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革新生む「デザイン的思考」 社内の全プロセスに

札幌市生まれ。サンフランシスコ州立大学デザイン学科在学中からウェブサイトのデザイナーとして活躍。卒業後の2004年にブランディング・ユーザーエクスペリエンスデザインを手掛けるビートラックスを設立。趣味はバイク、テニス、ロック音楽。

札幌市生まれ。サンフランシスコ州立大学デザイン学科在学中からウェブサイトのデザイナーとして活躍。卒業後の2004年にブランディング・ユーザーエクスペリエンスデザインを手掛けるビートラックスを設立。趣味はバイク、テニス、ロック音楽。

 技術と流通の発展で多くの似通った製品が世の中に氾濫し、差別化がより一層難しくなってきている。その様な状況下でもヒットする製品に共通している点はユーザー視点からみたデザイン性の高さであろう。

 米アップルの製品だけでなく、最近のスタートアップ(ベンチャー企業)が発売する製品で人気が高いものは全てデザイン性が高い。ここ10年でビジネスに及ぼすデザインの価値が倍になったとのリサーチ結果も出ている。

 機能性が重要視された時代は終わり、これからはデザインとエクスペリエンス(これまでになかった体験)が差別化を生み出す。ひとつの分野の中で機能が類似した製品が乱立している。こうした状況下で差別化要因となるのは、価格かデザインしかない。

 価格で勝負するのであれば、最も安くなければ勝負にならない。おのずとそれ以外の製品はデザインで勝負しなければならなくなる。

 単純に見た目が良いだけでは消費者から満足感を得るのは難しい。その製品を知るきっかけから、購入プロセス、利用した際に得られる感情、そしてカスタマーサポートに至るまで、全ての顧客との接点においてユーザーに優れた利用体験を提供しなければならない。その利用体験を設計するのもデザインの役割である。

 企業の最終的な競争力もデザイン力に左右されるだろう。デザインをどれだけ重要視しているかが企業の運命を左右するのだ。近年、米国をはじめとする先進国では「デザイン的思考」を社内の全てのプロセスに採用し、他社との差別化を図るうえで大きな成功をしている企業が増えている。

 社内で一貫したデザインプロセスを採用することで部署を超えた創造的な活動が可能になり、これまでにないコラボレーション(協業)が生み出される。例えばこのような流れだ。

 デザインプロセスの第1ステップとして、組織が抱えている問題を明確にする。次に各部署が問題への意識を共通化できるようにする。最後にマーケットを分析し、今までにない解決策を皆で考える。

 会計ソフト「QuickBooks」を展開する米イントゥイット社では、デザイン的思考を採用し、社内カルチャーを一新した。

 同社は問題解決に対してデザイン的思考を採用した。スタッフ全員にデザイン的思考を浸透させることで素早いスピードでモバイルアプリをリリースした実績もある。部門間のコラボレーション達成はデザイン的思考のアドバンテージのひとつとして考えられる。

 この例からもわかるとおり、新たなコンセプトを作り出すプロセスにおいてイノベーションが生まれやすくなる。恐らく世の中で「イノベーション」と考えられている製品やサービスの多くが、デザイン的プロセスに起因する部分が大きいと考えられる。ユーザーエクスペリエンス(利用者にこれまでになかったと感じさせること)で劣ってしまうと、人々がイノベーションの例としてあげる可能性は低くなる。

 日本ではまだデザイナーの社会的地位が高くないようだ。米国ではビジネスにおいてデザイナー職はエンジニアと同じくらい重要なポジションになりつつある。日本でもデザイン思考をいち早く取り入れた企業が今後は活躍していくと思われる。

(2015年07月13日 ブランドン・ヒル(米ビートラックスCEO)
[日経産業新聞2015年7月7日付])

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