仮想現実ヘッドセット「Rift」がOculus社から発表された約5年前、VRが世の中を変える夢のハードになると考えていた人はごく少数でした。
2017年現在そんな考え方もVR元年と謳われた2016年を経て、多くの人々に受け入れられてきています。
では、2017年のVR市場はどうなっていくのか、世の中に普及させていくには何が必要なのか、気になる部分を一体型VRデバイス「IDEALENS」の訴求を進めるクリーク・アンド・リバー社VRセクションのセクションマネージャーを務める渡辺愛美氏に伺いました。

渡辺愛美氏渡辺愛美氏
株式会社クリーク・アンド・リバー社
VRセクション セクションマネージャー

VR市場はどんな状況ですか?

まず去年SIEさんから、PlayStationVRが発売されたというのが1つ大きなニュースとなっていたかと思いますが、PSVRはまずPS4が既にある家庭向けに発売されたデバイスで、他のVRハイエンドデバイスより比較的手が届きやすいという部分で家庭への普及に対する1つ目の突破口になったかなと感じています。
とはいえ、やはりPS4を持っていない人々からすると、PS4本体を買って、PSVRも買って、そしてプレイするためにはソフトも買わなくてはならない。なんてことを考えると、「少し興味がある」程度の人々にとっては、まだまだ手軽ではないのかなとも思っています。
幸い弊社はアイデアレンズ社のHMDを取り扱わせていただき、プラットフォーム開発からコンテンツ開発まで幅広く事業を展開しておりますので、本当に多くのお客様からVRを実装するためのご相談を幅広くいただいています。
皆様熱心で、この革新的な技術をどうやったらビジネスに繋げられるのか、今年に入ってからもご相談は増えており、大きな案件の話もいただくことがございますので、市場は非常に盛り上がっていると思いますね。

弊社は少しでも多くのお客様にまずはVRを体験していただきたいという気持ちから、テーマパークだったりインターネットカフェ、レンタルなどBtoCの領域から力をいれ、VRを知っている人をもっと増やしていこう!という活動を進めていります。

特に盛り上がってる業界はありますか?

VRをご覧になって面白そうと言っていただける業界は多数あるんですが、面白いだけではなかなかマネタイズまでは難しいと考えています。なので、例えばVRを導入すると新しいビジネスモデルを構築できるとか新しい顧客に満足いただけるとか、コストダウンが期待できるとかの視点で見ていただいてる方が初期VRの発展のキーになりそうです。
VRをアミューズメント分野で使用するニーズも多く、ハウステンボス様でも弊社開発のコンテンツが複数実装されています。クリーク・アンド・リバー社では特に多くの方にVRを触っていただけるような展開には積極的に協力させていただいております。まだまだVRを触ったこともない方や初期のあまりよくないコンテンツで酔ってしまって印象が悪い方もいらっしゃいますので、まずは皆様に良質なVRコンテンツを体験していただきたいです。

据え置きとモバイルどちらが主流になると考えていますか?

最近のVR業界では据え置きでもモバイルでもなく、一体型に集約されていくのではないかと言われることが多くなりました。
モバイルはそもそも電話をするための端末で、やはりチープなVR体験になってしまうし、据え置き型のPCなどハイエンド機と接続して行わなければならないものは煩雑です。
しかしその2つの中間となる一体型であれば、手軽さと一定のクオリティを両立できるので、VRを体験する際はこれ1台で良いという一体型が主流になっていくのではないでしょうか。
少し未来の話になりますが、一体型の延長上にメガネやコンタクトレンズのような夢の端末があると考えています。

VRに適したコンテンツジャンルはなんですか?

「適した 」という言葉が、面白いものを作りやすいジャンルなのか、単に成功しやすいジャンルなのかでだいぶ変わると思いますが、我々はまず面白いものを作る前にマネタイズが出来る環境作りが大切だと考えています。
マネタイズ可能な環境さえ整えば、自ずと面白いコンテンツも増えていくと考えていますので、まずはビジネス寄りの目線、つまりBtoBでの普及がアーリーステージだと考えています。

マネタイズという意味で現実的なジャンルを考えると、企業内の育成システムなどはVRを導入することで大幅なコストダウン、効率化を促進することが出来るため、そのような視点から自然とマネタイズは現実化していくのだと思います。
課金モデルのゲームのようにBtoCになっていくにはまず、BtoBのステージをクリアしなければ始まらないといったところでしょうか。

ゲームだから!とかビジネスだから!という部分にこだわらず、バーチャル体験を導入して世の中のどこが変わるのか、そんな議論を我々はよくしております。
それがホラーみたいなエンタメの切り口という場合もあれば、安全教育という危機対策や、接客シミュレータという教育コンテンツになるのか、日々考えています。

マネタイズのイノベーションを起こす?

スマホが出た当初もゲーム業界では、こんなの儲からない、コンシューマゲームに勝てるわけがない、なんて言われていた時期もありました。まさにマネタイズの壁に直面していたんです。そこでGREEさんやDeNAさんが新しいビジネスモデルを作り出した時点から、スマホゲームの市場は大きく跳ね上がり、多数のゲーム会社もスマホ課金ゲームにどんどん参入していったんですね。
そうやって競争が始まったことによって、マネタイズの壁をみんなで超えていったんです。
今は当たり前のように使われいてるスマホゲームにもそんな歴史がありましたし、VRもそんな可能性が詰まっている業界だと考えているので、他社さんがどんどん参入してこられるように少しでもノウハウを蓄積し、壁を超える準備をしておかなければならないと思っています。

不動産なんかは業界全体的にVRによって変わるものが見えているなーという印象です。
例えば分譲住宅などを売るためにモデルハウスを1棟立てたりしてますが、あれって1億とかかかっていて凄くコストが高いんです。ただ3Dデータもすでにあるので、まさにVRを使えばモデルハウスを作る費用の大幅なコストダウンが見込めますよね。
他の業界だと医療系なんかはシミュレーターという1台何百万円もするような機材を大学病院とかが買って使っていたという文化があるので、それが手軽なヘッドマウントディスプレイで簡単にシミュレーションできるとなれば圧倒的なコストダウンに繋がるのでマネタイズの想像が付きやすいかと思います。

2017年、注目度は益々増大!期待大!

VR、AR、MRに大注目していて、その技術でイメージ出来る世界で実現したいことは沢山があると思います。
そこの期待や需要をどう次に繋げていけるかというのが我々がやらなければいけないことだと考えています。
その一般化するタイミングが来ればTECHメディアなどで言われている20兆円市場が訪れるのではないでしょうか。