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専門家に学ぶ!クリエイターのための著作権講座 第2回「権利侵害への対処と留意点」

2017/06/29 コラム著作権

「著作権侵害をしてはいけない」という認識は今や誰もが持っているものの、では一体何が“侵害”に当たるのか、ご存知ですか?
また、侵害に当たらないケースもあること、知っていますか?
今回は権利の侵害についてスポットを当て、知っておきたいこと、注意しておきたいことを解説します。

著作権とは“独占的”であることをまずは認識しよう

著作権とは、著作物を創作した人(著作者)に自動的に与えられる「独占的利用権」であることは前回のコラムで触れました。
“独占的”な権利であるため、原則として著作物を利用できるのは著作権を有する人(著作権者)だけであり、著作権者以外の人が利用する場合は、著作権者から許諾を得る必要があります。

複数の権利をまとめたのが「著作権」

著作権法(以下「法」といいます)では著作物の利用形態に応じて複数の権利を定めており、それらの権利(支分権といいます)をまとめたものが一般的に著作権と呼ばれます。

具体的には、複製権、上演権・演奏権、上映権、公衆送信権等、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳・翻案権等、二次的著作物の利用権、出版権があり、他にも著作者人格権(公表権、氏名表示権、同一性保持権)や、ミュージシャンや俳優、レコード会社などが持つ著作隣接権(録音・録画権、放送権、有線放送権、送信可能化権、二次使用料を受ける権利、譲渡権、貸与権等)、実演家人格権(氏名表示権、同一性保持権)があります。

著作権侵害となるのは、権利者の許諾が無い状況(および後述する権利制限規定に該当しない場合)において上記各権利に関する方法で著作物を利用した場合となります。

また、利用形態に依っては、著作者人格権に関して著作者からの許諾も必要となる場合がありますが、「著作者の名誉又は声望を害する方法」で利用した場合は侵害とみなす(法113条6項)という規定もあるため注意が必要です。

著作権が侵害された時の対処

著作権者の権利が侵害された場合、法では犯罪行為だとして罰則が定められており、権利者が告訴することで侵害者に対して刑事罰が科される場合があります。

犯罪行為に対する罰則について

刑事罰は、侵害の形態や対象によっていくつかの種類にわかれていますが、主なものは次の通りです。

・著作権や出版権、著作隣接権を侵害した者・・・10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法119条1項)
・著作者人格権または実演家人格権を侵害した者・・・5年以下の懲役または500万円以下の罰金(法119条2項1号)
・そのプログラムが違法複製物だと知りながら業務で使用した者・・・5年以下の懲役または500万円以下の罰金(法119条2項4号)

なお、上記各罰則で懲役または罰金となっておりますが、その両方を科すことができます。
さらに、上記各罰則については、著作者人格権または実演家人格権の侵害を除き、法人の従業員(役員や派遣社員も含みます)などがその法人の業務に関して著作権を侵害した場合は、違反行為を行った従業員への処罰だけでなく、その法人に対しても3億円以下の罰金が科される場合があります。

侵害された権利者の立場は?

ここまで挙げてきたものは犯罪行為に対する刑事罰ですが、その他に権利者の救済という点からの民事上の請求もできます。
この請求は、権利者が侵害者に対して直接行うこともできますし、裁判所に提訴して裁判所から侵害者に命令することもできます。

・損害賠償請求(民法709条)
権利者が被った損害の賠償を請求することができます。なお、損害額の立証が難しい場合もあるため、権利者の負担軽減のために損害額の推定に関する規定(法114条)もあります。

・差止請求(法112条)
侵害行為の停止を請求することができるだけでなく、侵害されるおそれがある場合にも侵害の予防措置を請求できます。侵害停止の請求に加えて、侵害によって作成されたものの破棄なども請求できます。

・不当利得返還請求(民法703条など)
侵害によって利益を得た侵害者に対して利益の返還を請求することができます。

・名誉回復の措置の請求(法115条など)
著作者または実演家は、その人格権を侵害されたときに著作者などとしての名誉や声望を
回復するための措置(新聞への謝罪広告掲載など)を請求することができます。

日本の著作権法の厳しい現実

日本の法では、侵害に対して民事での請求に加え、他の法律と比較しても重い内容である刑事罰が科されることが規定されています。

これをもって、日本の著作権法は厳しいという意見もあるのですが、実際にはもっと軽い刑罰で確定しているケースも散見されます。

(罰金)
無許諾アップロード→罰金30万円~50万円前後

(裁判例)
マンガのキャラクターを商品化して販売→懲役10ヶ月(執行猶予3年)

民事訴訟においても、裁判で認められる損害賠償の額というのは原則として権利者が被った損害の額となりますので、多くの場合、決して高額ではありませんし、裁判という手続自体にもそれに対応する時間とお金が必要となります。

