VRアーティスト、せきぐちあいみ。
日本国内にとどまらず世界で活躍する彼女がクリーク・アンド・リバー社(以下、C&R社)に所属する理由、せきぐちあいみのクリエイターとしての考えや展望について、インタビューしました。

せきぐちあいみとC&R社の関係

――せきぐちさんとC&R社は、どんな関係性なんでしょうか?

C&R社の担当エージェントさんには、報酬面などのお仕事の交渉、スケジュール管理などのマネジメント全般をやって頂いていますね。タレントと芸能事務所の関係のようなイメージです。

――ということは、仕事の案件を取ってくるのもC&R社がやっているのでしょうか?

そうですね。ただ仕事に関しては、クリエイターとエージェントが一緒に広げていくものだと思っています。
私は自分のSNSで作品を発信して、自分に仕事が来るようにPRしています。それをより広げてくれるパートナーという感じです。

――2016年からVRアーティストになれましたが、C&R社との関りはじめたのもその頃ですか?

実はもっと前からお世話になっていまして、VRアーティストになる前はYouTubeのクリエイターとして映像制作のお仕事に関わらせて頂いていました。
ただ、なかなかうまくいっていなかったのが正直なところでした。
やがて私はVRアートにハマっていったのですが、とてもありがたいことに、その路線変更にも担当エージェントさんが柔軟に対応してくれたんです。
「お前はこれをやれ!」ではなく、クリエイターのやりたいことを尊重して、その方向性が上手くいくように助けてくれるんです。

実際、「いいじゃない、VRアーティストとか名乗ったもの勝ちだよ、まさにブルーオーシャンだよ」って・・・サポートの内容を私向けにカスタマイズしてくれたんです。
私のようなVRアーティストのような珍しい仕事って、これから増えていくと思うので、たぶん自分のやることが既存の枠にハマらないと思っていても、C&R社は相談にのってくれる場所だと思っています。

クリーク・アンド・リバー社所属、せきぐちあいみ氏

クリエイターは価格の交渉が得意ではない

――C&R社には、具体的にどんなことをサポートしてもらっているのでしょうか?

海外のお客さんとのやり取りをしてくださったり、私の方向性やセールスの仕方について、市場のニーズを考慮して戦略を立ててくださったりします。
クリエイターって、自分一人の力だけでやっていくのってメチャクチャ大変なんです。
もし私が一人で、海外の方とやり取りをしていたら、肝心の作品の制作に時間が割けなくなってしまいます。あとはメディア出演など、芸能系のことには全面的にお任せしており、とても助かっています。
C&R社には多くのエージェントが在籍していますが、私の担当エージェントはメディア出演、芸能系のことは多分、社内で一番、知見や対応力があると思います。

あとクリエイターって、自分の作品の価値を決めたり、自分の方向性を決めてやっていくのが一番難しいんです。例えばお仕事の報酬についても、その価格が適正なのかどうか、自分で判断することができません。
お仕事って、自分の状況やタイミングで「今後のためにこの仕事はお金じゃない!」とか「この仕事は工数も考えると、これくらいが適正なのでは?」とかあるじゃないですか。

そういうことも担当エージェントと話し合って、自分の方向性を決めたうえでやっていかないとできません。意思疎通が必要なんですが、そこが全然ブレていないところが凄いなと思っています。

――確かにクリエイターやフリーランスが最初に躓くのが、自分の作品や成果にどれぐらいの価格がつくのか分からないってことなんですよね。

本当にそうなんです!そういう交渉とかメチャクチャ大変です!たまに「交渉なんて自分でやればいいじゃん」って言ってくる人がいるのですが、相場も知らないのに、そんなことできないですよ!(笑)
実際、私もC&R社にお世話になる前は、お客さんの言い値で仕事を受けるしかありませんでした。

クリーク・アンド・リバー社所属、せきぐちあいみ氏

VRを見ていると、現実世界の見え方も変わる?

――アートって、ちょっと抽象的だったり知識が必要だったりで、少し敷居が高い印象があります。せきぐちさんは、アートはどういうものだとお考えですか?

アートって、観る人の想像力を刺激する役割もあると思うんです。想像力を刺激する点において、VRアートはその良さを最大限に活かせると思っています。

VRはその人を全く別の世界に連れて行ってくれるものなので、もしかしたら観る人の人生を変えてしまうような体験を届けることができるかもしれない。「アートとは、その人の人生を変えられるもの」だと思っています。

――せきぐちさん自身もアートと出会って人生が変わった経験があるということでしょうか?

わたしはVRに出会って人生が変わりましたね。「空間が作れる!楽しい!」という純粋な気持ちでスタートしました。

もともと立体造形が好きではあったのですが、VRアートでは360度立体の世界が作れるようになったので、この活動を続けているうちに、普段の生活でも周りの景色の見え方が変わったんです。

――それは面白いですね。仮想空間を見ることで現実空間の見え方が変わったんですね。

はい。以前は、景色を見るときも自分の目の前の景色だけを注意深く見ていましたが、VRアート360度を見る意識がついたことによって、床とか地面も見るようになったんです。

庭園とか神社が好きなのですが「ここに生えている雑草がすごくいい!」とか「ここの木の枝振り(※)がこういう感じだから、ここの日差しの差し方がいいんだな」とか、様々な角度から見るようになったんです。

