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『今夜、ロマンス劇場で』の武内英樹監督が語る、テレビと映画の演出の違いと数字への意識

テレビシリーズから映画まで手掛けた『のだめカンタービレ』や、『テルマエ・ロマエ』シリーズで知られる武内英樹監督の最新作は、綾瀬はるかと坂口健太郎の初共演によるオリジナルラブストーリー『今夜、ロマンス劇場で』。

スクリーンから飛び出したヒロインが、ピュアな青年と恋をするというロマンティックな物語は、武内監督の熟達したドラマ演出が冴える、ウェルメイドな感動作に仕上がりました。

脚本を手掛けたのは、『信長協奏曲』(’14・’16)で脚本を務め、小説家としても活躍する脚本家・宇山佳佑氏。武内監督がオリジナル脚本の映画を手がけるのは初となりました。

武内監督といえば、「東京ラブストーリー」(’91)、「101回目のプロポーズ」(’91)など、ドラマの黄金時代に助監督を務めた後、数多くの人気ドラマや映画を手掛けてきた“数字をもっている”ヒットメーカーです。今回のインタビューでは、ご自身のルーツや、テレビと映画の演出の違い、映画監督という職業への向き合い方についてお話を伺いました。

映画監督:武内 英樹(たけうち・ひでき)
1966年10月9日、神奈川県生まれ。1990年にフジテレビジョン入社し、1996年に「みにくいアヒルの子」で初演出。ドラマの主な演出作品は「ひとつ屋根の下2」(’97)、「神様、もう少しだけ」(’98)、「カバチタレ」(’01)、「電車男」シリーズ、「ホームレス中学生」(’08)など。「のだめカンタービレ」はドラマシリーズに続き、『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』(’09)を監督、『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』(’10)では総監督を務めた。その他、『テルマエ・ロマエ』(’12)、『テルマエ・ロマエII』(’14)も監督した。

初監督は小学校6年生の時に手掛けたコメディ

実は、あまりテレビを観るタイプじゃなかったけど、友だちと一緒に就職活動をしたら、僕がフジテレビに受かったんです。ドラマもほとんど観てなかったのに、ドラマの部署に配属され、わけも分からないまま激流に放り込まれた感じです。

ちょうどトレンディドラマがブームだった時代で、助監督につけてもらった「東京ラブストーリー」「101回目のプロポーズ」「愛という名のもとに」(’92)「ひとつ屋根の下」(’93)がことごとく視聴率30%を超えるような作品ばかりで。最初はドラマに全く興味がなかったけど、いきなりスポットライトを浴びる部署で働けたことで楽しさを急激に吸収し、仕事を覚えていった感じです。

当時の月9の監督は神みたいな存在で、自分はこんなふうにはなれないと思っていたけど、気がついたらその枠を夢中で作っていました。そしたら「のだめカンタービレ」が映画化されることになり、それを撮った後に『テルマエ・ロマエ』の話ももらいました。

映画監督になりたいと思ったのは、小学校6年生の頃です。お泊り学習で自分が監督、脚本、主演をした北条政子のコメディの芝居がすごくウケて、そこで幸せな気分になり、「映画監督になりたい」と言った時期がありました。

ただし小6だから「野球選手になりたい」「宇宙飛行士になりたい」みたいなノリで、あまり本気ではなくて、その後は学校の先生になりたいと思っていたんです。でも「のだめカンタービレ」が映画化された時、そういえばそんなことを言っていたなあと思い出して、感慨深くなりました。

脚本は32稿!じっくり練ったオリジナル脚本にトライ

『テルマエ・ロマエ』でご一緒した稲葉(直人)プロデューサーと「オリジナルに挑戦したいね」という話になり、稲葉さんが9年前から温めていた企画をやらせていただくことになりました。脚本は32稿くらいまで練り上げ、じっくりと時間をかけて作ることができました。

綾瀬はるかさんは前から一緒に仕事がしたいと思っていた女優さんです。今回はストーリー自体もピュアな物語だったので、彼女くらいピュアで天然かつ真摯な人じゃないと成立しないと思っていました。綾瀬さんにぴったりな役の映画を演出できるということは、監督冥利に尽きましたね。

