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ゲームの未来を創る「NEXT PLAN」発表!サイバーコネクトツー松山洋社長の新たな事業戦略

2月1日に新しい事業戦略を出したサイバーコネクトツー。これまで『.hack』シリーズ、『NARUTO -ナルト- ナルティメット』シリーズなど、数々の注目作を生み出し、世の中を熱狂させてきましたが、その挑戦はまだまだ止まりません。
業界の時流に乗ることなく、時代の流れに乗り、ゲーム業界に一石を投じる「NEXT PLAN」を発表した社長の松山洋さんに、その挑戦心の源と新事業について伺いました。

松山 洋(まつやま・ひろし)
ゲームクリエイター/経営者 1970年福岡市生まれ。
九州産業大学卒業後、コンクリート会社の営業マンを経て、株式会社サイバーコネクトツー代表取締役へ。
代表作に『NARUTO -ナルト- ナルティメット』シリーズ、『ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン』、『テイルコンチェルト』、『サイレントボマー』、『.hack』シリーズがある。
「絶望禁止」を信条とするゲーム開発への過剰とも言える熱意と努力は、業界内外で一目置かれている。
一方、エンタメへの強い思い入れ故の歯に衣着せぬは発言が、物議を醸すこともしばしば。
趣味は「仕事」。特技は「仕事」。休みの日は「仕事」。愛称は「ぴろし」。

漫画家への夢と、コンクリート会社への就職

子どもの頃の夢は、少年ジャンプの漫画家になること。『リングにかけろ』に始まり、『キン肉マン』『北斗の拳』など大ヒットした少年漫画の熱量に惚れていました。中学2年生の時にファミコンが発売され、私も『ゼルダの伝説』『ゼビウス』『マリオ』『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』などで遊びましたが、実は、飛び抜けてゲーム好きだったわけではありませんでした。高校で特撮と戦隊アニメにハマり、大学では「漫画同好研究会」に入り漫画を描いていました。

大人になるにつれ、世界が広がり目標が変わってきました。漫画もアニメも映画もゲームも関わってみたい……エンタメ業界で働きたい。同時に、漫画家を目指している先輩が出版社の目に留まり東京に行ったのに、芽が出ず数年で帰ってきた様子もいくつも見ていました。まずは世の中を勉強しようと思い、福岡のコンクリート二次製品の会社に就職しました。2年目に大阪に転勤になり、大阪ドーム建設に関わる仕事もしました。

その後、漫画研究会の友人が「一緒にゲーム会社を作らないか」と声をかけてくれたことが人生の転機となりました。「これからのゲームなら、漫画やアニメや映画の要素もあり表現もできる。全部できるんじゃないか!」と気づき、一生涯ゲームの世界に身を投じようと決めて、3年半勤めた会社を辞めたのが1996年2月でした。

クリエイティブ社長としての選択

約10名でサイバーコネクトという会社を立ち上げました。初めに決めたのが、私たちは全員がクリエイター・開発者の集団であること。当時はパソコンなんて触ったこともない私でしたが、ゼロからグラフィックの修行を積み、第一作となる『テイルコンチェルト』の最初に登場する街やゲーム内のロケーションの多くを一人で作りました。

3年後、突然、当時の社長がいなくなります。急に会社を辞めたのです。私は17名の社員を前に「俺に社長をやらせてくれ」と宣言しました。「今のままじゃ勝てない。これからゲームが映画以上の産業になった時に、お客さんは創り手が誰かを意識して購入するんだから、顔が見えるクリエイターになろう。そのためには会社の顔を作らなくちゃいけないから、俺が矢面に立つ。開発もちゃんとやる。だからやらせてくれ」と数時間の説得ののち、社長兼開発責任者、いわゆる“クリエイティブ社長”としてサイバーコネクトツーを立ち上げました。経営の勉強なんてしたことないけれど、経営戦略について学ぶ暇があったらひとつでも良い作品を創って売ることが私の役目だと考えていました。

