クリエイティブ業界の注目情報や求人情報などを発信する、クリエイターのための総合情報サイトです。
サイバーコネクトツー松山洋氏

書籍『エンターテインメントという薬』発売1周年記念トークイベント&ワークショップ 書籍の反響とクオリティのジレンマを学ぶ1時間

2018/11/06

福岡、東京、モントリオールに制作拠点を起き、家庭用ゲームソフトの企画・開発を行っている株式会社サイバーコネクトツー。WebサイトやSNSを通じて多くのメッセージを発信し、マチ★アソビのTシャツとしてもおなじみの、株式会社サイバーコネクトツー代表取締役“ぴろし”こと松山 洋氏によるトークイベント&ワークショップが2018年11月1日に株式会社クリーク・アンド・リバー社にて行われました。

このイベントは、書籍『エンターテインメントという薬 -光を失う少年にゲームクリエイターが届けたもの-』の発売1周年を記念して開催され、ゲーム業界関係者を中心に多くの人が集まりました。イベントの前半は書籍発売から1年間の反響を振り返り、後半はサイバーコネクトツー流のワークショップという、濃密な1時間となりました。

まずは、前半の書籍発売から1年間の反響を振り返るトークイベントのレポートです。

競合の垣根を越え業界関係者から感想や応援コメントが届く

書籍『エンターテインメントという薬 -光を失う少年にゲームクリエイターが届けたもの-』はイベント開催のちょうど1年前、2017年11月1日に発売されました。松山氏は書籍に関する感想やコメントを、予め業界関係者に直接お願いしていたそうですが、直接お願いをしていない業界関係者からも感想が届きました。

また、この書籍はGzブレインから出版されているにも関わらず、週刊少年ジャンプ編集長、ジャンプスクエア編集長、Vジャンプ編集部からメッセージが届き、Gzブレインが運営するファミ通.comの当書籍特設ページに掲載されるという、競合の垣根を越えた珍しい反響がありました。それだけ、エンターテイメントに関わる人へのメッセージ性が強い書籍なのだと、このエピソードから伝わってきます。

書籍がテレビドラマ化!奇跡体験!アンビリーバボー放送までの裏側

この書籍は2018年3月にフジテレビ系の奇跡体験!アンビリーバボーにて、テレビドラマ化がされました。この番組はクオリティが高く20年続く長寿番組となっています。どういったきっかけで書籍を見つけ、オファーを出し、テレビ番組として放送されるのかを松山氏が番組ディレクターに聞いた話が紹介されました。

番組では毎月発売される新刊をとにかく買っては読み、ドラマ化したいと思う書籍に対してオファーをします。ただし、オファーを出せるのが10冊読んで1件程しかありません。さらに、10件オファーして1件やっとオファー後の打ち合わせができるといった確率です。制作が決まった後、ディレクターは登場している人全員に会いに行き、人物のイメージを固め、構成台本、キャスティング、撮影と進んでいきます。

2017年12月にオファーを受け、順調に制作が進んでいたものの、偶然にも競合のゲーム会社が、放送予定時期のスポンサーになったことで放送時期延期になりました。しかし、スポンサーの配慮もあって予定通り2018年3月に放送されました。こんなところでも、競合の垣根を越えたエピソードを伺うことができました。

テレビの力はすごい。放送後に書籍は品切れ、見知らぬおじさんから声をかけられたことも

松山氏は「テレビの力はすごい。」と、放送後の反響を振り返ります。書籍はAmazonで品切れ状態となり、PlayStation®4『.hack//G.U. Last Recode』は、放送前の約10倍の売り上げとなりました。

さらに、松山氏は本社がある福岡と拠点がある東京を毎週飛行機で行き来しているのですが、羽田空港の蕎麦屋で全く知らないおじさんが「アンビリバボー見ましたよ」の一言を松山氏に伝え、そのまま立ち去るという体験もされたそうです。

蕎麦屋のおじさん以外にも視聴者から多くの感想が届き、イベントで一部紹介がされました。中には普段ゲームを一切していない視聴者からも「感動した」といった感想もありました。ゲームにまつわる1つのエピソードが、ゲームプレイヤー以外にも多くの人に伝わる奇跡の物語が現在進行形で続いています。