(裁判例)
原告(日本画家)が撮影した写真を基に絵画を制作して展覧会に出展した被告(日本画家)に対して損害賠償・慰謝料の合計1,980万円請求→合計40万円の支払を命ずる

(裁判例)
原告が書籍を出版した際に作成された印刷データを用いて被告が別書籍を出版したことに対する損害賠償として300万円請求→3万円を損害額と認定

そのため、泣き寝入りするしかないという場合が存在するのも現実であり、それを考えると、果たして日本の著作権は厳しいと言えるのかは難しいところです。

しかし、それでも犯罪は許されるものではありません。
権利者としては、毅然とした態度をとることも重要であると考えています。

著作物の無許諾利用とフェアユース

権利者の許諾なしで著作物を利用することは権利侵害となるのが原則ですが、法では例外も定められています。

日常の何気ない行為が著作権にあたるものもある

著作権者の権利を制限する「権利制限規定」によるもので、例えば購入したCDを個人的に街中で聞くためにiPodなどに転送(複製)することは、法30条の「私的使用目的の複製等」に該当し、違法ではありません。

日本の著作権法では、このように無許諾で利用できるケースというのを限定して定めるという形になっていますが、規定されていないケースであっても、著作権者の権利を不当に害するとまではいえない利用方法もあります。

検索エンジンサービスは実は著作権違法!?

例えば、Googleのような検索サービスを作ろうとした場合。
検索サービスとはネット上にある文章や画像などの著作物をコピー(複製)して検索サービス側のデータベースに保存し、閲覧者からの求めに応じて保存しておいた著作物の一部を表示(公衆送信)するものです。つまり、複製権と公衆送信権に関係する著作物の利用方法であるため、2009年に法改正されるまでは、権利者に無断で行うことは権利侵害だと考えられていました。
しかし、これでは日本で検索サービスサイトを作ることが事実上不可能となってしまいますが、逆に権利者としては載せたいという思いがあるため、こういったサービスを業として行う者は複製などができるように法改正(47条の6を新設)されました。

その後も、いわゆる写り込み規定(軽微な範囲に限り写真などに他の著作物が写り込んでも問題なしとする。法30条の2)などが権利制限規定として追加されています。

このように、利用に関して新たに生じた問題に対応できるように法改正はされているのですが、しかしそれはあくまで限定的です。

日本のフェアユース導入の現状は?

その点、アメリカの著作権法では、“公正な利用”であれば著作権者の許諾なしに著作物を利用できるとする「フェアユース」と呼ばれる権利制限の一般規定が制定されています。
日本法のように場面を限定せず、4つの要素(利用の目的と特性、著作物の性質、著作物全体との関連における使用された部分の量・実質性、著作物の市場価値に対する影響)を基に検討し、公正だと考えられる利用であれば権利侵害にはならないとするものです(著作物利用後、権利侵害だと思われる場合は司法の判断に委ねられます)。
この規定があれば、先ほどの検索サービスの件も権利者の権利を不当に害しているとはいえないため、公正な利用だと考えることができますし、実際にGoogle社の検索サービスは(ウェブ検索だけでなく書籍検索のGoogle Booksも)裁判においてフェアユースであると認められています。

日本でもこのフェアユースの導入について何度も議論されています。
「知的財産推進計画2009」での提案により、権利制限の一般規定(日本版フェアユース)の導入が検討されましたが、結局導入には至らず、2012年の法改正によっていくつかの個別制限規定を追加するだけで終わっています。
最近でも、「知的財産推進計画2016」により、“権利制限の一般規定”という言葉よりはトーンダウンした“柔軟性のある権利制限規定”の導入が議論されていますが、権利者団体などからの反対意見も根強く、導入までの道のりは平坦ではありません。

「権利者からの許諾」が大切

著作物を利用する際には、権利制限規定に該当するかを確認し、該当しなければ著作権者(利用形態によっては著作者も含めて)から許諾を得るという「権利処理」を行うことが原則です。
私たちの周りには著作物が溢れています。
勝手に判断するのではなく、合法的利用に留意して適正に利用することが大切です。

【過去記事一覧】
>第1回「今日から向き合う、自分のための著作権」

遠藤 正樹(えんどう・まさき)

音楽専門学校を卒業後、マニピュレーターや作編曲家として、あるいはウェブデザイナーとしてコンテンツの創作と利用に関する仕事に従事。その中で著作権法の重要性を感じ、行政書士資格を取得。2014年9月に東京・錦糸町にて行政書士事務所を開設し、著作権に関するものを筆頭に、各種契約書の作成やその相談など法人・個人を問わず様々な書類作成をサポートしている。
◆ビーンズ行政書士事務所 http://beans-g.jp/
◆著作権のネタ帳 http://copyright-topics.jp/