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ドロンジョとブラック・ジャックのカップルが話題! CMプランナー・栗田雅俊さんの狙いとは?

ドロンジョとブラック・ジャックが結婚相談所で出会うという「パートナーエージェント」の広告がSNS上で話題になっています。この広告を手がけたのは、CMプランナーの栗田雅俊さん。今までにもユーモアを全面に出して反響をよんだCMを数多く手がけてきました。
入社後数年間は悶々とした気持ちを抱えていたものの、あることをキッカケにブレイクスルーし現在に至ったと言います。今回はこれまでのキャリアのお話からパートナーエージェントの広告制作秘話までを伺いました。

栗田雅俊(くりた・まさとし)
電通CDC CMプランナー / コピーライター
2006年電通入社。岐阜県出身。CMなどの映像企画、コピーライティングから、デジタル施策まで。近年の主な仕事に、サントリーデカビタC、宝くじBINGO5、JCBカード、ソフトバンクなど。ACC賞ゴールド、広告電通賞、朝日広告賞グランプリなど受賞。TCC会員。趣味は一コマ漫画を描くこと。

広告の世界からは遠い人間だと思っていたけれど……

幼いころは漫画家になりたくて、よく描いていたんです。影響を受けたのは吉田戦車さんの『伝染るんです。』などの世の中の光が当たってないところを面白がるような漫画で。ニッチなところを面白がる人間だったので、メジャーな面白さで勝負する広告の世界からは遠い人間だと思っていました。けれど大学生になって先輩から「電通クリエーティブ塾」という広告塾を勧められて、言われるがままコンテやコピーの課題を出したら意外と面白がってもらえたんですよ。趣味程度に漫画や小説を書き続けていたのがよかったのかもしれません。「これでもいいんだ、じゃあやってみよう」と思い電通に入社しました。

入社してからはコピーライターの師匠の下で散々コピーを書いていましたけれど、5年間くらいはすごく悶々としていました。電通クリエーティブ塾のときは遊び半分というか漫画を書いているような気持ちだったんです。それが仕事となったら当然クライアントさんの課題にも応えなくちゃいけない。当時はそのバランスがうまくいかなくて。自分が面白いと思うことが形にできないし、プレゼンしても通せないしで、突破口がない感じでしたね。

悶々とした状況を打破するために努力したこと

そんな状況の中、何とかチャンスをつかみたいと思って力を入れたのがたまたまやっていた社内研修でした。社内で綺羅星の如く輝くスターみたいな人が講師で(笑)、ひたすら課題をやるんですね。社内だからクライアント事情もないし、自分が面白いかだけが問われる。正直、研修だからちゃんとやらなくても何も言われないんですよ。良い成績を残したからといって何かもらえるわけでもない。でも僕からすると研修は蜘蛛の糸で「ここを逃したらダメだ、他の人より頑張って、僕はここにいるって認めてもらわないと状況が変わらない!」と思って。過剰なくらい時間をかけて必死でやって、それから色々な仕事に呼んでもらえるようになりました。で、呼んでもらった先でまた頑張ったらそこにいた人が別の仕事に呼んでくれて繋がって、と。

まず打席数を稼がなきゃと思っていました。イチロー選手だって良くて打率4割ってことは6割は打ってないですよね。クリエイティブも同じで毎回ヒット打てるかっていったらそうじゃない気もするんです。だから重要なのは打席の数を稼ぐこと。ただ与えられたものをやる以上に、若い頃は特に自分で打席数を増やす努力をすることが重要だなって思います。

クライアントに対する答えと自分のやりたいことを初めて両立できた仕事

そうやって打席を積み重ねていくうちにクライアントに対しての答えは出せるようになるんですけど、それが面白いかどうかっていうのが次にあって。それを両立できるようになるまでに時間がかかりました。

やっとクライアントに対する答えと自分が面白いと思うことを両立できた仕事のひとつは、明治の「XYLISH」です。松田翔太さんがキスをするCMがメインなんですけど、その裏で「ボツCM集」っていうのを作ってWeb上で公開したんですね。「企画会議で選ばれなかったCMを公開します」と。せっかく考えた企画がもったいなかったからってのもあるんですけど、これ用に考えたネタもあって(笑)。最後にボツになった理由も公開して、“広告”っていうものに対してちょっと客観的な感じを出したんです。そうするとこれを作っている企業は正直なんだって伝わるかなと思って。結果的に嘘のない感じとニッチなストーリーの面白さが両立できた。この仕事は初めて自分を丸出しにできたというか、自分が面白いと思うことをやって世の中が面白がってくれたんですよね。

▼【明治キシリッシュ】ボツになったCM集 全8話総集編【松田翔太】 – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ANphHO6FzZI&feature=youtu.be