スクリーンからヒロインが飛び出してくるというのはとても無理のある設定だと思っていたので、そこをいかに引っかからずに観てもらえるかということが今回の課題でもありました。綾瀬さんだけではなく、坂口健太郎さんもピュアなので、この2人だったからこそ、乗り越えられた設定なのかなと思っています。

今夜、ロマンス劇場で

©2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

僕はこれまで数多くのコメディを撮ってきて、「電車男」あたりから、自分はコメディが好きで得意なんだなと思い始めました。でも、「電車男」があったからこそ「のだめカンタービレ」が来て、『テルマエ・ロマエ』に行ったので、今はコメディばかりしか話をもらえなくて(苦笑)。

もちろんコメディに重きを置いているけど、“コメディ監督”だと思われているのが悔しくて、今回は久々にこういうラブストーリーをやれる機会を得られたのでうれしかったです。

特に後半の展開にはすごく力を入れました。基本的にいつも笑って泣けるものを作りたいと思っています。前半笑った人が後半で急に泣きスイッチが入ると、より泣きの効果が出ると思っているので、そこはいつも意識していますね。

テレビと映画の演出の違いとは?

ドラマは1週間前に脚本ができて、1週間でいろいろと撮っていかないといけない。映画はたっぷり時間をかけて脚本を作ったり、ロケハンをしたり、衣装合わせをしたりできますが、演出についての考え方やスタンスはあまり変わらないです。

映画だとお客さんが逃げないけど、テレビだとつまらなかったらすぐにチャンネルを変えられてしまう。ずっと飽きさせない作りにするという点では、よりテレビの方が意識しています。ただ、映画の場合でも、やっぱりタルい映画は観ていて寝ちゃったりするので、飽きさせずにお客さんを寝かせない映画を作る、という点では同じかもしれないです。

また、映画の楽しみは、観終わった後でいろいろと話ができることだと思っているので、ちょっと考えさせる“間”だったり台詞だったりを敢えて残すようにしているかもしれない。

映画もテレビも数字を気にして作るようなことはしないです。映画なら興行収入、テレビなら視聴率の話ですが、単純に、自分のベストを出し、面白いものを作れば、お客さんがついてきてくれると思っていて、そこはすごくシンプルに考えています。

映画監督はアーティストではなく文化祭実行委員長みたいなもの

映画監督って、結局自分では何もしない仕事なんです。もちろん考えて指示は出すけど、結局、役者に演技をしてもらい、カメラマンに撮ってもらい、照明さんにライトを当ててもらうという、人頼みの仕事でしょ。だから、いかに大勢のいろんなジャンルのスタッフに、やる気になってもらえるかが大事です。

自分のイメージをきちんと伝えていく上で、コミュニケーション能力がすごく必要とされます。アーティストのようで、実は文化祭実行委員長みたいなもの。ある意味、人たらし的なことで、人に興味を持つってことに尽きますね。

行き着くところはリーダーシップです。監督は指揮者みたいでもあり、料理人みたいでもある。

食材として言えば、すごく上手い女優さんだったら、できるだけお刺身で出すけど、若手の新人の男の子の場合は、赤ワインを入れて、塩コショウして煮込んで寝かせて味が出てくるのを待つ。あのカツオ、イマイチだったけど、あぶってみたらおいしくなったとか。演出は料理と似ている感じもします。

インタビュー・テキスト:山崎 伸子/撮影:オオタシズカ/編集:CREATIVE VILLAGE編集部

作品情報

今夜、ロマンス劇場で

©2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会



『今夜、ロマンス劇場で』は2月10日(土)、全国ロードショー

物語

映画監督を夢見る青年・健司(坂口健太郎)は、スクリーンの中のお姫様・美雪に恋をし、何度もくり返しその映画を観ていた。ある日、美雪がスクリーンから飛び出し、健司の目の前に現れる。健司はモノクロの世界しか知らない美雪に、カラフルな現実世界を案内していく。やがて2人は次第に惹かれ合うが、美雪は、人のぬくもりに触れたら消えてしまうという秘密を抱えていた。

監督:武内英樹『テルマエ・ロマエ』 脚本:宇山佳佑
出演:綾瀬はるか 坂口健太郎 本田翼 北村一輝 中尾明慶 石橋杏奈 柄本明 加藤剛ほか
配給:ワーナー・ブラザース映画

オフィシャルサイト

www.romance-gekijo.jp

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