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大人気イラストレーター・先崎真琴さんが語る、出産後も仕事を続けるために女性フリーランサーがやるべきこと

近年、日本のフリーランス人口は1,100万人を超え、その中でも、IT・クリエイティブのスキルを活かして働くクリエイターは81万人以上(※1)と、自由な働き方が注目を集めています。

『ときめきレストラン☆☆☆』『コンビニカレシ』などの代表作をもち、女性を中心に高い人気を集めるイラストレーター・先崎真琴さんもそんなフリーランスの一人。今年4月に第一子を出産し、6月には仕事復帰をすると、以前と変わらぬお仕事ぶりで存在感を発揮しています。

女性特有のライフイベントを迎えてもなお、これまで通りの仕事量をこなすことができたのはなぜか。先崎さんのイラストレーターとしての半生を振り返りながら、両立の秘訣を伺いました。

(※1)2018年4月4日、ランサーズ株式会社「フリーランス実態調査2018年版」調べ

先崎 真琴(せんざき・まこと)
2015年よりフリーランスのイラストレーターとして活躍。
代表作は、『ときめきレストラン☆☆☆』『コンビニカレシ』『一血卍傑-ONLINE-』(キャラクターデザイン・イラスト)など。
仕事中は、Sam Smithの楽曲など、洋楽をかけながら作業することが多い。

フリーランスと会社員を天秤にかけて…

――ゲーム業界に入ろうと思ったのはいつ頃だったのでしょうか。

幼い頃から絵を描くのが好きで、中学までは漫画とイラスト、高校からは美術科のある学校に進学して、絵画とかファインアートを描くようになりました。ところが、大学卒業間近という切羽詰まったタイミングになって、ファインアートで食べていくのは難しいのではないか、と気付いてしまって。

そこで当時、勢いのあったゲーム業界に入ることを決意し、いくつかの会社の面接を受けて、KONAMIの2Dデザイナーとして入社し、最初の数年間はUIを担当していました。

――ゲームはもともと好きだったのですか?

大好きです。男兄弟がいる家庭で育ったので、ゲームなどのエンタメが周りにあふれていました。

――ファインアートからUIデザイン、まったく違う世界で、抵抗もありそうなものですが。

私には「ファインアートでなにかを表現したくてたまらない!」という気持ちがあまりなくて、いつも、どうしたら評価されるか、コンテストではなにが求められているのか、「ウケ」を狙って絵を描いていました。デザインではこの考え方が活かせて、お客様のことを考えて、お客様の視点で、お客様の望むものをつくるのが仕事ですから、それまでの経験がしっくりきて、自然とシフトできました。

――就職活動では、どのようなポートフォリオを提出されたのでしょうか。

当時のポートフォリオには、ゲーム向きのイラストは入れていなかったと思います。会社によっても違うのですが、基礎力を見る会社だと、デッサンとか、習作とかを見ることが多いので、デジタルの技術は後からでも良いという判断だったのだと思います。

――では、KONAMI入社後は2Dデザイナーとしてどのような経験を?

私が入社したのは、DSとかPSPとかWiiの全盛期で、それらのUIデザインは一通り経験しました。2Dデザイナーとして勤務したのは最初の2、3年ほどでユーザビリティについて徹底的に勉強させていただきました。

――それから、イラストレーターになったと。

きっかけとなったのは、『ときめきメモリアル Girl’s Side』(以下、『ときメモGS』)という作品です。本作にはUIデザイナーとしてアサインされていたのですが、イラストの仕事も必要としている属性のタイトルだったので「チャンスだ!」と思って、ポートフォリオを作成して、「私はこれだけ描けます!」と上司に自分を売り込みました。プレゼンというか、社内で就職活動をしているみたいでしたね。その熱意が認められて、徐々にスチルを担当させてもらえるようになって。『ときめきレストラン☆☆☆』で、正式にキャラデザデビューとなりました。

――その後は2015年にKONAMIを退職、フリーランスとしての道を歩むことになります。この決断の背景をお聞かせください。

当時は新規タイトルを量産できる状況でもなくて、社内で一時的にキャラデザを必要としない空気があったんです。会社という大きな組織に所属している以上、いくら「やりたい」と手を挙げても通用しないことがありますよね。ちょうど開発チームが解散するタイミングでもありましたし、一度獲得した「キャラデザ」としてのキャリアをリセットされてしまうのであればと、退職を決意しました。

――キャリアを捨てて残るか、フリーランスになるかの二択だったと。

いえ、実は転職活動もしていました。フリーランスとして自分がどこまでやっていけるのか不安がありましたから。ですが、転職活動をしていると、面接や人材サービス会社の人から、ほかの会社のことを知る機会がありますよね。そこで、フリーランスと会社に入ることを天秤にかけて検討することができて、結果、フリーランスを選びました。

――フリーランスを選んで良かったと思いますか。

良かったと思います。裁量も大きいし、自分の都合で休めたり、仕事を増やせたり。会社にいると、人に仕事を振ってもらうのを待つ必要がありますが、フリーランスだと、仕事を自分から掴みに行けます。私にはこの働き方が向いていました。

