クリエイティブ業界の注目情報や求人情報などを発信する、クリエイターのための総合情報サイトです。

専門家に学ぶ!クリエイターのための著作権講座 第9回「著作権Q&A」

2018/01/29 コラム著作権

前回まではテーマごとにそれに関わる著作権について解説してきましたが、今回は日常の創作活動を行っていく上で遭遇する、著作権、特に著作権侵害に関する様々な疑問について解説したいと思います。

なお、ここでの解説は著作権法および過去の裁判例を基にした筆者独自の見解によるものですので、実際の裁判等において異なる判断が示されることもございますことをご了承ください。

納品された写真が著作権侵害と発覚!使用した自分も処罰される?

Q1. 記事用の写真撮影をカメラマンに委託し、写真が納品されました。納品時に著作権を私に譲渡する契約となっています。この写真を使用していたところ、第三者から著作権侵害だという指摘を受けました。私はこの写真が著作権を侵害していることを知らなかったのですが、この写真を使用することで私も罰せられるのでしょうか?

A1.罰せられることはありませんが、民事的な請求を受ける場合があります。

処罰の対象は「侵害行為を行った者」

懲役刑や罰金刑といった刑事罰の対象となるのは、故意に著作権を侵害した場合であり、過失によって侵害している場合は対象とはなりません。
つまり、刑事罰として著作権侵害の罪を問われるのは、実際に侵害となる行為を行った者となるのが原則であり、対して、あなたが行ったのは「写真を利用する(紙面に掲載する、ウェブサイトに掲載する、など)」という行為であることがポイント。ご質問の状況の場合、この行為だけでは著作権侵害には当たらないと考えられるため、あなた自身は「著作権を侵害した当事者」という扱いにはならず、今回の場合は委託したカメラマンということになりますので、あなたが罰せられるということは無いと思います。

たとえこの写真が著作権侵害によって作成されたものであっても、この写真は「侵害行為により元の著作物を翻案(改変)して創作された二次的著作物」であると考えられる場合があり、カメラマンとの契約内容や写真撮影を委託するという意図から、この二次的著作物である写真を利用することについてカメラマン(二次的著作物の著作権者)は許諾しているものと推測されますので、カメラマンから納品された写真を掲載(複製または公衆送信)していたというあなたの行為には著作権侵害となる要因は存在しないことになるためです。

罰は科されなくてもリスクはゼロではない

刑事罰は科されないとしても、権利者から掲載差止請求や謝罪の要求、損害賠償などの民事的救済の請求をされる可能性はあります。
これは、著作権を譲り受けていてもいなくても、そのリスクは存在します。
この場合、これらの要求に従うか、あるいは不当な要求だと感じれば裁判において反論していくことになりますが、実際に著作物を利用しているのはあなたであるため、権利者としてはあなたに対しても利用差止などの請求を行う理由があることから、こういった請求に対して何らかの対応が必要となります。

仮に、裁判において著作権侵害が認められ、損害賠償判決が確定した場合は、あなたはそれを支払わなければなりません。
この場合、カメラマンの著作権侵害が確定するのであれば、あなたは契約違反や不法行為を理由として、カメラマンに対して損害賠償を請求することは可能であると考えられます。

なお、質問においてはカメラマンが著作権侵害していることをあなたは知らなかったとのことですが、もしカメラマンが著作権侵害している事を知った上で、その写真を多数の人に配ったり貸したりした場合、または配るために所有していたような場合は「みなし侵害」(著作権法113条1項2号)に該当すると判断される場合があります。
この場合は、あなたも著作権を侵害したものとみなされるため、特に故意であれば刑事罰の対象となる可能性がありますのでご注意ください。

引用元の著作権侵害におけるリスクとは?

Q2. 複数のメディアやサイトの記事を引用して記事を書いていますが、その引用元が著作権侵害をしていたら、こちらも罪になるのでしょうか?

