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資生堂が取り組むリアルとWebを融合したCRM活動「資生堂表情プロジェクト」レポート~広告宣伝EXPO2017 基調講演

「しわを改善するクリーム、発売」―本来、医薬品医療機器法では医薬部外品でこのように訴求することは許されていません。しかし2017年2月、資生堂は製品化したリンクルクリームが厚労省からこの効果を訴求して良しとする認可を受けたのです。
業界的には画期的なこの出来事からスタートした資生堂の新たな “CRM戦略”とは?2017年7月に開催された『広告宣伝EXPO2017 夏』で開催された基調講演より、資生堂ジャパン株式会社 取締役 執行役員 事業戦略本部長の赤尾一成氏のお話をレポートしてお届けします。

「しわを改善する」だけではない、その先の“価値”を提供する

2017年2月28日は資生堂にとって記念すべき日となりました。それは当社が製造した「しわ」にアプローチするクリーム『エリクシール シュペリエル エンリッチド リンクルクリーム S』が「しわを改善する」と効果効能を謳って良いという承認が厚生労働省から下りたのです。
この出来事は業界としては非常に画期的なこと。なぜなら医薬品医療機器法では本来、「(しわやシミなどが)消える、なくなる」などという効果を謳うことについては厳しく規制されているからです。

そこで、さらに私たちは考えました。
「しわを改善する」と訴求できる、という画期的な出来事にばかり捉われてしまってはいけないと。
こうした“効果”だけを目的にしてしまうと、顧客の層もあまり広がらないのではないか?結局は“高齢女性のためのしわ取り化粧品”にとどまってしまうのではないか…。
社内で喧々諤々と議論を交わした結果、「しわ改善」の先にある新しい価値や美しさ、これをエンドベネフィットとして提唱していこう、ということで方針を定めました。

資生堂の新たな顧客戦略「表情プロジェクト」スタート

これを私たちは“チャレンジ”として取り組んでいこうと決めました。そしてこの取り組みを「表情プロジェクト」として、4月20日にスタートさせました。

調査を実施してみると、現代の女性は外面よりも内面の美しさを求めているということがわかりました。そして多くの女性が感じる魅力的な女性とは、“内面の輝きがあふれ出ている”人。内面の輝きとは、優しさとか強さ、愛、そうしたキーワードに象徴されるものです。これこそがしわ改善の先にあるものではないか、と考えを巡らせていきました。
そして、内面の輝きが表れるのは表情なのではないか、という結論にたどりついたのです。

表情は一人ひとりの内面の輝きをもっとも顕著に表すものであり、それこそが“究極の個性美”であるとしました。
しかし一方で、表情が豊かになればなるほど、顔にしわが出てしまうという現実も存在します。表情は内面の輝きの表れであるにもかかわらず、表に出せば出すほど、しわと化してしまうのです。
これを裏付ける結果として、調査からは「写真を撮る時にしわを気にして思い切り笑えない」という女性が全体の5割も存在しました。そして「しわがなければ、もっと思い切り笑えると思う」と思う人は全体の8割にも達したのです。

“究極の個性美”である豊かな表情を “しわ”が縛りつけているのだとしたら、非常にもったいないことではないだろうか?それについて女性たちの共感を得ていこうと考え、“欲求”だけでなく“共感”までも追求していこうと、取り組むことにしました。

豊かな表情を“絵文字”に重ね合わせたコミュニケーション

デジタルのコミュニケーションにおいて日常的に使われている絵文字。調査結果をみると、年代に関わらずほとんどの人が絵文字を使用していることが分かりました。
ここでなら喜怒哀楽を思い切り出せるとばかりに、メールやSNSでは絵文字を使って豊かに感情を伝えている。一方リアルではどうかというと、日常的に表情豊かに表現するようなシーンがあまりないようなのです。
世代別にみると、絵文字をよく使うと一番多く回答したのが30~40代。その世代は一方で「表情が豊かである」という回答数が他の世代に比べて低いという相関関係が浮き上がりました。
※参照: http://hyojo.shiseido.co.jp/relation/

この結果から、絵文字を使って大胆に感情を訴えるデジタルの世界と、それほどでもないリアルの世界の対比構造をインサイトに据えて、カスタマーに気づきを与え、エンドベネフィットにつなげることがキャンペーンとして出来ないかと思いついたのです。

社内でこんな実験も行いました。プロジェクトサイトにも載せておりますリサーチムービー「EMOJI-GAO CHALLENGE」です。

登場者のみなさんに「よく使う絵文字はどれですか?」とお聞きし、選ばれた絵文字と同じ表情をしてみてくださいとお願いしました。すると、「笑うと目じりの小じわが目立つのがイヤ」などという悩みがちらほらと聞かれました。

そして、篠原涼子さんや宮沢りえさんなど6人の女優のみなさんにもご協力いただいたCM広告。動画に込めた「しわから自由になると表情も自由になる」というメッセージにより、表情には内なる美しさを伝える力がある、それを印象的に伝え、カスタマーに気づきを与えようと挑戦しました。

ブランディングとセールスを両軸で高めていくための最大効果を追求する

このプロジェクトの狙いは、「共感性」です。“表情は究極の個性美である”と掲げた新しい価値観に対して共感していただくことで、まずはプロジェクトとカスタマーの間で関係性を築き上げていく。その先に商品、企業とカスタマーとの間の関係性を築き上げていこうと考えました。

「表情って美しい」―このメッセージを中心に共感を深めていくために、商品の投下前・投下後、さまざまな活動を、取引先向け、メディア向け、一般客向けと行ってきました。
2月に認可が下りてから、まずは取引先に向けて新聞広告を出稿。そして女性誌や美容誌などのメディア向けにはプレスキャラバンを行いました。一般のお客様に対してはマス広告を打ってプロジェクトサイトを立ち上げたり。もちろん体感して商品の良さを実感していただくためのイベントもしっかり行いました。

私たちが意識したのは、効果を感じてもらうだけではなく、お客様ご自身への“気づき”をも得てもらうこと。たとえばイベント会場にフォトコーナーを設けて実際にご自分の顔を見てもらうことなども行いました。
このように商品を投下する前から、少しでも資生堂のこと、資生堂が取り組んでいることに共感して好きになってもらえるよう取り組んできました。

おかげさまで第1弾の商品は、品切れに迫るほどの勢いで売れており、大変大きな反響を得ることが出来ました。この表情プロジェクトは第2弾、第3弾と進めていきますので、ぜひ、今後も注目していただければと思います。

CREATIVE VILLAGE編集部