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『BLAME!』の守屋秀樹プロデューサーに聞く エンタメ業界注目のプロデューサーの発想とは?劇場・Netflixの同時公開を実現

講談社「アフタヌーン」にて1997年~2003年に連載され、「シドニアの騎士」で第39回講談社漫画賞を受賞した弐瓶勉氏のデビュー作「BLAME!」が、待望の劇場アニメーション化!今なお世界中のクリエイターを魅了し続ける鬼才・弐瓶勉の原点ですが、劇場アニメーション化のみならず、「劇場∞Netflix」と題して、劇場公開とNetflixによるオンラインストリーミングサービスを同時に行うという、前代未聞の試みも話題になっています。

その本作には、映像革命と称された同じく弐瓶勉原作の「シドニアの騎士」のスタッフが再結集!しかも弐瓶氏による全面協力・総監修の元で再構成した完全新作ストーリーとして誕生した『BLAME!』。そのプロデュースを手がけた人物こそがポリゴン・ピクチュアズの守屋秀樹さんです。

瀬下寛之監督とは『シドニアの騎士』、『亜人』、そして『BLAME!』と名作を続々と放ち、アニメビジネスを統括する製作委員会の方針決定にも関わっている守屋さん。その最注目パーソンに、映像&エンタメ業界のこと、今の仕事を目指したきっかけ、未来のクリエイターへのアドバイスなど、さまざまなお話を伺いました。

GAGA、GONZOを経てポリゴン・ピクチュアズへ

僕が大学生の頃というのは、ちょうどバブル終わりの93年ごろの話ですね。TSUTAYAなどのDVDレンタル店がどんどん店を増やしていた時代で、「DVDを借りて映画を自宅で観る」というのが定着してきた時代。

そのころ、たまたま大学でテレビ業界を研究する機会があったんです。「自動車業界や商社などより、自分は映画やテレビの仕事をしたいな。楽しそうだし。」と単純に思うようになっちゃいました(笑)。

元々、テレビや映画の仕事は人気業界でしたが、WOWOWなどの衛星放送の開局でビジネス的にも更に注目されていて、当時、就職するには凄い倍率でしたね。たくさん受けましたが、どんどん落ちて「こりゃあ、映像業界、全滅かな…」と(笑)。そんな焦る状況の中で、唯一拾ってくれた会社が、映画配給会社のGAGA(『ラ・ラ・ランド』など)でした。

GAGAでの仕事は刺激的でした。当時、みんな若くてクセのある人だらけ。とにかく大変でした(笑)。でも、このときの経験が自分の仕事スタイルのベースになっていますし、今でも知り合いが業界に多くいて、色々助けていただけているのもGAGA時代のおかげ。GAGAに入っていなければ、この道には来ていないですから、とても感謝しています。

7年ほどGAGAで働いて、エンタメ業界の知識がある程度ついて、何を自分が仕事でしたいのか改めて考えました。「海外から完成した作品を買って日本で公開するビジネス」ではなくて、「自分の会社が最初の企画制作をして、逆に世界にコンテンツを輸出できる会社に行ってみたい」という気持ちが強いのが分りました。そこで「日本から発信できて世界で認められるものは、アニメかゲームかな。」と答えを出したんです。そこで縁があってGONZOというアニメーションの会社に2000年に移りまして、アニメやゲームの仕事に携わりました。

その後、2011年に現在所属しているポリゴン・ピクチュアズをGAGA時代の上司に紹介されました。そのときは、昔からCGスタジオとして会社名は聞いたことがあるけれど、ポリゴン・ピクチュアズの仕事や作品は全く知らない状態。そのとき塩田社長にオフィスを案内されたのですが、「これほどすごい仕事をしているのに、なんでこんなに有名じゃないんだろう」と驚きました(笑)。

ディズニーやルーカス・フィルムなどと仕事をしているのに、公式サイトなどにもその情報はないし、プレスリリースなども発信していなかったから当然ですよね。でも、こういう制作のポテンシャルがあるスタジオなら、メジャーになるチャンスはある。GONZOレーベルのブランディングをやっていた経験が自分にあったので、もっと知名度をあげてビジネスを広げられると思い、ポリゴン・ピクチュアズに転職を決めたんです。

劇場とNetflixの同時公開には不安も―念願の『BLAME!』製作秘話とは!?