あと、同じ流れで自分のやりたいことを両立できたのが日清食品の「カップヌードル パスタスタイル」という商品。「イタリア人が認めなかったパスタ。気にせず、新発売。」っていうコピーを書きました。試食させてもらったときに「これはパスタなのか……?」と感じて。“○○スタイル”というのもやや言い訳っぽいなと(笑)。でもそこが面白いと思ったんです。なので、パスタ発祥の地であるイタリア・グラニャーノ村に行って実際にイタリア人に食べてもらって、パスタかパスタじゃないかを判定してもらったんですよ。そうしたら「パスタじゃない、食感が違う」と散々言われて(笑)。で、86%が違うと言った結果を素直に発表してコピーを付けました。そうしたらこのコピーが評判になったんですよ。すごく売れて完売になって。普通の広告だったら「イタリア人が認めた」って言うところを「認めなかった」って正直に言う。そのスタンスが評価されたのかなと思いました。

基本、広告って嘘というか誇張になりがちなんですよ。商品が素晴らしいとか、ちょっと嘘が入る感じがあるんで。でも嘘って嫌じゃないですか。だから見た人が「嘘をつかれているな」って思わないようにしたい。美味しかったら美味しいでいいんだけど、過剰に自分に都合のいいことを言わせるのはやめよう。正直でいよう、ということは常に意識しています。

交通広告なのにWebで大反響となったドロンジョとブラック・ジャックの共演

最近、反響の大きかった仕事のひとつに、結婚相談所のパートナーエージェントさんの広告があります。パートナーエージェントさんは婚活サービスの中でも成婚率ナンバーワンという立派な会社。社長のお話を伺ったときに誠実さや品をすごく感じたので、まずはそれをちゃんと広告したいなという気持ちがありました。でも、婚活サービスってなかなか使っていると言いづらい雰囲気があるし、CMに美男美女が出てくるのも嘘っぽい。生々しくならないようにぼんやりとしたセリフを言わせるのも本質から逃げているような気がして。

例えば結婚するときに相手の年収を気にするってホントのことじゃないですか。それがうまく表現できる装置を作れないかってことで、キャラクターに言ってもらうことを思いつきました。人間以外のもので人間味があるものを表現したら臭みが消えてちょうどいいんじゃないかと。と同時に、婚活サービスって全然違う世界の2人が出会うものでもあるから、全然違う世界の質感のものをフォーカスするっていうのがいいんじゃないかということで決めていきました。候補とする条件として、「みんなが知っている国民的キャラクター」で「独身で結婚相手を探していてもおかしくない婚活予備軍」であろうキャラクターをリストアップ。最終的にドロンジョとブラック・ジャックに絞り込んでダメ元でオファーしたら意外とOKを頂けました。

キャラクターを使う以上は原作ファンにがっかりされたくないので、彼ららしいことをやるために改めて作品を読み込みました。とは言え、パートナーエージェントという企業を感じさせないと意味が無い。最初は大塚明夫さんや小原乃梨子さんといったアニメの声優さんに声をあててもらう案もあったんですけど、それだとアニメの世界に持っていかれすぎるかもと思ってやめたんです。キャラクターに頼りきるんじゃなくて、企業のキャラを感じさせながら僕らが伝えたいことにオチをつけるようにしていきました。

©️TEZUKA PRODUCTION ©️TATSUNOKO PRODUCTION

ドロンジョとブラック・ジャックに決まってからまず悩んだのは、「この2人は何で惹かれあうのだろう?」ってこと。2人ともアウトローな雰囲気があるから意外と気が合うのか?とか、惹かれあうとしたらどんなところか?とか、自分の中でトコトン掘り下げて、その考えた結果がコピーになったんですよ。

最初はステッカー1枚の予定だったのが、好評につき動画と交通広告まで展開することになっていきました。コンテンツの幅が拡がることでドロンジョとブラック・ジャックのイメージに寄りすぎないか心配ではあったんですが、だからこそパートナーエージェントという企業を感じられるように、2人がどういう結末になるかよりも、出会いにフォーカスして面白がることでサービスの本質から外れないようにすることを意識しました。

自由課題よりお題を与えられた方が自分を知れる

今ではコピー以外の仕事もしていますが、入社してしばらくはCMを作らせてもらえなかったんですよ。でも、パートナーエージェントさんのようなCMが作れたのは、コピーライターをしていたことによって言葉の技術が身についたから。回り道だと思っていたことでも結果的に活きてくることがあるんですよね。

インターネットが出てきて若い内からWeb上でスターになれる人が増えてきた分、CMを作りたいコピー書きたいっていう人がすごく減っているんです。表現できる人もどんどん少なくなってきている。だからこそ僕は、表現の細部にこだわった広告をこれからもつくっていきたいと思っています。そうして生まれたパートナーエージェントさんの広告も写真1枚から話題になりましたから。ですから今後も媒体問わずに面白いと思うことを追求していきたいです。

僕はこの仕事をしていて毎日楽しいんですよ。それは何故かというと毎回お題が変わるから。自分1人じゃできないことをできるっていうのは快感で、毎回違う自分が発見できて、それが血肉になっていく。「自由に好きなもの作れ」と言われたら出ないアイディアも、「この商品やサービスについて考えろ」って言われたら、意外と自分がつくりたいことが見つかるんです。だから自分を成長させるためにはすごくいい仕事だと思います。もし志望を迷っている人がいたら、意外と面白いですよって言いたいです。自分探しより自分が見つかると思います(笑)。

インタビュー・テキスト:上野 真由香/撮影:TAKASHI KISHINAMI/編集:CREATIVE VILLAGE編集部

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