クリエイターとして、熱く闘うことの大切さをまとめた「ゲームクリエイターの超十訓」を、ご存知ですか?
この十訓を説いた、熱いクリエイブ現場を生み出す天才 サイバーコネクトツー 松山洋氏の“熱狂した”新刊出版記念トークライブをご紹介します。

“熱狂” ゲームの世界で戦い続ける松山氏

2017年11月7日(火)、クリーク・アンド・リバー社で松山洋氏著「エンターテインメントという薬-光を失う少年にゲームクリエイターが届けたもの-」の出版を記念したトークライブイベントが開催されました。

松山洋氏は、家庭用ゲームソフトの開発する株式会社サイバーコネクトツー(CC2)を20年以上経営しながら、第一線のゲームクリエイターでもあります。
「.hack」シリーズや「NARUTO」シリーズなど、世界的にヒットするゲームタイトルを生み出す原点がどこにあるのか。その一端を垣間見たいと、トークライブに参戦してきました。

果たしてそこに、24時間ゲームの世界で戦い続ける戦士を見ました。

ライブの開始早々から放たれる、覚悟を決めた松山氏の熱い語りが、参加者を一気に巻き込んでいきます。

まずは、スマホゲームに今は積極的に取り組まない姿勢を説明。「昔はやっていたけど、向いていないから」と。
その理由は、遊ぶ方も、作る方も疲れないで、一日の締めくくりに部屋で娯楽として楽しめる家庭用ゲームの方が、今の会社や自分に向いているからということです。

新刊本「エンターテインメントという薬」にあるように、この日のトークライブはCC2の主戦場である、家庭用ゲーム中心で進んでいきます。

ゲームを開発する際の覚悟とは

そして11月1日(水)に発売したばかりのゲームタイトル「.hack//G.U. Last Record」の販売が順調な滑り出しだったということから、話はゲーム開発時の決意について語られました。

「版権を預かって開発するのであれば、向こう10年間一緒に続けていく覚悟のある作品だけやっている」と話されました。CC2で版権を預かる「NARUTO」も「ジョジョの奇妙な冒険」も、開発を始める時には、その覚悟で引き受け、クライアントにもその位の気持ちを求めているということです。
ゲームと真摯に向き合う熱い思いと、会社の事業を長期に安定させるというクールな頭脳を、同時に持つ。ここに長年にわたって培ってきた、クリエイターと経営者の視座を感じました。

数字で見るゲーム業界

数字で見る家庭用ゲーム業界について、松山氏がクイズを交えながら、話し始めました。
「1年間に国内で発売される家庭用ゲームソフトのタイトル本数(2017年)は?」という質問に対して、参加者からの答えは180本から1,000本と、まちまち。
正解は、年間435本。2016年の424本から上向いたものの、2007年の983本をピークに減少傾向となっている事実が示されました。

さらに質問が続きます。「その中で、購買の中心である一般の子供たちが年間で購入する本数」。正解は2016年で4本という事実が。
東京ゲームショウに行くほどの熱狂的ゲームファンで、年間購入する平均タイトル数は8.8本。一般ではその半分以下になってしまうという事実。
年間435タイトル発売されますが、ほとんどのゲームソフトはどうなっているのだろう?とここで疑問が湧き起こります。

その答えが最後の質問でつかめました。「今年2017年に、100万本以上売れたゲームタイトルは何本?」。その答えは次の通り。

1位 「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」(3DS) 172.8万本
2位 「モンスターハンターダブルクロス」(3DS) 166.8万本
3位 「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」(PS4) 132.1万本
4位 「Splatoon2(スプラトゥーン2)」(Switch) 130.9万本

国内の売上ランキング上位4タイトルだけがミリオン超えです。4位に今年登場した、任天堂のSwitchのソフトが入ることは、ゲーム業界に明るい未来があるとも言えるかも知れませんが。
その後40~50位前後のランキングや100位までのランキングなども紹介されましたが、100位付近では販売本数は約3万本という衝撃的な数字が。
松山氏は、「ものによりますが、世界で売れるタイトルを考えると、PS4であれば宣伝費も含めて10億円くらいかけて、10万本売れないと赤字になる」ということです。

ゲーム業界の収益構造のカラクリでもあるのですが、「400以上のタイトル出ていても、黒字なのは50位までの1割ちょっと。残りの9割は赤字。その黒字タイトルが赤字を埋めているビジネスになっている」と説明されました。

ゲームクリエイター、そして業界を目指す方へ

「作っている人たちは、自分の関わるタイトルに夢を持っている」とゲームクリエイターを理解しながらも、逆に言えば、50位以内に入る1割の黒字タイトルを開発するために、クリエイターならば「お客様である子供のトレンドを考えて、どうしたら面白く思ってもらえるかを真剣に考える人でないと、この業界では生きていけない」と、クギを刺されました。
「『遊ぶ』、『読む』、『観る』、『体験する』。とにかくインプットを増やして欲しい」とも。

「作る達人は、楽しむ達人」
プロジェクターに映し出されたこの文字には、クリエイターへの応援が含まれていたのが印象的でした。
ゲーム業界を数字でしっかり押さえながら、熱く厳しくクリエイターを叱咤激励する。松山氏のような方が、ゲーム業界にいる限り、日本のゲーム業界はまだまだ成長し続ける、と感じながら会場を後にしました。

追伸として

インプットをするための環境がCC2には揃っていることも説明されていたので、ここでご紹介します。

福岡本社、東京スタジオのほか、今年カナダのモントリオールにスタジオを開設。
200名以上のスタッフがゲームを制作しています。

社内には、「少年ジャンプ」からビジネス誌まで月60冊以上の定期購読誌が置かれ、貸出票無しに自由に閲覧できます。その上、8,000本以上の映画やアニメのBlu-rayやDVD、幅広いジャンルの4,000冊以上のマンガに、2,000本以上の名作から最新作までゲームソフト揃え、ライブラリーを常設しているとのこと。

定期的に第一線のゲームクリエイターなどを招いた勉強会も実施していて、クリエイターが刺激を受けて、様々なアイデアを生み出しやすい環境なのではないでしょうか。

▼株式会社サイバーコネクトツー
http://www.cc2.co.jp/

トークライブの後、新刊のサイン会・懇親会も行われ、大勢の方々が忘れられない夜を過ごしました。

(CREATIVE VILLAGE編集部/Progre_t)

【新刊紹介】

「エンターテインメントという薬 -光を失う少年にゲームクリエイターが届けたもの-」
(発行:株式会社Gzブレイン 発売:株式会社KADOKAWA)

PS4やPS3向け「NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメット」シリーズや、「.hack」シリーズなどの人気ゲームを開発した、株式会社サイバーコネクトツー 代表取締役でありゲームクリエイターの松山氏がつづるノンフィクション。

2006年12月、松山氏に入った1本の電話をきっかけに、ひとりの少年に出会うところから本書は始まります。その電話は、目の病気のため眼球摘出手術を受ける少年が、「.hack//G.U. Vol.2 君想フ声」の続きを遊びたい、と望んでいることを告げるもので・・・・。

発売日:2017年11月1日
定価(本体1500円+税)
ISBN-10:4047332909
ISBN-13:978-4047332904
▼ご購入は下記からも可能です
http://www.cri.co.jp/news/press_release/2017/20171023002112.html

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