以上の物資を目視外自律飛行で物資を指定したポイントに降ろし、そのまま自律飛行で往復2km(1km×2)の距離を戻した実験の成功は、国内で他に類を見ません*。
(*2019年11月30日C&R社調べ)

こちらは弊社とサイトテックの協業による実例になりますが、大型ドローンを用いることで今までにはできなかった、自衛隊による重量物の運搬が行えるようになりました。これは災害派遣の場面でも大きな活躍ができるものと考えられます。

例えば災害によって孤立した地域や建物に食料、医薬品を積載したコンテナをドローンによって運ぶことができ、これまでにできなかった輸送方法によって、ライフラインを確立することができるようになります。
演習では有線ケーブルを引くといったことも行われたことから、寸断した通信の回復にも活用されることが期待できます。

ドローンによる救援物資の輸送は、ドローン機体の大型化が実現したことといってもいいでしょう。

その他

その他にも、大型施設の監視や警備のために顔認証機能の付いたドローンを利用したり、災害時の状況調査、物資運搬にも活用が期待されています。また、スポーツ中継にドローンを取り入れることで、よりダイナミックで臨場感のある映像が期待されています。

このように、シンプルにドローンといっても、使い方次第でさまざまなビジネス分野への参入が期待できるのです。今後、ここでご紹介していない分野でのドローン活用事例も増えていくと想定されています。

ドローンビジネスに欠かせない職業


ドローンを使った、新しいビジネスモデルの構築に伴い、ドローン操縦士、安全運航管理者という2つの役割の需要が高まっています。

ドローン操縦士

ドローンを操縦し、安全にコントロールすることができる資格のことです。国家資格ではない民間資格ではあるものの、確かな操縦技術を持っていることを証明する資格となっています。

安全運航管理者

ドローン操縦士とともに民間資格となっています。ドローンを安全に飛行させるために必要な条件を割り出し、リスク管理や飛行可否の判断を行います。事故やトラブルが起こらないように現場監督を行う知識と能力があることを証明する資格となっています。

まとめ

ドローン事業は、現在目覚ましいスピードで発達しており、今後もこの傾向が続くと予想されています。空撮分野だけではなく、農業や土木、物流などの幅広い分野での利用が伸びているのです。今回ご紹介した分野以外でも、新たなビジネスチャンスが眠っているかもしれません。ぜひドローン事業への参入を検討してみてはいかがでしょうか?