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リクルート流 コミュニケーション変革最前線 vol2. エンジニアの多様性を育む組織のつくり方

2018/11/02
注目企業の中の人によるコラム
競技プログラミングの世界上位ランカーや、データ分析世界大会の優勝者など、多様かつ高度な技術を持つエンジニアが集まっている組織が、株式会社リクルートコミュニケーションズにはあります。アドテクをはじめとしたデジタルマーケティング領域を担当する彼らは、量子アニーリングの実用に向けた協働研究など、最先端の取り組みも手掛けています。リクルートコミュニケーションズは、いかにして個性豊かなエンジニアが力を発揮できる組織を実現させているのでしょうか。今回は、同社ICTソリューション局アドバンスドテクノロジー開発部部長の阿部直之さんに、マネジメントやコミュニケーションのヒントをご寄稿いただきました。

不確実性に向き合うエンジニア組織 重視してきたのは“多様性”

株式会社リクルートコミュニケーションズ(以下、RCO)アドバンスドテクノロジー開発部(以下、アドテク部)は、リクルートグループにおけるアドテクをはじめとしたデジタルマーケティングの領域において、技術を武器に様々な課題に取り組んでいるエンジニア組織です。

具体的には広告配信の仕組みづくりや、リクルートグループの保有する様々なデータを利活用したマーケティング最適化などを担当。これらの取り組みは、大量のデータを高速にさばき、機械学習などによる高精度なマッチングをするなど、エンジニアの仕事がサービスの価値を大きく左右する領域であることが特徴です。

また、変化の速い領域だからこそ、常に既存のやり方にこだわらず新しいプロダクト・ソリューションを探りながら開発を進める姿勢も必要。いわば、正解が誰にも分からない不確実性と真っ向勝負するようなフェーズが多く、私たちの仕事をリクルートのコーポレートメッセージになぞらえるなら、「まだ、ここにない、しくみ。」を模索しているようなイメージです。

そのため、私たちは不確実性の高い問題に向き合うために、みんなが同じスキルを伸ばすのではなく、それぞれが高い専門性・技術を持ち、その多様性によって問題にアプローチすることが大切なのではないかと考え、組織運営を続けてきました。

そこで今回は、自分たちが持つ情報を公開することで新たな知見が集まってくるような、「エンジニア業界的な循環」に乗るべく、「エンジニアの個性を伸ばし、人と組織の成長を加速させる」という私たちの取り組みのなかで得た学びや課題を共有したいと思います。

個人の興味や関心が、成長の土台

エンジニア組織特有のお話をする前に、私たちが「人の成長」をどのように捉えているかをご説明したいです。それは「誰かに強制されて取り組む仕事よりも、各々の興味・関心に沿った問題に取り組んだ時の方が成長できる」ということ。また、特にエンジニアの人は実感があると思いますが、「実務で得た学びほど吸収率が高い」ということです。

そのため、組織としては本人の興味・関心にマッチする“成長機会”としての仕事をいかに提供できるかが大切。これを考え抜くことがマネジメントにおける大方針であり、エンジニア組織に限らずリクルートグループのすべての組織に共通する考え方です。

ただ、「個人がやりたいこと」と「組織として取り組むべき問題」は、すべてがピタリと重なるとは限りません。だから、個人の興味・関心を掘り下げ、組織のミッションを噛み砕いて個人と繋げていくことが必要になります。リクルートグループでは、この組織と個人をつなげるプロセスに“Will Can Must”というフレームを活用にしています。

この“Will Can Must”は、簡単にご説明すると、

  • メンバー1人ひとりの興味・関心を基にした将来なりたい姿(Will)を、本人とともに掘り下げ
  • そこに至るまでに強めるべき技術・克服すべき課題(Can)を明らかにし
  • それらを達成目標の1つとして組み込んだ業務課題を設定する(Must)