この物語を通じて、松山氏は「小児がん」を知り、何か役に立ちたいと考え、今では「がん」に立ち向かう方や周りで支える方々の役に立てばとの思いで、全国のがん相談支援センターにこの書籍が寄贈しました。寄贈された施設からもまた、書籍の感想がサイバーコネクトツーに届いているそうです。

以上、前半のトークイベントレポートでした。後半は、松山氏が全国の学校で、ゲーム業界を志す学生向けに対して実施しているワークショップを体験しました。

サイバーコネクトツー流のワークショップ「制限時間10分・目的100個書くこと・女の子が好きなモノ」

ワークショップは紙とペンを使います。目的は紙にお題の答えを「100個書くこと」、お題は「女の子が好きなモノ」、制限時間は「10分」です。

10分後、ペンを止め書けた個数と自己採点(100点満点)します。イベント参加者の結果は様々でした。63個10点、85個85点、59個99点、109個0点、120個120点というように自己採点結果が参加者から発表されました。

ここで学ぶことはクオリティのジレンマです。
クオリティのジレンマ

クオリティを語る前に、まずは目的を果たす

10分以内に100個書くこと、これが決められた目的とスケジュールです。そのため、100個以上書けていない人は、そもそも0点と松山氏は言います。

100個書けと言われたら、どんな手段を使ってでも決められた期限に100個書かなければなりません。仕事において一番大事なのは約束を守ること、目的を達成することです。クリエイターを志望する若者ほど、これを勘違いします。100個は書けなかったが、私の60個はクオリティが高いとクオリティを言い訳にする。本来はクオリティにこだわるのは目的を果たしたその次と、松山氏は説明します。

このワークショップにて、ほとんどの学生も0点となってしまうようですが、頼もしいことに100個書ける学生も何人かいます。その学生は9分で120個書き、残り1分で“これは無い”という20個を消しクオリティコントロールをした後、制限時間内に私の100個を作り上げるそうです。

クオリティコントロールをしたとはいえ、ここに書かれている100個の中には疑問符がつくような答えも多々含まれています。しかし、これが本来の順番と松山氏は語ります。

ワークショップで学んだことはクリエイターだけではなく、プロフェッショナルとして仕事をしていくうえで、持っておくべき共通した価値観です。目的を果たすことが最低限求められているにも関わらず目的を履き違えてしまい、クオリティに拘った結果、自らの価値を下げてしまう人もいるのではないでしょうか。

以上、後半のワークショップのレポートでした。
ワークショップ中の松山氏

ワークショップの最後に、藤原洋氏による自叙伝『劇薬 ―エンターテイメントという薬の真実―』が紹介されました。これは松山氏の書籍の登場人物である藤原洋氏に自ら半生をふり返った手記です。ファミ通.com特設ページにて無料公開されています。ぜひご覧ください。

書籍やドラマ内に登場する澤田珈琲のパンも懇親会では用意されました。

一般のお客さんとして弊社スタッフが購入したそうです。
澤田珈琲店の美味しいパン

エンターテインメントという薬-光を失う少年にゲームクリエイターが届けたもの-

“ゲーム業界の片隅で起きた小さな奇跡の物語――!
『NARUTO-ナルト- ナルティメット』シリーズや『.hack』シリーズの開発で知られる株式会社サイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏によるノンフィクション。
本書は、2006年12月、プレイステーション2用ソフト『.hack//G.U. Vol.3 歩くような速さで』発売直前に松山氏に入った1本の電話をきっかけに、ひとりの少年に出会うところから始まります。

その電話は、目の病気のため眼球摘出手術を受ける少年が、『.hack//G.U. Vol.2 君想フ声』の続きを遊びたい、と望んでいることを告げるものでした。ソフト発売は、手術の9日後。このままでは間に合わない――! そこで、視力を失う少年のもとへ直接ROMを届けに行くという、異例の対応を行った松山氏。10年前当時のことを振り返るとともに、この対応の裏で多くの関係者が動いてくれたことや少年の半生などをこまかに取材し、執筆しました。
ゲーム、エンターテインメントにできることって何だろう? 松山氏とその少年との出会いが、当時の開発スタッフに勇気と希望を与えるものであったこと、そして、エンターテインメントに関わるすべての人々へ伝えたい想いを込めた1冊です。

本書の売上の一部を“がんの子どもを守る会”に寄付いたします。”

Amazon 商品の説明より