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ぐんまちゃん

ゆるキャラグランプリ優勝の「ぐんまちゃん」!県の職員がデザイン

【ご当地キャラの仕掛人に訊く!】地域マスコットから国民キャラへ――ぐんまちゃん

ぐんまちゃん

ぐんまちゃん

「ゆるキャラ」には、地域や企業などがオリジナルキャラクターを作り、地元や製品のPRに役立てようという、ローカルマスコットとしての本来のミッションがある。しかし、「ゆるキャラ」は、その名が示すとおり、マーケティング的な本来の意図との微妙なズレ、独特なローカル色が逆に人気の源泉でもある。いわば戦略のミスマッチがゆるキャラたる所以でもあるのだが、この構図がひとまわりして、結果的に地域PRやマーケティングにつながっているという興味深い現状もある。

この連載では、自治体のゆるキャラにスポットをあて、地域でのゆるキャラの位置づけや個々の役割、どのように観光や産業に活用しているのかを掘り下げる。そうすることで、他の自治体や企業のPR戦略に役立つ情報をお届けできればと企画された。

記念すべき連載第1回は「ぐんまちゃん」だ。インタビューは、群馬県総務部広報課 ぐんまイメージアップ推進室 室長 新井徹氏、同 情報発信係長 富澤恵子氏が応じてくれた。

ぐんまちゃんはどのようにして生まれたのか

2011年18位、2012年・2013年3位、そして2014年に「ゆるキャラブランプリ」で悲願の全国1位を獲得したキャラクターといえば、丸顔が愛らしいポニーの「ぐんまちゃん」。グランプリにおいて着実に順位を上げ、いまや群馬の顔として全国にも浸透したぐんまちゃんだが、群馬県としては、その戦略をどのように考えているのだろうか。

まず、ぐんまちゃんの生い立ちだが、サンリオのキャラクターを彷彿とさせるタッチのキャラクターは、平成6年に開催された第3回全国知的障害者スポーツ大会「ゆうあいピック群馬大会」のマスコットキャラクターとして県の職員によってデザインされ、「ゆうまちゃん」という名前は新聞で公募された中から選ばれたものだという。「資料が残っていないのですが、おそらく『ゆうあいピック』にちなんで『ゆうまちゃん』が選ばれたのだと思います。(富澤氏)」

新しいマスコットゆうまちゃんは、すぐさま県民の心を掴んだようだ。ゆうあいピック終了後もさまざまなイベントでマスコットとして活躍することになる。平成8年には第9回全国スポーツ・レクリエーション祭「スポレクぐんま」 、平成10年第36回技能五輪全国大会「技能五輪 ぐんま’98」、平成16第17回全国高齢福祉祭群馬大会「ねんりんピックぐんま」、平成20年第25回全国都市緑化ぐんまフェア花と緑のシンフォニーぐんま2008「都市緑化ぐんまフェア」と、群馬県内で開催された主な全国大会のほとんどに参加し、イベントを盛り上げていた。

ゆうまちゃんが2代目ぐんまちゃんを襲名

県を挙げての大会だけではない。みんなに愛されるマスコットとして地元を盛り上げるため、県内で行われる各種イベントや地域のお祭りなどにも積極的に参加していた。このころには県民の中で「ゆうまちゃん」はすっかり県のマスコットとして定着し、人気者となっていた。

では、現在の「ぐんまちゃん」はいつからこの名前で呼ばれるようになったのだろうか。「じつは『ぐんまちゃん』という名前は、さらにさかのぼること昭和58年の国体群馬大会のときに作られた別の馬のマスコットキャラクターに使われていたものです。平成20年、東京銀座に「ぐんま総合情報センター ぐんまちゃん家」をオープンさせるとき、ゆうまちゃんは正式に「二代目ぐんまちゃん」を襲名しました。(富澤氏) 」

さらに平成24年12月には「群馬県宣伝部長」に任命され現在に至る。なお、記事ではこれ以降、とくに断りなく「ぐんまちゃん」とした場合、「ゆうまちゃん」時代を含む「二代目ぐんまちゃん」を襲名した現行のキャラクターを指すこととする。

ぐんまちゃんが「馬」であることの意義

以上が、ぐんまちゃん誕生から現在までの主なプロフィールだ。ここからは若干、夢をこわすような話になるが、お二人にはもう少し突っ込んでPR戦略や県の考え方などを聞いてみた。

ぐんまちゃんは、県が主催する全国的なイベントのマスコットキャラクターとして公募で選ばれたものだ。古くは1980年(昭和55年)のモスクワオリンピックの「ミーシャ」に代表されるように、大きなイベントにマスコットキャラクターの存在は欠かせないものだ。これらはあくまで大会マスコットであり、そのために設定される。大会終了後はお役御免となるのが通例だ。

