2010/12/25(土)より公開する映画『アブラクサスの祭』の脚本を担当した佐向 大さんに、これまでの生い立ちやクリエイターへのアドバイスなど、お話しを伺いました。

このまま世界は終わってしまうんだ!

自分自身ではほとんど記憶がないのですが、小学生にあがる前の頃によくウソをついていたらしいです(笑) 例えば、火事が起こっているわけでもないのに「火事だ!」とか、「両親は死んじゃった」とか。今考えると、ひょっとしたら、今の“ものがたりをつくる”という職に就いたことに関係しているのかもしれませんね。

小学生の頃は動物や昆虫が好きで、活字いっぱいの本よりも図鑑をよく読んでいました。まあ国語の成績は比較的よかったです。

中学生になっても本や漫画を読まないかわりに、新聞だけは毎日読んでいました。特に国際面をよく読んでいたんですが、 新聞を読むようになったきっかけは、はっきり覚えてます。

イメージ当時、レーガン元大統領とゴルバチョフ元大統領の首脳会談をテレビで観てからなんですよ。冷戦時代のときで「このまま世界は終わってしまうんだ!」と本気で思い込んで、いつ“最後の日”を迎えるのか怖くて怖くて、新聞やテレビを毎日のようにチェックしていたんです。

大学は芸術学科に進学しました。そこの映画研究会に一瞬入ってみたもののすぐ辞めてしまいました。

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映画を撮ることになったきっかけは、当時バンドをやっていたんですが、ある日、酔っ払った仲間の姿がおもしろくて、これを映像におさめたいって思ったのがはじまりです。

仲間を役者にして映像を撮ることにしたんですが、“脚本”なんてどうやって書いたらいいか全然わからなくて、とりあえず、原稿用紙にシナリオを書きました。

撮影はもちろん、編集も友人の自宅のビデオデッキにカメラをつないで全部自分でやりました。 手探り状態で完成までだいぶ時間がかかりましたね。

その作った映像をたまたまコンクールに出品したら入賞しちゃったんですよ。 当時審査員をされていた大島 渚監督らに褒められて嬉しくなり、その後、映画宣伝の仕事に就きながらも自主映画は撮っていました。

中学生が黒澤映画なんか観にくるはずがない

友人と初めて観に行った映画は、南アフリカ・ボツワナ共和国の砂漠に居住する地球最古の人類と呼ばれるブッシュマンの生活を描いた『ミラクル・ワールド/ブッシュマン』。あまりの面白さに翌日、まだ見てない同級生に熱弁しました(笑)

中学生くらいの頃、一番好きだったのは「レディー・ホーク」という中世のヨーロッパを 舞台としたファンタジー映画でした。

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初めて一人で映画を見に行ったのもその頃で、たまたま学校が半休の日に、見に行くことにしたのですが、そのとき見た映画は、黒澤 明監督の『乱』。チケット売り場でなかなか“中学生”だと信じてもらえなくて大変でした。空手をやっていて体が大きかったせいか、それとも、「中学生が平日の昼間に黒澤映画なんか観にくるはずがない」と思われたのか・・・(笑)

最後の一日にすること

エロビデオをぜんぶ捨てます(笑)

何年後かに再会した感覚

イメージ脚本の仕事をもらうようになったきっかけは、自主映画を見てくれた、あるプロデューサーから脚本を書いてほしいと頼まれたときからです。

自分で脚本を書いて、監督をするのももちろん好きなのですが、脚本だけの仕事だと、自分が書いたものを他の監督が撮るわけで、できあがった作品をみると全く違うものになっているところがおもしろいですね。

直近で関わった『アブラクサスの祭』もみんなで方向性を決めてから書いたのですが、監督はこういうふうに撮るんだと感心するシーンがありました。これって、まるで、自分の子供が他の人に育てられ、何年後かに再会したとき「ずいぶん大きくなったなぁ」という感覚に近いと思います(笑)

“客観的視点”を持つ

自分の知っている範囲の世界で閉じこもらず、いろんな人に会ったり、いろんなところへ行ったり、視野を広げてほしい。

当然自分が知らないテーマの脚本を書かなきゃいけないこともあるので、普段からいろんなことに興味をもって“引き出し”をたくさん持ったほうがいいと思います。

それから、“自分がつくりたい作品”よりも、あくまで一観客として“自分が観たい作品”をつくっていきたいと常に考えています。“客観的視点”を持って作品づくりに取り組むことが大切なのではないでしょうか。


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イメージ
12/25(土)よりテアトル新宿ほか 全国順次ロードショー
10/9(土)より福島県先行ロードショー

監督・脚本:加藤直輝

原作:
玄侑宗久『アブラクサスの祭』(新潮文庫刊)

エンディングテーマ:「ハレルヤ」(曲レナード・コーエン)
歌=スネオヘアー+ともさかりえ

出演者:
スネオヘアー、ともさかりえ、本上まなみ
小林薫、村井良大、ほっしゃん。

かつて元ミュージシャンだった禅僧・浄念は、音楽への狂おしい思いからノイズが聞こえるようになり、ウツ病患者として入院した過去を持つ。
禅僧になっても自分の「役割」を考え続けているが、なかなか思うように答えはでない。

そんなある日、とある講演会で大失敗して落ち込んだ浄念は、自分の中で音楽への想いがたち切れていなかったことに気付く。この町でライブをやりたいと、強く思いはじめる浄念。住職の玄宗は良き理解者だが、地元ライブには困惑顔。妻の多恵も大反対。

そんななか、ある事件をきっかけにショックを受けた浄念は自分をコントロールできなくなるが―果たして浄念は答えを見出すことができるのか?本作品にちりばめられているのは「自分」をまるごと受け入れる“禅”的ヒント。

悩める浄念の生き方に心ゆさぶられる、まっすぐな映画が誕生しました。

正式招待決定!サンダンス映画祭2011
「ワールドシネマ・ドラマティック・コンペティション部門」
この映画際は、クエンティン・タランティーノやジム・ジャームッシュ、ロバート・ロドリゲスなどの映画監督や、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や 『SAW』が発掘された映画祭です。

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