ギャグマンガ「激辛!カレー王子」が、『最強ジャンプ』(集英社)で好評連載中の加茂 誠。
やさぐれていた高校時代、マンガ家にあこがれ日本工学院専門学校に入学したものの、なんのあてもなく迎えてしまった卒業の日。このままでは終われない――どうすれば読んでもらえるかを必死で考え描いた作品が、編集者の目に留まった。
「編集さんとの出会いもそうですが、偶然や幸運が重なり、いまがある」。現在、カレー王子とともにマンガ家人生爆走中!

■ 人生が狂い始めた高校時代

父が厳しい人だったので、勉強もしっかりやっていましたが、外で遊ぶことも多く、アクティブな子供でした。マンガは小学生の頃から描いていました。マンガ家になりたいというより、ただ好きで描いていたんです。父と姉は絵がうまかったんですが、僕は微妙(笑)。だけどとにかく絵を描くことが好きで、落書きもふくめたくさん描いていました。
中学生では剣道部に入っていたんですが、中学3年で部活が終わってから、友だちとゲームをしたり毎日遊ぶようになり、勉強を怠けるようになりました。そこから人生の歯車が狂い始めたんです。志望の高校に落ち、滑り止めで受けた私立高校に通っていたんですが、なんかつまらなくて。2年生のときに日本史で1を取り、追試もサボったところ、親も学校に呼び出され大騒ぎになりました。3年に進級はできたんですが、夏休みに再度日本史の追試をやると言われ、本当に嫌気がさして、そこから高校に行かなくなりました。
それで通っていた高校を辞め、通信高校に行き始めました。そこで仲良くなった友だちが、将来のことを真面目に考えている奴で、進路の話になったときに、卒業後は日本工学院専門学校に行くと言うんです。人生の暗雲立ち込める中、彼と出会えたことが、唯一ラッキーなことでした。それで僕も彼について、日本工学院の体験入学に参加し、入学を決めました。高校で日本史を取ってなかったら日本工学院に行ってなかったかもしれないし、そしたらマンガ家にもなってなかったかもしれない。本当にアップダウンの激しい人生です。高校時代は自暴自棄になり、父が高校2年のときに亡くなりましたので、母にはずいぶん心配をかけてしまいました。いまは母がだれより僕の活躍を喜んでくれています。

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©加茂誠/集英社

「激辛!カレー王子」 最強ジャンプにて連載中!ある日、山田タカシ少年の前に突然現れたカレー王子(自称)。シュールで不条理、だけどなぜか憎めないカレー王子に翻弄されるタカシ少年。特設ページではWeb限定書き下ろし「激辛!カレー王子」も読める!

 

■ ギャグマンガで運命を切り開く!

ずっと、「NARUTO -ナルト-」や「ONE PIECE」にガンダムとか、好きなものや影響を受けてきたものを詰め込んだバトルファンタジー系のマンガを描いていました。だけど1年生の修了制作で16ページの完結ものを描いたんですが、初めて自分の絵はそんなにうまくないってことに気づいたんです。周りにすごい人たちがけっこういて、心打ち砕かれた感があって。絵じゃ勝てない、じゃあ、何ができるのかって考えたときに、ギャグもののほうがいいんじゃないかと思いました。それでファンタジー系をあきらめて、ギャグマンガを描き始めました。僕の中に「Dr.スランプ」で注目されて「DRAGON BALL」で大成功した鳥山明さんの存在が大きくあったんです。ステップアップのためにまずギャグもの、スキルを上げ満を持してファンタジー系に、僕は鳥山明さんと同じ道を辿るんだ!って(笑)。
初めて描いたギャグマンガの修了作品が、予想以上に先生たちに評価され、蒲田校で出している卒業・修了作品集の『CALLME』に掲載されました。それがうれしくて、本格的にギャグマンガを描き始めました。日本工学院に入って一番よかったことは、自分の作品に対する意見や感想を先生から直に聞けたことです。講師で来ていた有名なギャグマンガの先生にネームを見せ、「もっとお笑いについて考えろ」と酷評され、迷走したこともありましたが。でも卒業間際にある先生から、「『天才バカボン』の警官なのにすぐ発砲する本官さんは社会問題になった。それくらい議論も巻き起こすようなものを描いたほうがいいんじゃないか」とアドバイスされ、それで少し道が開けた気がしました。
忘れもしない2011年2月14日、バレンタインデーの日に、初めて週刊少年ジャンプ編集部に描き上げた卒業作品を持ち込んだんです。そのとき作品を見てくれた編集さんが、いま『最強ジャンプ』で僕の「激辛!カレー王子」の担当さんなんですけど、そのときは「フーーン」って感じで。なんとか名刺だけはもらえたんですが、そのまま何の進展もなく、卒業の日が来てしまいました。

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©加茂誠/集英社

声優の声でマンガが楽しめるVOMICにて「激辛!カレー王子」配信中!注目度急上昇中で、さまざまな人気キャラクターとのコラボ企画も目白押し。もうカレー王子から目が離せない!!

 

■ カレー王子が舞い降りてきた

卒業後はファミレスで深夜のバイトをしながら、マンガを描き続けました。高校時代に次ぐ暗黒時代でした。やっと5月に作品ができ、以前対応してくれた編集さんに見せに行きました。このままでは終われないと、いろんなギャグマンガを必死で研究し、1ページで笑いが取れる構成に作風を大きく変えました。いきなり間違い探しを入れたり。違いを探せって絵がふたつ並んでるんですけど、実は同じ絵で、「間違っているのはいまこの時間、このマンガを読んでることだ!」とか(笑)。1ページ目にキャラ紹介を全部入れたり、読者の質問コーナーを勝手につくったり、全編通して主人公がほぼ出てこないとか、編集さんに興味を持って読んでもらえるような工夫を盛り込みました。それが意外とウケたんです。あの作品が僕の転機でした。
編集さんに気に入ってもらい、次回作のネームを考えていたら、編集さんが『最強ジャンプ』に異動することになり、それで僕も改めて『最強ジャンプ』のための小学生向けのギャグマンガを考え始めました。何度かアイデアを出したんですけど、キャラが弱いとボツになり、夏の間ずっと悩んでいました。もう編集会議に間に合わない・・・・・・追いつめられながらファミレスで夜中バイトしていると、フッとカレー王子が舞い降りてきたんです。
その「激辛!カレー王子」のネームが通り、『最強ジャンプ』秋号で、読み切り7ページでデビューしました。アンケート結果もまずまずだったようで、「次回も載ります」「マジですか!?」「次も」「エッー!」「次も」って感じで続いていきました。6月号あたりで、「激辛!カレー王子」7本立てをやり、それが好評だったようで、やっと編集部にも認めてもらえたような気がします。いまは毎月、毎月、いろんなムチャ振りをされ、応えるのに必死ですが、カレー王子共々可愛がってもらっています。ただ、いまだに正式に連載だとは言ってもらえてなくて。「ここまで来たら、もう連載ってことでいいんじゃないか!」と、勝手にひとりで納得して開き直っています(笑)。

激辛!カレー王子」は、れっきとした“最強ジャンプ連載作品”です!
(最強ジャンプ編集部)

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©加茂誠/集英社

コミック『激辛!カレー王子』待望の第1巻大好評発売中!
「中心読者である子供たちはもちろん、大人たちも驚かせたいんです。大人になるとマンガをじっくり読まなくなる人が多い。だから、パラパラめくったときに、エェ!って、思わず手が止まるようなテクニックをたくさん仕込んでいます」

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