A2. 罰せられることはありませんが、民事的な請求を受ける場合があります。

賠償請求に潜む意外なリスク

こちらもQ1と同様に、あなたが直接的に著作権侵害をしたわけではないため、あなたが著作権侵害を問われる可能性は低いと考えられますし、また民事的請求を受ける可能性があることも同様です。

ただ、正当な権利者から民事的請求を受けた場合に、その求償を引用元の記事の作者に求めることが難しい点がQ1とは異なります。
Q1の場合、質問者が損害賠償金を支払った場合でも、その金額を質問者の損害だとして、直接的な侵害を行った本人であるカメラマンに対して契約違反などを理由に賠償を請求することも考えられます。しかし、このQ2の状況の場合、引用したメディアやサイトの記事の作者とあなたの間には、記事の利用に関する契約が存在しないことから、あなたがこの作者に対して賠償を請求できる根拠がありません。

なお、引用元の著作権侵害のリスクも重要ですが、あなたが「引用」だとしている行為が、適切な引用の要件を満たしているかどうかも重要ですので、その点もご注意ください。
引用については、こちらの連載でも第3回で取り上げていますが、引用だと認められるためには複数の要件が必要となります。

文字や書体に対する著作権侵害とは?

Q3. 私がデザインした文字を基に作成したロゴデザインに、私の許可無く別の要素を書き加えられたり、文字の形を変えられたりしました。これは著作権侵害に当たるのではないでしょうか?

A3. 書体は著作物であるとは認められない可能性が高いため、それを改変しても著作権侵害は成立しないものと考えられます。

書体は本来情報の伝達のために利用されるものであり、それは万人共通の財産であるため、それを著作権という権利によって特定の者に独占させるという考えは適しません。
また、美術作品のような美的創作性が表現されていれば「美術の著作物」と考えることもできそうですが、文字として識別できる程度に本来の文字の形が残っていたような場合は、それが著作権で保護すべき独創的な美的創作性を有しているとは認められないとされています。
つまり、ロゴデザインであっても、文字として読むことができるようであれば、著作物として保護することは難しいのが実情です。
(「Asahiロゴマーク事件」東京高裁平成8年1月25日判決、「ゴナ書体事件」最高裁平成12年9月7日判決、など。)
※ただし、書のような、文字であっても書家の個性が十分に表現され、鑑賞用といえるほど美的創作性のあるものについては、美術の著作物として認められている裁判例もあります。(例:「ヤギ・ボールド事件」東京高裁昭和58年4月26日、「装飾文字「趣」事件」大阪地裁平成11年9月21日、など。)

よって、ロゴデザインが著作物と認められない以上、著作権の支分権である複製権、翻案権、そして著作者人格権である同一性保持権のいずれも発生しないことになるため、そのデザインに対して要素を追加したり、文字の並びを変えるという改変行為を施しても、著作権侵害とはならないと考えられます。

ただ、法律上は問題が無くても、倫理的な問題であったり、あるいは似ているとして“炎上”に巻き込まれるリスクというのもあります。
他人の著作物を利用する場合は、様々な視点からのリスク対策も重要となってきます。

創作活動で重要なのは、上手に著作権と付き合っていくこと

以上、3件の質問を元に、主に著作権侵害について解説してきました。
他人の著作物の一部を利用したことで、民事請求に対応するリスクの一部を引き受けてしまうこともあります。
また、写真撮影をカメラマンに委託する場合など、著作物の創作を他人に委託する場合は、その著作物の創作において他者の権利を侵害せず、そして権利侵害していないことを委託者が保証するような内容の契約を締結しておくことも重要です。
他人の著作権を侵害しないように、そして自己のリスクも最大限回避できるように、契約などを有効活用しながら上手に著作権と付き合っていきたいですね。

【過去記事一覧】
第1回「今日から向き合う、自分のための著作権」
第2回「権利侵害への対処と留意点」
第3回「引用・転載の条件と注意点」
第4回「Webメディア制作に関連する著作権」
第5回「オープンソースソフトウェアライセンスの基本と注意点」
第6回「クリエイティブ・コモンズとパブリック・ライセンス」
第7回「音楽の著作権―知識編」
第8回「音楽の著作権―実践編」

遠藤 正樹(えんどう・まさき)

音楽専門学校を卒業後、マニピュレーターや作編曲家として、あるいはウェブデザイナーとしてコンテンツの創作と利用に関する仕事に従事。その中で著作権法の重要性を感じ、行政書士資格を取得。2014年9月に東京・錦糸町にて行政書士事務所を開設し、著作権に関するものを筆頭に、各種契約書の作成やその相談など法人・個人を問わず様々な書類作成をサポートしている。
◆ビーンズ行政書士事務所 http://beans-g.jp/
◆著作権のネタ帳 http://copyright-topics.jp/