※枝振り:樹木の枝の伸びている様子。枝の伸び具合や格好など

一つのことをいろんな角度から見る習慣って、大事だとは分かりつつも、なかなか身につくことではないですが、VRをやっていると自然と身につく気がします。

ちなみにいま私が作っているのはメタバース空間です。仮想空間に神社を作ってるんです。

日本の先人の方々って、空間を作ることについて、すごい技術と感覚を持っていたと思っています。今の私はVRデバイスによって、オブジェクトを自由に回転させたり大きくさせたりするだけで、空間を作れるのですが、現実世界の岩とか木とかって、VR空間みたいに簡単に言うこと聞いてくれないじゃないですか。当時の方々は自然と調和しながら作品を作っていたんです。

「昔の人は何千年も前に、こんな素晴らしい空間を創ることができたのか」って、感動しています。その感動を少しでも多くの人に体験してもらえるように、いま私はその空間をVR上に作って、その空間に誰でも入れるようにしたいんです。

リアルとバーチャル、どっちも好き!!

――たしかに私たちは神社や世界遺産を見たとき、オブジェクトに感動しているのではなく、周囲の空間や雰囲気、匂いなどに感動しているのかもしれません。せきぐちさんは「空間を見る側」から「空間を創る側」になったことで、気付けたということでしょうか。

そうなんです。ただ、VRはリアルに敵わない部分はたくさんあるですよ。その場所の空気感って、実際に足を運んだからこそ得られるものだし、私もリアル大好きだし、実際にその場所に行くことが大好きなんです。

神社の厳かな空気感とか凛とした雰囲気って、現場に行かないと分からない。
一方、VRだからこそできることもある。普段なら入れないところまで入れるとか、宮彫(※)とかも現実ではできない彫り方も表現できる。

※宮彫:神社仏閣,宮殿の扉(とびら),欄間等建築に伴う装飾のための彫刻。建築の一部として遠望的効果をもたせるところに特色がある

だから「リアルとバーチャル、どっちが良い?」ではなく、それぞれに良さがあるから、両方が高め合っていくのが良いと思っています。

――なるほど。ということは、せきぐちさんのオススメのVRの楽しみ方としては、VRコンテンツを見た後に現実のコンテンツを見て、その解像度の違いや表現の違いを楽しむということなのかもしれませんね。

はい!(リアルもバーチャルも)どっちも素晴らしいですよ!

あと、もう一つ考えていることとしては「メタバースで、どうやって思いやりの心を広められるか?」です。メタバースといっても現実と似た世界なので、現実世界やネットで起こる誹謗中傷や犯罪も横行してしまうと思うんです。
日本人としての和の心や思いやりの精神があってこそ、本当の意味でメタバースが広がるんじゃないかなと考えています。

クリーク・アンド・リバー社所属、せきぐちあいみ氏

キャッチーな話題からでもVRアートを注目してもらえれば

――最近、せきぐちさんは「NFTは儲かるのか?」「VRは本当に流行るのか?」などの話題でテレビなどのメディア出演されることも多いように思えますが、そういったお金やテクノロジーの話だけでなく「もっと私の作品そのものが注目されて欲しい!」とは感じませんか?

VRの映像ってテレビの画面では良さが伝わりきらないので、(どんな切り口でも)いろんなメディアで紹介して下さるのはありがたいと思っています。

キャッチーな話題は大切だと思っていて「NFTによって、デジタルデータがそんな高値で取引されるのか!」とか「VRがこれからの未来なんだ」って興味を持ってくれた方の中で、さらに気になった方が深堀してくれれば良いと思っています。

――私は番組を拝見していて、VRとかNFTのことよりも、せきぐちさんの作品のことをもっと知りたいと感じました。

確かにお金の話だけをして番組が終わっちゃうと「あっ、もっと言いたいことあったのに」とは思いますけど、そうですね。

奇しくも、2019年の終わりに、担当エージェントに、「来年以降はこのカタチ(海外や国内でパフォーマンスをしていく)ではスケールしていけない。2020年は制作にもっと比重をかけないと・・・」と言われていました。
そうしたらコロナ禍でほぼ全てのスケジュールが白紙になって否が応でもそんな状況になって、ある意味、予言的中でした。

実は(先日ニュースになった)NFTアートについては、自分の判断で出品したんです。
出品しても売れるかどうかわからなかったのと、出品のためにウォレットを使う必要があり、C&R社のウォレットを使うわけにもいかないので、すべて自分で手続きして出品したんです。そうしたら想定外の価格で売れてしまって。

――落札価格は1300万円でしたね。

そうなんです。落札後すぐにC&R社の井川社長に連絡して「こんな価格で売れて、しかもニュースにまでなってしまいました。でも今後もC&R社にも、担当エージェントさんにもお世話になりたいのですが、大丈夫ですか?」って話したら「そんなこと、気にしなくて大丈夫だよ!自分のことだけを考えていいよ」と言ってくださって、とても安心したんです。

――本日はいろいろと赤裸々に話していただいてありがとうございました!今後、C&R社にせきぐちさんのようなクリエイターが増えて、コラボ等ができるようになると面白そうですね。

そう!それやりたいんです!エージェントさんに相談しなきゃ!私も他のジャンルのクリエイターさんとコラボレーションできると嬉しいです。

クリーク・アンド・リバー社所属、せきぐちあいみ氏

インタビュー・テキスト:小川 翔太/撮影:姜 泰寿/企画:ヒロヤス・カイ/編集:CREATIVE VILLAGE編集部