というもの。

なかでも、Willを起点にして成長を支援することで本人の納得感に繋げることを大切にしており、「なぜこの業務をやるのか?」、「どのように自身の成長につながるのか?」、「それによりどんな価値が出るのか?」をマネジャーと本人の間ですり合わせていきます。

また、最終的な評価についても成長のための“コミュニケーション”の一環として捉えています。成長目標を基に設定した達成基準に対して振り返りを行うのですが、評価については直属の上下関係にある人物だけで決定するのではなく、「成長を加速するための適切なフィードバックは何か」という観点を中心に、周辺のマネジャーや部長など含めた組織全体で議論を行っています。

専門性やタイプが人それぞれだからこそ、型にはめない

ここまでご説明してきたように、RCOアドテク部が多様性のあるエンジニア集団をつくる上で土台としたのは、個人のWillの実現が成長を加速させるという考え方にもとづくマネジメント・コミュニケーションです。

この前提をもとに、具体的にどうやってエンジニアにフィットした組織へと進化させてきたのかをご紹介します。

私たちRCOアドテク部は、約60万人が参加するプログラミングコンテスト「TopCoder」の上位成績入賞者や、データ分析世界大会の優勝者などをはじめとして、「難しい問題にチャレンジするのが大好き」、「プログラムを書くのが3度の飯より好き」といったエンジニアが集まっています。技術そのものに深い興味を持ち、技術によって何らかの価値を生みだすことにモチベーションを感じる人が多いということです。

扱う技術の幅を広げる・専門性を深めるなど、本人の意志と擦り合わせを行いながらレベルを上げていく

また、アルゴリズムや機械学習、インフラなどのように様々な専門性を持つエンジニアが所属し、より難易度の高い課題に対して特定の技術の高さで勝負するタイプのエンジニア(プロフェッショナル型)と、複数の技術を組み合わせることに長けたタイプのエンジニア(ジェネラリスト型)が共存しているのも特徴です。

つまり、一人ひとりの個性に着目して組織全体をみると、専門性やタイプの異なるエンジニアが集まっているのです。“型にはめる”ようなマネジメントは逆効果になってしまう可能性が高いため、私たちは敢えて画一的なキャリア設計は置かないという人材育成方針を取っています。

これを組織戦略にあてはめて考えてみます。たとえば事業成長にあわせて人数を増やすことで価値を拡大するような方法がありますが、対して私たちが指向してきたのは、一人ひとりの成長を最大化することで、組織の力を大きくしていく方法。エンジニア組織にとっては、個人のスキルの高さや幅を大きくすることで価値の面積を大きくし、組織全体の面積を広げることを優先させた方が良いと考えています。

なぜなら、特に私たちが取り組んでいるデジタルマーケティング領域はアルゴリズムや最適化などコードで表現される価値がプロダクトのコアになることが多く、エンジニアが貢献する度合いが大きいため、エンジニアの成長がそのまま価値に連動しやすい構造です。また、このような価値はエンジニアの人数に比例して高まるような単純なものではなく、少数の優秀なエンジニアが、自分のスキルや知見を高めることで一気に価値が高まるものだと考えています。

この意味でも、私たちは組織として同質のエンジニアを増やすのではなく、個人が多様な姿へ成長することで、価値を拡大することを選択しているのです。

業務外の機会提供も含めて、「きっかけ」をつくる

エンジニアの多様性や成長を支援するうえで、業務だけではカバーできないWillを実現するきっかけをつくることも必要です。各種カンファレンス・勉強会で最新の研究事例を学んだり、 競技プログラミングコンテストやKaggleなどで技術を磨いたりと、直接的には業務と関連しない活動も、本人のWillを叶え成長に繋がるのであれば実現に向けて積極支援しています。