――意外とアクティブ系女子なのですね。

実は(笑)。

視聴者に与えたいイメージを深堀する

――絵を描く工程について、詳しくお聞かせください。

では、『コンビニカレシ』のティザー(※2)を例に説明します。

©先崎真琴・Gzブレイン/コンビニカレシ製作委員会

まずは、取引先からオーダーを頂戴します。この時は「アニメ情報解禁のティザーとして使うイラストが欲しい」「6人の男の子を描いてほしい」というものでした。

これを元に次に私が行うのは、視聴者にどんなイメージを与えたいかを深堀することです。『コンビニカレシ』の場合は、高校生の持つさわやかな印象を演出することと、本作のアニメ化発表に合わせて初めてお客様に公開されるイラストになるということで、6人の男の子たちの全体像が分かりやすく、敷居の高い印象ではなく身近に感じてもらえるイメージが欲しい、という方向性を取引先とすり合わせました。

(※2)ティザー:情報を断片的に出すことで消費者に興味や好奇心をひこうとする商業広告の手法。ティザー広告とも

――その後はラフの制作ですか?

そうです。ここまでわかってからでないとラフは描き始められません。ただ、取引先に提出しないラフというのも存在します。私の場合は、2~3分ほど描いてコンセプトにあっているのかどうかを判断しています。

たとえば、これは自分(お客様)視点が強すぎるということでボツにしたラフです。自分を引き連れていってくれそうな、この絵の中心に自分がいるイメージが与えられます。ですが、今回の場合はアニメのお客様へキャラを初お披露目するタイミングなのでもう少し一人ひとりをじっくりと見られる絵が良いかなと思ったんです。そう考えると、身体が部分的に大きく隠れてしまうものや、激しく前後のあるものは適切ではないと判断しました。

こうやって、いろいろなパターンを考えて、そのなかで一枚だけ取引先に提出してOK/NGを判断してもらっています。

――ほぼほぼ完成レベルですね…! ここまで書き込むのは完成イメージを取引先と共有するため?

というより、ここまで書き込んだ方がそのあとの作業が楽なんです。

――ここでNGと言われたら、と考えることはないのですか。

長くお取引させていただいている編集さんがほとんどなので、勝手知ったる、といったところでしょうか。厚い信頼を寄せていただいているので、描き込んだラフを提出してもNGが出ることはほぼ無く、決め打ちで出させてもらっています。もちろん、「もう一枚ください」と言われたらお応えしていますよ。

――効率的に描くコツはありますか。

一回、完成原稿を描いて、「ときめきレストラン☆☆☆の描き方」「コンビニカレシの描き方」というフローを自分の中で構築します。この配色を使おう、この順番で描こうというハウツーみたいなものですね。作品が持つコンセプトによって、光のあて方、使うアイテムの傾向なんかも考えます。ラフには頭を悩ませることもありますが、これができれば、ラフ作成後はハウツーに合わせて手を動かすだけなので早いです。

絵を描かない方にわかりやすく説明するとしたら、そうですね…料理をつくる時の手順や材料って作る料理に合わせてそれぞれ違いますよね。それらを調理前にひととおり準備しておくのと似ているかなと思います。フローが頭に入って入ればアクシデントも少なく行ったり来たりせずに完成への最短距離を辿れるということです。

――なるほど。お話を聞いていると、先崎さんは分析する力が優れているように思います。

感覚的なものを一度分析してから受け取ろうとすることは多いです。たとえば、映画を見に行ったら、「何故この映画が人に評価されているのか」をもみほぐして考えて、核心の部分を探ろうとします。絵や写真でもそう。良いと言われている部分を抽出して、その要素を自分の絵に入れ込んだら、今までのお客さんとは違う層に受け入れてもらえるかも、と考えるのです。でもこれは、絵を描く人なら誰もがやっていることでしょうね。

――いろんなものから抽出された「良い部分」が集まって、絵になっていると。確かに、先崎さんの絵は嫌われる要素がないように思います。

というより、私の絵は「好きな人」と「気にしない人」に分かれる場合が多いと思います。なぜなら、私は個性がないのが個性だから(笑)。強力な個性を持つことに憧れがある反面、抵抗もあるんですよ。というのも、私がメインで活動しているのはソーシャルゲームのイラスト。ライトユーザーを含めたたくさんのお客様を獲得してそのうちの数パーセントの方に課金してもらうことで成り立つビジネスモデルですから、たくさんのお客様を確保できるイラストを描かなくてはいけません。あまりにも個性が強すぎると、好きな人はすごく好き、でも、嫌いない人はものすごく嫌いという絵になってしまうと思うんです。もちろん、個性を強みに活躍されている方はいますが、私は違う生き方がしてみたいと思っています。ずるい考え方かもしれません。

――ずるいなんてことはないです! それに、先崎さんの絵が大好きなファンはいっぱいいます!

