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~飛躍するクリエイター~ 第56回 曽山 郁 MA

曽山郁はMAアシスタントとしての業務をこなしながら、MAミキサーを目標に日々勉強中。保育士になるために短大に入り、卒業後、改めてテレビ業界を目指した。その決断は正しかったと今は確信している。
人間性も、そのときの精神状態も、すべてが仕事に現れる。
いいMAミキサーになるために必要なのは、豊かな人生経験と、そこにある“音”をよく聴き、感じることだと知った。

 

■ 保育士とお笑いと

小さい頃からテレビにずっと親しんできました。特に高校・短大時代はお笑い番組ばかり見ていました。勉強も好きで結構真面目にやっていました。高校卒業後は昔からの夢だった保育士を目指し短大に進学しました。一方で、お笑いが大好きで、ヨシモト∞ホールなどにも通い詰めるうちに、だんだんお笑いのライヴやイベントの裏方として立ちたいという思いも芽生えてきました。
 保育士の資格も取得して短大を卒業したんですが、もうひとつのあこがれだったお笑いのライヴやテレビ業界への心残りもありました。それでやっぱり挑戦してみようと、日本工学院専門学校 クリエイターズカレッジ 放送・映画科に進みました。私は蒲田の出身で、昔から学校の評判は聞いており、エンターテインメント業界を目指して勉強するなら日本工学院しかないと思っていました。社会人向けの説明会もあって参加しやすかったですし、体験入学にも行って雰囲気も掴め、安心して入学することができました。
 最初は制作志望でした。でも入学してすぐに映像業界の仕事をひと通り体験し、最終的に制作担当に進むとしても、ほかの技術を知っていればプラスになるはずだと考えました。それで技術コースを選びました。あとは正直、消去法です(笑)。カメラや照明はセンスや体力的に自信がなく、一番しっくりときたのが音声でした。信頼できる先生もいらっしゃり、楽しく学ぶことができました。

 

■ 正解のない難しさ

1年生の夏休み前から音声コースに進みました。バンド演奏の収録実習に、声優・俳優科の人に出演してもらってのドラマやラジオドラマ収録など、いろいろなことをやらせてもらいましたが、音声の奥深さに触れ、どんどん興味がふくらんでいきました。日本工学院の2年間はあっという間でした。イベント運営にも引き続き興味があったので、文化祭実行委員として仲間たちといろいろな行事を企画・運営したり、本当に楽しかったです。
 卒業後の進路はイベント制作のほうか、音声に進むかで悩んだんですが、最終的に現在所属しているネオテックに決めました。MA志望ではありましたが、希望の職種につけるわけではないと最初から言われていたので、照明でも編集でも送出でも、配属された場所で頑張ればいいやと覚悟して入社しました。ですが、運良く希望通り音声に配属され、秋ごろからMA研修が始まりました。
 今現在、MAのアシスタントとして様々な番組に関わっています。MAの仕事の流れは、編集後の映像と音声をProTools等のDAW上に展開し、編集点の段差をスムーズにしたり、ノイズを除去するなどといった整音作業の後、どの音を活かすかを選別、音響効果さんが用意してくれた曲や効果音をつけ、ナレーション収録、最終調整後にミックスダウン。試写等のチェックを経て納品、オンエアという流れになります。私は主に整音作業を担当しています。
 仕事はものすごく楽しいですが、一番大変なのは、正解が決まってないところです。整音中に「今のフェードはもうちょっと短くして」とか、「逆に長くしてほしい」とミキサーさんに指示されても、なんでそうしなきゃいけないんだろう?って、フェイドアウト、フェイドイン、カーブのかかり方など、その音の感覚、聴感を掴むのがすごく難しくて、まだまだわからないことだらけです。ただ私なりに、「このシーンでは何を伝えたいのか」ということをしっかり掴むよう努めています。人は話していると大抵語尾の音量が落ちていくんですが、それを聴きやすくするためにレベルを上げて、より話している人の内容が伝わるようにしたり、番組の意図や構成を理解してやることが大事だと思っています。

 

■ いろいろな音を聴く

よく言われるのは、「いろんな音を聞いておけ」ということです。人生経験が音にも出ると。いろいろな場面で周囲のさまざまな音を聴いて、感情と音のリンクをちゃんと体験しておけということだと理解しています。楽しいこと、悲しいこと、そういえばこの曲を聞いていたなとか、あのときのあの音が忘れられないってことってありますよね。そういう自分が体感したものを「音声」という立場でどう表現して、いかに感情の琴線に触れられるかがこの仕事の肝だと思っています。
 私が尊敬している先輩は音に対する強いこだわりがあり、必要だと判断したら効果さんがつけてくれた音のほかに自分で効果音をいろいろ工夫して準備したりします。技術やセンスはもちろんですが、番組をよりよくするための姿勢が本当にすごいと思います。音に正解はないとはいえ、ダメな音というのはあるみたいで、先輩にも「このダサいミックスは何?」って言われることがあって。正解はないけれど、確実にダサい音というのはあると(笑)。バランスなどの問題だと思うんですが、難しいです。インタビューひとつにしても聴きやすくするためにどんなイコライジングをするか、機材の使い方もミックスのバランス感覚も、いまは先輩の仕事を一生懸命聴いて、見て、全部吸収していきたいと思っています。
 先日、BSの番組を先輩のサポートのもと初めてミックスダウンをさせていただきました。すごく勉強になりましたし、うれしかったです。自分の仕事が作品として残って、テレビで放送されて、家族や友だちにも見てもらえるというのは大きいです。この仕事がこんなに楽しいのは、そういったやりがいも感じられるからだと思います。
 MAは放送に出る直前の作業ですから、ついに番組になるという瞬間に立ち会える仕事でもあるんです。一緒に確認していたディレクターさんが「あー、やっと番組になった……」って言っていたりと……。音として正解がないぶん難しいけれど、どこまでも追求できる。この仕事に出会え、先輩にも、職場にも恵まれ、いまこの現場で頑張れていることに感謝しています。

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曽山 郁(そやま・いく)

MA


1991年東京都出身。高校卒業後保育士を目指し短大に入学。その後、2011年日本工学院専門学校 クリエイターズカレッジ放送・映画科入学。2013年に放送制作技術を手がけるネオテックに入社し、MAオペレーターとしてNHKの番組に多数参加する。

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