マーケティングを成功させるうえで、基礎中の基礎とも言われるのが「ターゲティング」です。ターゲティングとは、自社の商品・サービスなどのプロダクトにおける顧客層となる対象を絞り込む戦略を意味します。そのため、Webマーケッターがマーケティング施策を成功させるうえで、ターゲティングは不可欠だと言えるでしょう。

ではなぜ、マーケティングにおいて顧客対象を明確にすることが有意義なのでしょうか。本記事では、Webマーケッターになってまだ日が浅い方向けに、ターゲティングが重要視される理由や、戦略立案や分析の流れ、ターゲティングを行ううえでのポイントについて紹介します。

マーケティングでターゲット設定をするそもそもの目的

ターゲティングの画像

ターゲティングをする主な目的は、マーケティングの効率化です。

自社の商品・サービスなどプロダクトをビジネスとして成立させるためには、顧客の存在が不可欠となります。しかし、すべての個人や企業がそのプロダクトに興味があったり、顧客になり得えたりするかと言えば、必ずしもそうとは言い切れません。だからこそ、プロダクトを真に望む個人や企業を想定し、集中的にアプローチをかけることが効率的なマーケティングにつながります。

Webマーケッターの役割は、顧客になりそうなリード(見込み顧客)を獲得して営業にパスすること。つまり、マーケティング施策によって商談の機会を増やすことです。
自社の商品・サービスに興味を持っている可能性が高いリードを集めてパスできれば、営業担当が商談を成功させる確率を高めることにもつながるでしょう。顧客化したい層を明確にし、そうではない層と区別するという意味でも、ターゲティングが重要になります。

テレビや新聞、雑誌などのマスメディアの広告手法であれば、広告費をたくさんかけて広く一般的にプロダクトを周知するという手法が主流でした。TVCMがその最たる例です。
しかし、インターネットが普及した現代では、やみくもに広告を打っても費用対効果があるとは限らず、コストがかさむだけで望んだ成果を挙げられないケースもあります。

一方でインターネットであれば、年齢や性別、職業、家族構成、生活スタイル、居住地、収入といった要素でセグメント(市場細分化)することが可能です。
市場を明確に理解・把握したうえで、もっともニーズが高いと予想されるターゲットに絞り込むことで、マーケティング効率を高めることにつながります。
つまり、ターゲティングは、営業、販促、集客、広告などあらゆるマーケティング戦略における起点となるのです。

また、ターゲティングを行って市場の傾向や特性を理解することで、顧客のニーズや欲求などの顧客視点(ユーザー視点)の把握にもつながります。
顧客理解が的確だとプロダクトの改善にもつながるうえ、より良い施策の提案にも結びつきます。「どんな施策が有効か」という議論がマーケティングの本質ですが、ターゲティングがされていなければ、そもそもその議論にすら至らないことを肝に銘じておきましょう。

ターゲティングの実践・分析までの流れ

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ターゲティングを実践するうえでは、「STP分析」の概念を理解することが大切です。

ターゲティングは「STP分析」の3つの要素のうちの1つ。ターゲティングは顧客視点を把握するうえで重要ですが、それはあくまでもマーケティングの一環です。市場分析を行う場合の流れも同時に把握しましょう。

STPとは、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の頭文字を取った略語です。それぞれが下記の役割を担っています。

【STP分析の3要素】
1.セグメンテーション:数値的なデータをもとに市場を細分化し、構造を把握する
2.ターゲティング:細分化された市場の、どの部分を勝負の対象とするかを決定する
3.ポジショニング:対象のニーズに対して、どのような価値を提供するのかを決める

まず、年齢、性別、居住地、過去の行動データなどに基づいて市場を細分化し、各グループ(セグメント)の特性を調査します。ターゲティングの土台となるプロセスと言えます。

次に、細分化されたセグメントの中から、自社のプロダクトを宣伝・販売するターゲットを選定。その際に「自社の強みを活かせるかどうか」や「ライバル企業よりも優位に立てるかどうか」を考慮しましょう。

そして、選定したターゲットにとって「関心を持ってもらう存在」になれるよう、立ち位置(独自の魅力・役割)を明確にする流れになります。

なお、STP分析をする際のセグメンテーションにおいては、「6R」というフレームワークの活用がおすすめです。

6Rとは?
Realistic Scale(有効な市場規模)、Rate of Growth(成長性)、Rank/Ripple Effect(顧客の優先順位/波及効果)、Reach(到達可能性)、Rival(競合状況)、Response(測定可能性)のことを指します。

それぞれの指標を総合的な幅広い観点で見極め、市場理解に努めることがその後のターゲティングにも活きるはずです。

顧客の本質的課題の追求には「具体化」が重要

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ターゲティングにおいて顧客視点を的確に捉えるためには、ハード面(表面的課題)以上に、ソフト面(本質的課題)を深堀りしましょう。
ターゲットをより具体化するためのペルソナ設計(顧客のイメージ像の定義)においても、しばしば「顧客は、こんなスペックの商品・サービスを求めているはずだ」というイメージや印象で考えがちです。本質的に「どんな課題を顧客は持っているのか」を常に追求する必要があるでしょう。

マーケティング担当者には「自社のプロダクトが、どう世の中の不便・不満の解消に役立つのか」を徹底的に考え抜く胆力が求められます。
そのため、顧客の本質的なニーズ・欲求を理解せずに、商品・サービスのマーケティング施策を行っても、望む成果をあげられない可能性が高いでしょう。それゆえにターゲティングにおいても、表面的な課題にとらわれずに本質的課題を追求するためには、いかに「具体化するか」が重要になります。つまり、「具体化=本質に近づけるか」が鍵となります。

本質的な課題を知るには起こった事実よりも、その要因を追求することが重要です。
それにはマーケティングツールなどを活用してデータを集めるのも大切ですが、シンプルな対応としては顧客に直接ヒアリングすることが重要になります。顧客への丁寧な聞き込みやリサーチを通して仮説を立て、それを顧客への提案に加えることで答え合わせをする――。そうした顧客との細かい認識のすり合わせを繰り返すことで、課題をより具体化することができるでしょう。

ターゲティングはいかに具体化できるかが勝負

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【「ターゲティング」についてのまとめ】

  • ターゲティングは、顧客化したい層とそうではない層の取捨選択に役立つ
  • マーケティングにおいては「STP分析」で正確に市場や顧客理解に努めることが大切
  • 本質的な課題を掘り下げには「具体化」が不可欠であり、そのためには丁寧なヒアリングが基本

ターゲット設定の際は、「具体化」が重要なことを改めて認識しましょう。ぼんやりと「もしかしたら、このような人がいるかもしれない」という曖昧なスタンスで詰めが甘いターゲティングを実施すると、マーケティング施策の精度も下がりがちです。マーケティングの成否は、ターゲティングの精度によって決まると言っても過言ではありません。「いかに具体化するかが勝負」と心得て、丁寧にターゲティングを実施しましょう。