これは世界的な話なのですが、多くのCG制作スタジオの経営は請負仕事が中心で、アカデミー受賞作品のCGを担当した会社でさえ倒産したケースもあるんです。

受託制作だけをビジネスにしていると、自分で次の作品のスケジュールを決められない。お客さんの判断でスケジュールが変わることはよくあることです。つまり、大きなプロジェクトが終わって次の作品制作を受注する間に、社員を抱えきれず倒産するリスクがあるということなんですよ。

また、作品の権利をもたない受託制作だけだと、自分たちが作った作品が、大ヒットしようが、アカデミー賞を取ろうが、一定の制作費以上はもらえません。つまり、スケジュール面では大きな作品を受注するのは嬉しい一方で、「このプロジェクトのあと仕事がくるんだろうか」という心配が増えますし、ヒットによるロイヤリティがないことがほとんどなので、会社としても成長させにくい。

そんな環境で働きはじめたのですが、GAGAやGONZOで学ばせてもらった権利ビジネスの知識があったので、「自分たちで権利を持てば、ある程度、自分たちで制作のスケジュールをコントロールでき、そしてリスクもあるけれど売れればその分ちゃんと儲かる仕組みにしていったほうがいい」と考えたんです。それで、ツテがあった講談社さんに相談に行って、当社も出資する形で企画制作したのが、『シドニアの騎士』シリーズです。この作品は、日本向けの本格的なセルルックCGのTVシリーズを制作するきっかけになりました。

その『シドニアの騎士』は日本での放送だけでなく、Netflixを通じて、世界に配信されました。すると国内外のファンから、シドニアの原作者である弐瓶勉先生のデビュー作『BLAME!』もアニメ化してほしい、という声が高まってきたんです。自分も弐瓶先生の作品は大好きでしたが、『BLAME!』は連載が終了してからかなり経ちますし、企画書だけで製作資金を集めるのは難しいなと思いました。

しかし、その後『シドニアの騎士』の続編、『第九惑星戦役』の脚本会議で主人公たちがテレビを観ているシーンがあり、そのとき「ここだ!」と思いついたんです。このシーンを主人公たちが観ている番組を『BLAME!』にして、その短い映像を作ったらどうだろうかと。それをパイロット映像にして売り込めば、製作資金が集まるかもしれないと考えたわけです。ちょうど原作者の弐瓶さん、監督の瀬下さん、講談社さんもいらっしゃったので、「このシーンを『BLAME!』にしませんか?」と提案しました。即OKがいただけたので、弐瓶先生をはじめ、瀬下監督やスタッフともノリノリで作ってくれて、ハイクオリティな短編映像ができました。さっそくその短編を持って、付き合いのあったNetflixや製作委員会メンバーと相談したら、彼らも「これは凄い!」と賛同してくれまして、「Netflixと同時公開での劇場アニメ化」が決まったんです。

©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

Netflixでの世界配信と日本の劇場公開を同時におこなうことは日本初のケースで不安はありましたが、「どこでも手軽に観られるNetflix」「大画面や大音響で作品を体感できる映画館」と、それぞれのメディアの良いところを視聴者の方々に好意的にとらえていただけました。

Netflixでご覧いただいた方と劇場でご覧いただいた方とが、同じ作品をネタにSNSで盛り上がることができるので、確実に単体よりも相乗効果が出たんじゃないかと思います。予想以上に評判を得られたので、今はほっとしていますね。

CG映像制作は常に進化するのが目標。一番仕事で重要なのはグルーヴ感!?

今回の『BLAME!』の映像面で特に進化した点は、今まではキャラクターなどに照明を一方向しか当てられなかったものが、複数あてられる技術を導入できたところですね。たとえばポスターの場合、本編の絵そのままをポスターにするのではなく、色や光を足して情報量を高めるのが一般的です。今回の『BLAME!』では「ポスターがそのまま動いたような情報量」を目標にし、本編映像で複数のライトを同時に当てる技術を導入して、よりリアリティを高めています。“そこにいるかのような空間性”を感じてもらえるかと思います。

©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

そもそも「シドニアや亜人の技術のままでいいや」となると、スタジオとして成長がないし、視聴者にも映像クオリティの予想がついてしまいつまらない。コンピューターグラフィックスという常に進化しているツールを使って映像制作しているわけで、我々の映像表現も一歩一歩でいいから進化していくのが重要ですね。視聴者が「次はどんな映像をポリゴン・ピクチュアズが作るんだろう」と期待してくれると嬉しいし、僕らもやりがいがあります。

ちなみに20年以上エンタメの世界で仕事をしてきて重要に思うことは、その企画や作品が好きな人たちと楽しみながら制作をすることでしょうか。作品愛を起点にして、チームの仲が良いとグルーヴ感が出て、更にクオリティが上がるんです。「お金になるから、この作品を作ろう」というのはビジネス上では当たり前ではあるのですが、義務感だけになって企画制作してしまうと、つまらない作品になる。

