前回のコラムで、「起業・独立・フリーで失敗しないための3つの法則:その1 ポートフォリオを見直し“下請け構造”から脱却」についてご紹介しました。

特定の得意先から「仕事をいただく」下請け構造のビジネスモデルでは、得意先に仕事を切られたらその時点で成長を持続することが困難になってしまいます。とくに現在のような不況期だと、いつ得意先から仕事の発注がストップするかわかりません。
しかしながら、多くの中小・零細企業やフリーランスクリエイターがこの「下請け構造」のビジネスモデルから脱却できていないのが現実です。

会社のポートフォリオを安定させ経営リスクも減らし、売上増大の道筋をつくるためにも、特定の得意先からの受託を期待する「下請け構造」から、「仕事が舞い込む仕組み」つまり、「仕事の流れ」をつくる「オファー型」の構造に変化させなければなりません。

ここからは、「仕事が舞い込む仕組み」「仕事の流れ」をつくる方法についてご紹介していきましょう。

自分のエージェント(代理人)を確保する

「仕事の流れ」をつくるために重要なことは何でしょうか?

最新のソフトウェアを使いこなす、優れたプログラムの知識を有している。コミュニケーション能力に長けている。

どれも非常に強い武器だと思います。
ただし、強い武器を持っているからといって、それだけで仕事が舞い込むかと言えば残念ながら「ノー」と言わざるを得ません。

いくら優れた技術や知識を持っていたとしても、ただ、仕事が回ってくるのを待っている「待ちの姿勢」では、やはり「下請け構造」のままです。それでは、仕事が舞い込む仕組みとは言えません。
つまり、いくら優れたProduct(商品・サービス)を持っていても、それだけでは仕事の流れは変わらないのです。とくにクリエイターやコンサルタントのような「自分自身が商品」というビジネスでは「能力が優れている」=「売れる!」という方程式は残念ながら成り立たないということです。

自分の技術や知識で生計を立てている人にとっては受け容れがたい意見かもしれませんが、残念ながら、これが現実というものです。
そんな現実を踏まえ、ベンチャー・中小企業やフリーランスに仕事が舞い込む仕組みをつくるには…ズバリ

法則その2:自分のエージェントをつくり、仕事の流れをつくる

ことが大切になるのです。

説明しましょう。マーケティング戦略の有名なフレームワークに「4P(マーケティングミックス)」というものがあります。

Product(商品・サービス)
Price(価格)
Promotion(販促・プロモーション)
Place(流通・販路)

この4つのPを連動させることが大切という意味なのですが、起業・独立したときに重要になるのが最後の「Place(流通・販路)」です。

ちょっと意外に感じるかもしれません。
もちろん、他のPも重要です。しかし、ブランドも知名度もない零細・ベンチャー企業が、自社の商品を売ってくれる販路・チャネルを手に入れることは想像以上に困難を伴います。

自分自身を売り出すチャネル(販路)が無ければ、どんなにいい腕(商品)を持っていても、売り場に商品が並ばないのです。つまり仕事にならない(!)わけです。

ですから、起業・独立したときには、まずは「販路・チャネル」を構築することが非常に重要になります。そうしないと在庫ばかりが積み上がってしまうからです。

「特定の得意先だけに商品を並べておく」という下請け構造では、その売り場が無くなったとたんに、お手上げになってしまいます。 そうならないよう、いつでも商品を並べる売り場を確保しておかなければなりません。

そして、チャネルの確保という重要なミッションを達成するためにクリエイターやコンサルタントがやるべきこと。 それが、「自分を売り込んでくれる「エージェント(代理人)」を確保すること」です。

エージェントはビジョンに共感する

いったいエージェントとはどんな人たちを指すのでしょうか?
わかりやすいところでは広告代理店がそうです。デザイナーのエージェントとして活躍してくれるディレクターがいる場合などもあるでしょう。 いずれにしてもあなたのビジネスパートナーとして、仕事の流れをつくってくれる人、もっと平たく言えば「あなたのことを売り込んでくれる」人がエージェントです。

いいエージェントは、自分の知り合いや顧客に「いいデザイナーを知っているんです。ぜひ紹介したいんですけど」と、あなたのことを熱心に売り込んでくれます。
そうして、あなたの人脈をドンドン広げてくれるのです。
信頼のおけるエージェントを確保するということは、仕事が舞い込むポジションに身を置くということが可能になるということです。

商品やプロモーションよりも、販路やチャネルを確保することが大切と言っていた意味がご理解いただけましたか?
経営を早期に軌道にのせるためには、エージェントを確保することに時間と予算という資産をしっかりと配分することがとても重要だということです。