※RCOアドテク部の機会提供の考え方 プログラミングコンテストのほか、開発合宿や勉強会などが行われている

2017年から当社のエンジニアが主催しているプログラミングコンテスト「日本橋ハーフマラソン」もそのひとつ。RCOアドテク部には前述したように「TopCoder」のレッドコーダーやイエローコーダーがおり、彼らから「RCOでもプロコンを主催したい」と提案がありました。

そこで、発案者が中心になって実施した結果、本人たちが外部のエンジニアと交流し技術を磨く場になったことはもちろん、SNSでも大きな反響がありました。結果として、プロコンを通じて私たちの技術力を発信することにつながり、ブランディング観点でも良い影響がでています。

その他にも、開発合宿や論文輪読会、海外のカンファレンス参加など多くの取り組みが誕生しているなど、組織としては、メンバーからのボトムアップの提案は最大限に尊重して、個人の成長に繋がる形で応援するようにしています。

また、この組織風土は未来の仕事づくりにも繋がります。近年、当社からいくつか発表している量子アニーリングに関する研究も組織として狙いを定めてはじめたものではなく、当時新卒入社したばかりのメンバーがたまたま参加した勉強会でみつけたテーマでした。

本人がこのテーマにぜひ取り組んでみたいという強い想いを持ち、それを発信してくれたことをきっかけに研究がスタート。2017年には、世界トップクラスの国際会議で幹事役の会社を務めるなど、国内ではその領域の研究において、重要な立ち位置を占めるまでに発展しています。

こうした実績があるからこそ、RCOアドテク部のマネジャーはメンバーに対して「こうするべきだ!」と一方的な伝え方をするのではなく、背中を押すようなイメージを大切にしているのです。

多様性のある組織で、一人ひとりの個性をどう活かすか

RCOアドテク部では、今回ご紹介したような考え方・取り組みを軸に、多様性を拡張してきました。これは冒頭にお伝えした通り、不確実性に対応していくという大目的のためであると同時に、エンジニアの働きやすさや成長といった観点でも、有効なアプローチのひとつだと考えています。

技術領域は、日々進化のスピードが上がり、細分化されている分野です。だからこそ、マネジメントに近い立場の人よりも、技術にまみれている現場のエンジニアこそがより新しい発見をしてくれるものではないかと考えています。

その上で、メンバーが発見してくれた新たな技術を、組織戦略やビジネス上の価値とマッチングさせ、エンジニアの活躍領域を広げていくことこそが、エンジニア組織が価値を高める鍵であり、マネジャーの役割だと私は考えています。

マネジメントとエンジニア。もしかしたら、水と油のような関係が一般的なイメージかもしれません。しかし、エンジニアでありマネジメントも担う私の経験からすると、<課題構造の分解>、<情報フローの整理>、<関連要素の繋がりの設計>など、マネジメントとしての役割でも、エンジニアリングのアプローチを活用することは非常に多く、本質的に必要なスキルは似ていると思うことが多いです。

そう考えられるからこそ、私自身もまたエンジニアの多様性の一種類として、組織で価値を発揮していきたいと思っています。

世の中はどんどん複雑化しているからこそ、ますます不確実性の高い課題への対応が求められています。RCOのアドテク部では、これからも一人ひとりの個性を伸ばし、バリエーション豊かなエンジニアが活躍する組織として進化していきたいと考えています。


企業プロフィール

Recruit Communications Co., Ltd. リクルートグループにおいて、クライアントの集客ソリューションから、Webマーケティング、メディアの制作・流通・宣伝、カスタマーサポートまでを担当する。
〒104-0054 東京都中央区勝どき1-13-1 イヌイビル・カチドキ
URL:https://www.rco.recruit.co.jp/

阿部 直之(あべ・なおゆき)

株式会社リクルートコミュニケーションズ
2011年株式会社リクルートコミュニケーションズ入社。
ICTソリューション局 アドバンスドテクノロジーサービス開発部。
エンジニアとして、アドテク領域の立ち上げに従事。
現在は、部長として、エンジニア組織のスループット増大を目指す