広告の出稿を検討している顧客にとって、不安材料となるのは「出稿して効果が出るのか不明瞭なこと」です。費用対効果がある程度想定できないと、アクションを起こす決断を下せない場合もあるでしょう。

広告効果シミュレーションは、顧客に対して広告出稿の提案をするうえで重要な役割を果たします。説得力があり、精度の高い広告効果シミュレーションは顧客からの理解も得られやすく、広告出稿時の参考として大いに役立つはずです。

では顧客に満足していただける広告効果シミュレーションを行うには、どんなことを意識すべきでしょうか。また、シミュレーションと出稿結果で乖離が出た時の対処法、広告効果シミュレーションの効率や質を高めるコツについても紹介します。

成果達成に向けた予算算出と想定がシミュレーションの目的

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広告プランナーとしてまだ日が浅い方の場合、なぜ広告効果シミュレーションが重要なのかを業務を通して実感できていないケースもあるでしょう。
広告効果シミュレーションの主な目的は、「顧客の求める成果達成のために必要な予算の算出」と「成果想定」の2つです。それぞれについて具体的に解説します。

まずは広告出稿の目的を明らかに

広告効果のシミュレーションを行う前に、まずは顧客が広告出稿により、どんな成果を達成したいのかを明らかにしましょう。なぜなら達成すべきゴールが分からないままシミュレーションをスタートしても、成果の良し悪しは判別できないためです。

そもそも広告出稿とは、顧客が目的とする成果を達成するために行う施策です。たとえば、バレエ教室の主催者が顧客で「生徒をもっと増やしたい」と考えているならば、「生徒数の増加・獲得」が達成したい目的になります。さらに具体的に「月間で5人増やしたい」という要望が明らかになったとしたら、その達成を前提にどのくらい広告を出稿すべきかシミュレーションします。まずは広告効果シミュレーションを行う対象である「顧客が求める成果」を明らかにすることが大前提です。

成果達成に必要となる予算算出を行う

広告効果シミュレーションの目的の1つは、顧客が求める成果達成にどの程度の予算が必要となるのか算出することです。

先のバレエ教室の例の場合、生徒5人/月獲得するために必要な予算はいくらになるかを求めます。この際、類似業種や類似条件によって実際に配信した実績値を参考にすると、より高い精度で予算を算出できるでしょう。顧客提案の際も、実例があると伝えやすくなります。

予算内で見込める成果のイメージをつかむ

広告効果シミュレーションにおけるもう1つの目的は、顧客に予算内で見込める成果のイメージをつかんでもらうことです。

実際のところ、広告出稿に割ける予算は限られています。そのため、予算額では成果達成を見込めないケースも少なくありません。顧客に対して現状の予算でどの程度の成果を見込めるのか、そのイメージをつかんでもらうのも、広告効果シミュレーションの大切な役割となります。

再びバレエ教室の例において、予算が10万円までとなった場合、その広告費で月間何件のコンバージョン獲得が見込めるのかを伝えます。また、現状の予算より多く/少なく投資する場合は成果がどう変わるかという予想を伝えるのも良いでしょう。顧客側での予算見直しや、成果数値の引き下げが行われるきっかけになるためです。

シミュレーションと実際の効果が異なる場合の対処法

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広告シミュレーション後に行った広告出稿の結果が大きく乖離し、成果を出せない場合もあります。しかし、そうしたケースは決して珍しいことではありません。そのため、広告プランナーはそうした事態を対処する術を身に付けておくことが大切です。

まずは顧客への事前説明を徹底する

実際の広告出稿の結果と広告効果シミュレーションの内容が異なることは、むしろ頻繁に起こり得ることです。しかし、「言っていた内容と違う」と、顧客からクレームを入れられるケースもあります。こうしたトラブルを避けるためにも、広告効果シミュレーションを行う際には事前説明を徹底することが大切です。

そもそも広告効果シミュレーションは、広告出稿の成果を保証するものではありません。あくまでも予算の算出やイメージをつかみ、具体的な配信設計に活かすための参考情報です。実際の広告効果については、配信サイトの状態や競合の存在、季節要因など、さまざまな要素によって大きく変動します。もちろんそれらを加味してシミュレーションしているとは言え、成果を保証できるわけではありません。