やはりエンタメなので、スタッフ自身が楽しめて愛せる作品にしたいですよね。「大変だけど、この作品が好きだし、ワイワイ言いながら作るのは楽しい」みたいな感じ。そういう雰囲気は、作品に“ノリ”が生まれてくるし、嫌なことがあった時も乗り切れる。実は『BLAME!」は企画制作チームだけでなく、作品をセールスする製作委員会や宣伝チームも“『BLAME!』好き”が多くて、一丸となってやれているんです。ロジカルにビジネスを進めるのも大切なのですが、セールスや宣伝スタッフのチーム感やグルーヴ感も、作品を盛り上げることに重要な要素だと感じています。

©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

エンタメ業界には「まず入る方法を考える」

これからエンタメ業界を目指す方には、「本当にエンタメ業界で働きたいなら、まずどういうルートで希望する会社や職種にいけるのか、可能な限り調べたほうがいいですよ」とアドバイスしたいです(笑)。私も苦労しましたが、新卒募集は限られた会社しか行わないうえ、倍率が高すぎて難しい。普通に新卒採用で受かるのは、大きく運に左右される。映像業界は実に狭い世界なんです。

だから普通に応募するのももちろんですが、たとえばバイトでもいいから業界に潜り込み、まず働く場所をつかむことでしょうね。『BLAME!』でもご一緒しているキングレコードの部長さんは、アルバイト出身だそうです。「本当はジャーナリストになりたかったんだけど、大学の近くがキングレコードで、そこでバイトをしていたら、そのまま就職することになっちゃいました…」と言っていました(笑)。
私も当時のGAGAはまったく有名じゃなかったけれど、業界での働き方を学べたし、色々な人と知り合えて、その後のビジネスにすごく役立ちました。本当にエンタメ業界に行きたいのだったら、第一希望の会社をゼロイチで考えるのでなく、会社や職種を広く考えて確率をあげたほうがいいと思いますね。本当にやる気があれば、業界に入っちゃえばやりようがある。知恵を絞って得意分野を作りつつ経験をつめば、行けなかった会社に中途で転職するとか、行きたかった部署に異動するとか、運任せだけでなく実力でチャンスを生み出せますから。

そういう意味でも、「ちょっと違う」って、すぐに会社を辞めないでほしいですね。最初はみな未経験者なので、ちゃんと先を見据えてコツコツ仕事をしていけば、辞めたときに“業界経験者”として転職できて道が開ける。ぜひ、いろいろな職種があるので、エンタメ好きな方は、クリエイターでもクリエイターでない方も、エンタメ業界を目指してほしいですね。人に感動を与えられる、かなり楽しい業界だと思っていますので!

作品情報

『BLAME!』
2017年5月20日(土)より劇場、Netflixにて大ヒット公開中
公式サイト: http://www.blame.jp/

©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

【物語】
過去の「感染」よって、正常な機能を失い無秩序に、そして無限に増殖する巨大な階層都市。
都市コントロールへのアクセス権を失った人類は、防衛システム「セーフガード」に駆除・抹殺される存在へと成り下がってしまっていた。
都市の片隅でかろうじて生き延びていた「電基漁師」の村人たちも、セーフガードの脅威と慢性的な食糧不足により、絶滅寸前の危機に瀕してしまう。
少女・づるは、村を救おうと食糧を求め旅に出るが、あっという間に「監視塔」に検知され、セーフガードの一群に襲われる。
仲間を殺され、退路を断たれたその時現れたのは、“この世界を正常化する鍵”と言われている「ネット端末遺伝子」を求める探索者・霧亥(キリイ)であった。

原作:弐瓶勉『BLAME!』(講談社「アフタヌーン」所載)
総監修:弐瓶勉
監督:瀬下寛之
副監督/CGスーパーバイザー:吉平”Tady”直弘
脚本:村井さだゆき
声の出演:櫻井孝宏 花澤香菜 雨宮天 山路和弘 宮野真守 洲崎綾 島﨑信長 梶裕貴 豊崎愛生 早見沙織
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
配給:クロックワークス
製作:東亜重工動画制作局

守屋秀樹(もりや・ひでき)

アニメーションプロデューサー
ポリゴン・ピクチュアズ 取締役/エグゼクティブプロデューサー。現在、世界で注目を集めている同スタジオが “日本的なセルルックCGアニメーション”に参入するきっかけを作った人物。主なプロデュース作品は『シドニアの騎士』シリーズ、『亜人』シリーズ、『BLAME!』など。ポリゴン・ピクチュアズは、あの『GODZILLA(ゴジラ)』の劇場アニメ3部作を鋭意制作中とのこと。