しかし“クリエイティブ社長”とは、「クオリティのジレンマ」を抱えることになります。今日までの22年間、お金を扱う経営者としての判断と、作品のクオリティを求めるクリエイターとしての判断を、常に天秤にかけ続けてきました。ゲーム開発の世界で大事な3点は「スケジュール」「クオリティ」「お金」です。その中で多くの会社は絶対に外せない「スケジュール」は守る一方で、「クオリティ」を妥協することが多いと思います。

しかし我が社は「お金」を諦めます。つまり赤字です。自分たちの心臓を捧げてつくった高クオリティの作品を世に出し、価値があると思ってくれた人が購入する。もし売れなければ潰れる。それだけです。

ゲームクリエイターはゲームを見てゲームを作ってはいけない

私たちは、誰も見たことのない作品を作らなければいけません。しかしすべての面で革新的なゲームでは、遊ぶ方も「?」となってしまいます。ポイントは『共感8:意外性2』。8割の「どこかで見たことがある、なんとなく想像がつく」という共感がないと、2割の意外性を意外だと思えず、気持ちがそそられないんですよ。

たとえば私たちはグラフィックにもこだわっていて、パンチなら、そのまま拳を前に出すより、バックステップしながら撃つ方がカッコいい。そのカッコよさは常に新しいビジュアルを追求しつつ、そこに共感できるドラマと体験を付加します。ただ襲われたから闘うよりも、自分の兄弟を殺した敵だから闘うという物語を作ることで、ゲームにのめり込んでもらいます。共感するほどに、握るコントローラーの重みが変わるでしょう。

何が共感で何が意外かを知るには、たくさんの作品を知っていなければ判断できません。そのため会社には福岡本社だけでも4000冊以上の漫画があり、東京支社も合わせると9000本以上のDVDやBlu-rayがあります。歴代のウルトラマンもゴジラも仮面ライダーもガンダムもすべて揃えてあります。また漫画や雑誌も月に60冊定期購読しており、当然、私もすべて読みます。社員はいつでも借りられるので、昔の作品も見て自分の中に取り入れて欲しいですね。ゲームクリエイターはゲームを見てゲームを作ってはいけないというのが私の持論なんです。

私たちがもっとも得意としているのはアクションゲームですが、スタッフには、漫画、アニメ、映画などをヒントにアクションを作るように求めています。他のジャンルを知り分析することで、ゲームならではの特徴・文法は何かという、答えが見えてきます。
たとえば、ゲームは他のエンターテイメントと違って、ユーザーは決められたいくつかのポイントのうち好きなところでセーブし、自分の好きなタイミングで再開します。セーブポイントはこちらで設定するため、遊ぶ方に配慮したゲーム設計をするよう気をつけています。

そもそも根本的な娯楽の考え方として、時間の隙間にちょこちょこ遊んでもらうのではなく、たまの休日に「今日は遊ぶ!」と決めて思いっきり楽しんでもらいたい。決められた時間の中で感動を与えてくれるものが娯楽だと考えています。

休みはいらない、死ぬまでこの仕事がしたい

いくつもの作品を制作してきましたが、どれも同じ作り方はしていません。『NARUTO -ナルト- ナルティメットストーム』は1、2、3、4とありますけれどそれぞれ新作を作るつもりで毎回システムも制作チームも変えています。メンバーを変えて関係性を作り直さないと新しいものはできません。完全新作のつもりで、守るところと新しく洗練するところを決めてイチから作ります。

ゲームを作ることは面白いですよ。「ああでもないこうでもない」とアイデアをこねくり回し、ものが生まれていく。生まれたものを「やっぱり違う」と捨てる瞬間すらも嬉しい。作品が頑丈になるために必要なステップですから。

基本的に私はとにかくポジティブで、そういう性格を作ったのは少年漫画。少年ジャンプの主人公に憧れて育ちました。ある時は「苦しいときこそニヤリと笑え、はたから見てみな男だぜ」というOVA『炎の転校生』の主題歌を口ずさんでいました。自分自身が少年漫画のキャラクターになって、その自分の血肉が新しいキャラクターを生み出すんです。

そうやってありとあらゆるハードルを越えて完成した作品が発売される日がもっとも嬉しいですね。発売日には売り場に行ってずっと柱の陰で見ています。それで帰り際に「ありがとうございます!」って声かけちゃう。もう、嬉しくてしょうがないんですよね。