顧客には事前にそうした目的と実態を分かりやすく説明し、「広告シミュレーションは広告の成果保証ではないこと」をご理解いただくことが、トラブル回避のために大切です。

結果の分析と提案こそが大切

もちろん広告効果のシミュレーションと実際の広告出稿結果に大きな乖離があった場合は、リカバリーすることが大切です。出稿結果を多角的に分析して、なぜそのような結果になってしまったのかを明らかにしましょう。そのうえで、次回出稿時の改善点について顧客に分かりやすく丁寧に説明することが、信頼を得るためには重要になります。

一方このタイミングで「シミュレーションと乖離が出た理由」のみを顧客に伝えるのはあまり良くありません。事前説明を受けていたとは言え、顧客側からすれば、それはただの言い訳にしか聞こえないためです。

結果を真摯に受け止め、改善点を洗い出して前向きに提案することが、顧客からの信頼獲得の近道と言えるでしょう。

広告効果シミュレーションの作成を効率よく行うためのポイント

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広告効果シミュレーションをスムーズに作成できれば、業務は効率化されますし、顧客への説得力も増します。また、本質を捉えることでシミュレーション自体の精度も高まることが期待できます。広告効果シミュレーションの作成を行ううえでのポイントをご紹介いたします。

顧客と認識のすり合わせを徹底する

広告効果シミュレーションの作成を効率よく行うためには、顧客との間で認識のズレがなるべくないようにすることが大切です。たとえば前述のように「広告効果シミュレーションは成果保証ではないのか?」と誤解されてしまうと、乖離があった時にクレームへとつながることでしょう。そうなると再提案は難しくなりますし、広告効果シミュレーションをした意味もなくなります。

広告効果シミュレーションの目的は、予算算出や成果イメージをつかむことであることを必ず伝えて、トラブルを回避しましょう。

過去データの蓄積・雛形の準備をする

過去のデータを数多く蓄積することは、広告効果シミュレーションの効率を高めます。たとえば、シミュレーションによって成果イメージをつかむ場合、類似業種や類似条件などのデータがあれば、ある程度の雛形・たたき台になってくれるため便利です。クライアントへの提案時にも、実例がバックボーンにあることで説得力が増し、広告出稿を行う際に役立ちます。

また、Excelなどで予算算出用に計算シートの雛形を作成しておけば、業務スピードがアップします。広告プランナー同士で共有すれば社内全体の効率アップにもつながりますし、さらなるブラッシュアップで使いやすいシートとして精度を高められるでしょう。

仮説思考力をアップさせる

広告効果シミュレーションでは仮説思考力が重要です。仮説思考とは、自身の知識とはっきりしている事実をもとに、有力な仮説を立てて検証するものです。

広告効果シミュレーションの作成もまさに同じ流れで進めることが大切です。実績値や内部・外部要因という事実と、自身の知識や経験を活かして導き出し検証された仮説は、シミュレーションに説得力を持たせてくれます。仮説思考力が高まれば高まるほど仮説の精度が増すため、よりクオリティの高いシミュレーションの作成・広告出稿の提案を行うことが可能です。

仮説思考を駆使して適切なシミュレーションを

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【「広告効果シミュレーション」についてのまとめ】

  • 顧客の求める成果を理解したうえでシミュレーションの目的を果たす
  • 成果との乖離に慌てるのではなく、次につながる分析と提案が信頼につながる
  • シミュレーションの精度を高めるためにも仮説思考のトレーニングを

顧客にとって広告出稿は、求める成果の達成が目的です。その前提に立ったうえで広告効果シミュレーションは行われなければいけません。必要となる予算の算出、顧客が用意できる予算内で見込める成果のイメージを、広告効果シミュレーションによって顧客に分かりやすく説明しましょう。

また、実際の広告結果とシミュレーションの乖離は珍しいことではありません。だからこそ、顧客とトラブルにならないよう、事前に意識と認識をすり合わせしておきましょう。そして、結果をじっくり分析し、次の広告出稿に向けて前向きな提案をすることが信頼を得るために大切です。

より精度が高く説得力のある広告効果シミュレーションを行うためには、仮説思考トレーニングも効果的だと言えます。常に施策に対して起こり得ることを想定、提案できる広告プランナーになるうえでは、仮説思考を駆使した適切なシミュレーションが欠かせません。