しかし、群馬県では、ゆうあいピックのあともぐんまちゃんを地域のイベントなどで活用することを決定する。県名にも使われている馬(ポニー)のキャラクターは確かに群馬県を代表するキャラクターにふさわしい。特定の地域や特産品に由来したものの場合、県のキャラクターには設定しにくい。「ふなっしー」が「なし」と「船橋」に特化したキャラクターだったため千葉県もしくは船橋市の公認キャラクターにならなかったように。

逆にいえば、県内の特定地域や特産物に特化しない「馬(ポニー)」をキャラクター化できたことが、県民すべてに親しまれ全国イベントでも使いやすいキャラクターになっているといえる。

また、さまざまなイベントに参加しやすいように、ぐんまちゃんは「変身」が特技のひとつとなっている。サンタさん、医者、コックさんバージョンなどそのパターンは36種にも上る。よく「キティちゃん」は仕事を選ばない(コラボ企画のバリエーションが広い)と話題にされるが、ぐんまちゃんは考えられたバージョンに対応する柔軟性を備えている。

運用方針も「ゆるく」可用性重視

県の方針もぐんまちゃんの運用は「可用性」を重視したものになっている。県としては、ぐんまちゃんを地元の活性化や事業に役立ててほしいからだ。商品にぐんまちゃんのイラストを利用したり、グッズなどを制作するための「利用許諾申請」は、「ぐんまイメージアップ推進室」が窓口となっている。

特定商品に限定したような使い方、その商品を直接宣伝するような使い方、政治的な目的等、県が定める規定に違反していなければ利用許諾を出しているという。商品のラベルにぐんまちゃんを入れたり、Tシャツ、ストラップ、ぬいぐるみなどを作ることができる。利用許諾は県外の企業が出すこともでき、許諾条件も県内企業と同じである。

イベントなどにぐんまちゃんを呼びたいときも推進室に申請する。イベント内容など確認して問題なく、スケジュールの調整ができればぐんまちゃんは来てくれる。県外のイベントも同様に申請可能で、呼ぶことができる。

じつは群馬県では、貸出用のぐんまちゃんも用意しており、ぐんまちゃんは全部で13体ほどあるという。ゆるキャラによっては、着ぐるみの貸出は認めていないところもあるが、ぐんまちゃんは「運用マニュアル」が整備されており、しぐさや行動についてマニュアルを守るという前提で着ぐるみだけ借りることができる。

イベントやプロモーションだけでなく、ぐんまちゃんに関連した事業も生み出している。群馬県では群馬のイメージアップキャラバンなどを企画することがあるが、これに関連した民間への委託事業(公募)も行っている。県内のイベント会社などが受注している。

キャラクターの管理と利用推進のバランス

人気が出てくると、キャラクターのイメージ保持や悪用防止など、どうしても運用が厳しくなりがちだ。これはやむを得ない側面もあるが、結果として地元のイベントに呼べない、事業に活用できないといった弊害も生む。いわゆる「ゆるくないゆるキャラ」になってしまう。ぐんまちゃんはブランド維持と利用促進をうまくコントロールできているといっていいだろう。

ちなみに、ぐんまちゃんに関連した利用許諾の件数は平成26年度でおよそ2700件。これは許諾件数であって、グッズや商品、関連の看板やポスターなど加えるとその総数はさらに多くなる。

ぐんまちゃんに関する事業、施策、活用促進は県が管理しているが、その部署は群馬県総務部広報課 ぐんまイメージアップ推進室だ。じつはぐんまちゃんの管理が広報課に移ったのは平成27年度からだという。それまでは、企画部という部署がぐんまちゃんの担当部署だった。県として群馬全体のPR・プロモーション、活性化にぐんまちゃんを効果的に使っていきたいという想いがあるようだ。いわば県民のキャラクターから全国のキャラクターへのステップアップだ。

「全国的にはまだまだマイナーなイメージが拭えない群馬県ですが、今後は『来たい・買いたい・住みたい』群馬県のアピールにぐんまちゃんも活躍してもらいます。(新井室長)」

県のマスコットであるがゆえの成功

取材で判明したのは、ぐんまちゃんは、初代まで遡ると、マスコットキャラクターとしての歴史は非常に長いということだ。その役割は、地域を盛り上げたり、群馬をアピールすることと、昔も今も変わっていない。ご当地ブームやゆるキャラブーム以前に生まれたキャラクターだったことが、結果的に、その後の親しみやすさや利用のしやすさに結びついているように思える。

そう考えると、ぐんまちゃんの現在の成功も必然だったのかもしれない。今後もぐんまちゃんは群馬のために活躍していってくれるだろう。

《中尾真二@HANJO HANJO》
(2015年05月29日 RBB TODAY)

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