365日仕事一色で、休もうと思ったことは一度もありません。むしろ仕事のストレスは仕事でリフレッシュしています。一番いい方法はたくさんの人に会うこと。そのためご飯は一人で食べません。1回1時間のご飯を昼・夜365日繰り返すと、年間730時間です。その時間に誰かと話すことで、得るものもあるし相手に与えるものもある。そういう積み重ねが自信につながります。

また、世の中には悔しい思いをさせてくれるクリエイターがたくさんいるので、日々興奮と悔しさを感じています。すごくいい作品に出会うと、面白くて悔しくて夜中にうなされるんです。そういう作品が私を休ませてくれないんですよ。毎日超楽しいです。死ぬギリギリまで仕事をしていたいです。

サイバーコネクトツーの新しい一歩

これまで22年、前半の10年はサイバーコネクトツーという会社を知ってもらうためにワンマンでやってきました。後半の10年はサイバーコネクトツーといえば松山洋だけではなくあの人もいる、この人もいる、と、いろんな現場のスタッフが存在感を持って自分たちの意思で物事を進めていけるようにバトンを渡す10年でした。

これから10年の「NEXT PLAN」はまたガラリと変えます。
まず社内的には、起業当時のワンマンに戻ります。私が全てを見て1秒で判断することで速度感が増すでしょう。

会社としては、制作に3年以上かかるような重厚長大なゲームを作り続けつつ、若手や中堅を中心に30人ほどのチームが約1年で作り上げる小中規模の作品も作ります。それによって、クリエイターとしての経験を積み、リーダーにもなれる人材を育てていきます。

具体的には3つのタイトルを考えており、福岡本社、東京、モントリオール、それぞれで連携して制作し、1年後には世の中に出します。短期間で作るので、ボリュームは少なく4時間半ほどでクリアでき、主人公は一人です。
そのかわり、ほかのゲームの4時間半では体験できない珠玉の4時間半を用意します。これまで見たことのない主人公とアクションで遊べて、値段も安く、ワールドワイドに展開します。こういう制作システムはこれまでなかったのですが、実は今の時代に合ったゲームの作り方だと思うんですよ。

この3タイトルについては、スタート地点から一緒に走ってくれる仲間を集めます。未経験の人でも構いません。そのかわりとても大変ですが、それでもやりたいという人間を世界中から集めたいですね。たとえば当社のスタッフには元アニメーターがいますが、彼は採用から2ヶ月ほどでパソコンを覚えて『NARUTO -ナルト-』のバトルモーションを作りました。
今は未完成でいいんです、好きなら努力してくれますから。

ワンマンなシステムにするので、一次面接も私が行います。採用基準は「人柄」と「好きなもの」。ゲーム開発はコミュニケーションなので話しやすさは必須です。そして、好きなものを持っている人は信じられる。漫画でも車でもジーパンでもなんでもいいんです。

今は3拠点で合計200名のスタッフがいますが、あと2年で300名規模の会社にしていく予定です。やる気があって努力を惜しまない人には後悔させません。熱くてヒリヒリする現場で、人生が変わるようなゲームを作り続けていきたいです。

インタビュー・テキスト:河野桃子/撮影:SYN.product YUICHI TAJIMA/編集:CREATIVE VILLAGE編集部

企業プロフィール

サイバーコネクトツー福岡、東京、モントリオールに制作拠点を置き、家庭用ゲームソフトの企画・開発をおこなっている。
代表作、『.hack』シリーズや全世界で1500万本を突破した『NARUTO -ナルト- ナルティメット』シリーズなどこだわりを持って制作した映像演出・アクションは、国内外から高い注目を受けている。
独自の取り組みとして福岡県防災キャラクター『まもるくん』のキャラクターデザインや復興支援プロジェクトなどの活動を積極的に行っている。

社名:株式会社サイバーコネクトツー
所在地:福岡市博多区博多駅前1-5-1-10F(福岡本社)
設立年月日:1996年2月16日
代表者:松山 洋
事業内容:家庭用ゲームソフト企画・開発
資本金:4000万円
URL:http://www.cc2.co.jp/

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