さて、肝心のエージェントを獲得する方法ですが…すぐに考えつきそうなのは……

自分の技術をアピールする。
自分の実績や経験をアピールする。

といったことでしょうか。

もちろん。どちらも大切だと思います。強みや経験は客観的ですし、「売上●●%アップしました!」という測定可能な実績はその人の能力を判断しやすいですから。

しかし、ビジネスというものは「数字」や「論理」ではなく「感情」で動いているのが現実です。ビジネスは正論で動くものではないのです。
「この人と一緒に仕事がしたい」「この人とは一緒に仕事をしたくない」というきわめて感情的な理由がビジネスパーソンを突き動かしているのです。

誤解のないように言っておきますが、技術や知見を磨くことは重要ですし、実績や経験はビジネスにとって非常に重要です。
しかし、エージェントを確保するためには、もっと重要なことがあるのです。
それは「ビジョンをつくる」ということです。

ビジョンとは、「自社(自分)が目指すべき理想の未来像であり、自分の進むべき針路を指し示す羅針盤」のことです。
Visionには「視覚」という意味があるように、「成功したい」とか「お金持ちになりたい」といったぼんやりとしたイメージではなく、自分が何を基準に行動すればいいのか、迷ったときには何を基準に考えればいいのか、といったことを明確に示唆するものであり「具体的なイメージ」を伴う言葉であることが条件になります。

ちなみに、私の会社「きずなクラフト」のビジョンは
「真にマーケティングを必要としている人・企業の頼れるサポーターになり、「ありがとう」の絆で結ばれる」というものです。

このビジョンがあるから、私は、誰と仕事をすればいいのか(真にマーケティングを必要としている起業家や中小企業)、どんなサービスを提供すればいいのか(マーケティングのトータルサポート)、何を大切にすればいいのか(ありがとうをプロデュースすること)ということで悩むことがありません。
だから行動がぶれませんし、判断に迷うこともありません。

ビジョンがあるということは、自分の目指す方向、言い換えれば進むべき明日が見えているということです。目指すべき明日が見えている人は、歩む方向がしっかりしているので軸がぶれません。
しっかりとした軸を持つ人はメッセージや行動・振る舞いがぶれない。 だから、自分の行動や発言に自信が持てるようになります。

軸がぶれない行動をしている人、その行動に迷いがなく自信(過信ではなく)に満ちている人、エージェントはそんな人に惹かれます。 エージェントは技術や知識に共感するわけではないのです。考え方・行動・信念に共感するのです。

逆に軸がぶれている人に対しては「言っていることとやっていることが違う」「この人は口先だけだ」いう印象を抱きます。その印象はやがて「この人とは一緒に仕事をしたくない」という考えに変化してゆくのです。
誰だって、軸のぶれている人と仕事をするのは不安ですよね。

「どうせ仕事をするなら信頼できる人とご一緒したい」
というのはビジネスパーソンにとって自然な感情です。
そして、その自然な感情を獲得するには「ビジョン」を持つことがとても大切になるのです。

きっとみなさんも、無意識で「自分の軸」になりうる「ビジョンのような想い」を持っていると思います。ただ、無意識の軸だと具体的なイメージとして思い浮かべることができません。
だから必ず、その無意識の「ビジョンのような想い」を具体的なイメージにまとめて、社員のそして自分自身の進むべき針路を示す「明快なビジョン」として「視覚化」することが重要です。

起業家やフリーランス、中小企業のポートフォリオを改善するために、仕事の流れをつくるために、非常に重要な意味を持つエージェント。そのエージェントを引き寄せるのが「ぶれない軸」です。
そして、その「ぶれない軸」をつくるのがビジョンです。

「技術があれば大丈夫」なんて考えにしがみつくことはやめて、自社の、自分の「目指すべき明日」を明確にイメージしましょう。そうすれば思わぬ副産物を手に入れることもできるのです。
その副産物とは「仕事が楽しくなる」というものです。

自分の進むべき明日がイメージできるということによって、現在自分が取り組んでいる仕事が、自分の未来にどのように貢献しているのかイメージできるようになります。
「何のために仕事をしているのか」
という点において、納得感を持って取り組むことができるようになる。
だから仕事が楽しくなるのです。

どうですか?
「早く自社の自分のビジョンをつくりたい」
そう思うようになったのではありませんか??

起業・独立・フリーで失敗しないための3つの法則として

法則その1:ポートフォリオを見直し「下請け構造」から脱却
法則その2:自分のエージェントをつくり、仕事の流れをつくる

と2回にわたりご紹介してきました。

次回は、そのビジョンを実現するための3つ目の法則をご紹介したいと思います。
ぜひ、ご期待ください。