好きな人にはしっかりハマるようにも設計していますので。私の狙いをお客様が正確に受け取ってくれて、「この絵のここが良かった!」とファンレターをいただくと、嬉しくなっちゃいます。

――そういえば、そのファンレターはどちらに保管されていますか。

『ときめきレストラン☆☆☆』に登場するアニマルマスコットが本棚に。ファンの手づくりだという。

仕事場に置いて、行き詰った時に読んで力をもらっています。なかには作品に登場するクマのぬいぐるみを手作りしてくださる方もいらっしゃるんですよ。そんな愛情を注いでくれるファンのためにも、下手なことはできませんね。

女性フリーランスと妊娠・出産。その時、周囲の人たちは…

――今年4月にお子さんが生まれ、6月からお仕事を再開されたと聞きました。以前と比べて働き方は変わりましたか。

変わりました。それまでは、起きてから主人が帰ってくるまでが仕事の時間だったのですが、今はベビーシッターさんがいる間を仕事の時間にしています。仕事中は子どものことはほぼベビーシッターさんにお任せしているので、会社に勤務して子供は保育園に預けている方と同じような働き方ですね。仕事が好きなので、本当はずっと働いていても苦ではないのですが、子どもがきちんと寝てくれるとも限らないので、はっきり時間を決めて保育をお願いしながら仕事した方が成功するかな、と思っています。

――働く時間が短くなったと。

短くはなりましたけど、仕事量は変わらないです。それまでは、「今日はここまで終わらせる」という日単位の大きな目標だったのですが、今は時間が限られていることもあり、「午前中はここまで、午後はここまで」と頭の中でもっと細かくスケジュールを切るようになって。これがうまくハマっているのかも。

――昼にしっかりお仕事されているなら、夜は辛くないですか? 夜泣きもあるでしょうし。

私、夜の方が強いので(笑)。それに、私がすっかり寝入ってしまっていたら、主人がミルクや子守をしてくれるので、支え合いながら育児ができていると思います。

共働きという今の働き方を変えるつもりはないので、家事も半分、育児も半分、助けてもらいながら働けるのはありがたいですね。

――ご出産をTwitterで報告して、ファンの方からたくさんのお祝いコメントをいただいていましたね。それを読んだご主人の反応はいかがでしたか。

自分のことのように喜んでくれました。子どもが大きくなったら、皆さんのリプライを見せてあげようか、とも話しています。

Twitterをうまく使えてなくて、リプライに気づくのが遅く、一人ひとりにお返事できていないのが申し訳ないのですが、これからもお付き合いいただけると嬉しいです。

――仕事と育児、両立できている要因についてお聞かせください。

主人とお互いの母親がサポートしてくれているおかげですね。ベビーシッターさんは料金が高く、雇える日数にも限界があるので、シッターさんが来ない日には両親が掃除をしてくれたり、料理をつくってくれたりします。主人も私が遊べなくなってしまうことを心配して「今日は一日預かるから、遊んでおいで」って言ってくれるんですよ。周囲の支えがあるから、私はこの仕事を続けられているのだと思います。

――フリーランスの方が女性ならではのライフイベントに直面するとき、どんなことに気をつけたらいいですか?

取引先に相談してきちんと連携を取った方がいいと思います。それも、できるだけ早い段階で。生まれる時期がいつかを伝えるのはもちろんですが、つわりが酷い時に相談できるようにしておくことが大切です。人によってはいきなり入院というケースもあり得ますから。私の場合は、お取引していたGzブレイン様、コーエーテクモゲームス様、セガゲームス様にお伝えしていました。担当さんに打ち明ける時は「これを理由にお仕事がもらえなくなるかも」と不安だったのですが、皆さん手放しで喜んでくれて。まるで親戚みたいな温かさでした。

とくに長期的な取引が予想される相手には必ず打ち明けておくと良いと思います。隠しても仕方ないですから。

――具体的にはどんな調整をしましたか。

最初の2ヵ月はつわりが酷かったのですが、仕事に穴をあけてしまったら大変ですので、スケジュールに余裕を持たせてほしいとお伝えしていました。通常時よりも上乗せした納期で申請して、通常通りにあげられる時は早く上げる。という感じですね。

――では、安定期に入ってからは通常通りに?

それが…つわりが終わってからエンジンがかかってしまって、仕事をたくさん入れてしまいました(笑)。どこに行くにも億劫な時期になって、家にいることが多かったので。

――それは予想外ですね! 無事出産されてからはいかがでしょうか。

2ヵ月くらいPCから離れていたので、ショートカットキーを忘れました(笑)。それ以外は、ベビーシッターさんや家族の支えもあって、仕事の環境も変わっていませんし、出産前と変わらずにお仕事ができています。

――最後に、今後の展望をお聞かせください。

発表はだいぶ先ですが、面白いことをやらせてもらっています。制作チームの一員のように扱っていただけて、ディレクターさんとしっかり練り込んでつくっていますので、早く皆さんに発表したいです!

――どんな作品なのでしょう…! 楽しみにしております! 先崎さん、本当にありがとうございました!

インタビュー・テキスト:加川 愛美/撮影:TAKASHI KISHINAMI/編集:CREATIVE VILLAGE編集部

関連リンク

▼先崎真琴(@senzakimakoto)さん | Twitter
https://twitter.com/senzakimakoto

▼先崎真琴 Official Web
http://senzakimakoto.com/

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