クリエイティブ業界の注目情報や求人情報などを発信する、クリエイターのための総合情報サイトです。
interview_general_header

第2回「ヒントはサンフランシスコにありました」

2009/05/18 インタビュー

連載の初回では、仕事で培ったノウハウ、デザインやコピーライティングなどのクリエイティブスキルなどをつかってNPOを支援するしくみ、サービスグラントのことについて、少しだけ触れました。

今回は、このサービスグラントというしくみを、筆者が2005年初頭に日本で実験的に始めようと思ったきっかけをご紹介したいと思います。

もともと、自分自身、アースデイマネーという地域通貨のプロジェクトを2001年にスタートさせるなど、NPOと市民とをつなぐしくみづくりにずっと関心を持っていました。

2005年までは、株式会社日本総合研究所という会社に勤めていて、仕事のなかでも、こちらは国や自治体などをクライアントとして、地域通貨をつかった地域活性化の企画提案や、NPOの成功事例を研究する調査事業などに関わってきました。

サービスグラントとの出会いは、日本総研での仕事の一環として、NPOの資金調達に関する事例や手法を検討する調査業務があり、2004年3月頃、サンフランシスコを訪問し、いくつかのNPOにヒアリングをしたのがきっかけでした。

本当に偶然だったのですが、たまたま訪問してヒアリングをさせてもらったNPOの人が、ヒアリングを終えたころに「そういえば、来週からホームページが新しくなるからチェックしてね」と言ったのです。
「へえ、リニューアルするんですね?」となんとなく切り返したら、 「そう。タップルートっていうところが作ってくれたのよ」と返ってきました。

耳慣れない単語だったので、綴りを何度か聞き返して「Taproot Foundation」とメモ。

帰国して、ヒアリングメモをまとめながら、この団体名を検索してみると、いきなり、なんともスタイリッシュなホームページ(http://www.taprootfoundation.org/)が目に飛び込んできました。

「Foundation」と聞くと、日本語では「財団」と訳されるし、どうも、重厚で伝統のある団体という先入観があったのですが。

ホームページには、タップルートが手掛けるサービスグラントのしくみについて、具体例を織り交ぜて紹介してありました。そんな中に、地元の雑誌で取り上げられた記事が紹介されており、その記事を読むと、タップルートのサービスグラントを、「ホワイトカラー・ボランティア」という表現で紹介していました。

その記事によると、代表のアーロン・ハーストという人物は、もともとIT系の企業に勤めていたが、2001年にタップルートを創設。
彼のコメントには、ボランティアが盛んなベイエリアでも、デザインやITのスキルを生かしたボランティアは「まったく手つかずの未開拓の沃野」とありました。

うーん、気になる・・・。
ということで、その年の5月、兎にも角にもタップルートを訪問してみようと思い、再びサンフランシスコに向かいました。

代表のアーロン・ハースト氏は、自分と同い年の1974年生まれ。
サンフランシスコの中心部、ユニオンスクエアから2ブロックほどのアクセスのいい場所にある、天井の高い事務所で1時間ほどお話を聞かせてもらうことができました。

彼の印象としては、非常に実務的で、まったく無駄なことをしない、というタイプの人物に見えました。受け応えも簡潔明瞭。こちらが長々と質問をしても、答えは一言とかで終わってしまうようなことも。(まあ、これは、自分の英語力の問題かもしれないのですが。笑)

メールのやり取りも同様で、すごい短い! でも、必要なことが書かれている、という感じ。
とにかく、何でも必要最小限を的確に、ということが徹底されています。

タップルートでは、当時でも年間で60件以上のサービスグラントをNPOに提供していましたが、これは、相当に高い生産性がなければ実現できるものではありません。そういう生産性も、彼の、何事もショートに、何事も的確に、というワークスタイルがベースにあるのだと感じました。

ちなみに、彼の給料は、2004年当時で年収85,000ドル。就業時間は朝8時から夜8時ごろまで。土日は休み。そんなライフスタイルです。(向こうのNPOの給与水準は、日本と比べ物にならないぐらい高い。CEOならだいたい6万~12万ドルの範囲だそうです。)

アーロンを訪ねたその日の晩、たまたま、あるチームが始まるキックオフミーティングが開かれるということで同席させてもらいました。

そのチームが応援するのはLGBTQQという括りで表現される、性的な志向がいわゆる“普通”と異なる人をサポートするNPOのブランディングのプロジェクトでした。

マーケティング会社から来た女性がリーダー役を務め、広告会社や通信会社の社員、そして、WEBデザイナーなど6人が集まり打ち合わせ。簡単な自己紹介に始まり、プロジェクトの概要を事務局から伝えてからはフリーディスカッション。でも、最後に、だれがどんな作業をするかを一覧でホワイトボードに書き出してぴったり2時間で終了。効率的な会議。貴重な経験でした。

翌日から、サービスグラントを受けたいくつかのNPOにも訪問して、ヒアリングを行いました。
一つ印象に残ったのは、バークレーにある障害者を支援する団体を訪問したときのこと。

アメリカのNPOでも、サービスグラントに参加するような企業人との接点は、想像以上に少ないということを力説されていました。サンフランシスコという街は、NPOカルチャーが浸透している街で、企業人とNPOとの距離はそう離れていないのでは、という先入観があったのですが、そんなことはないのだそうです。

だからこそ、サービスグラントの取り組みは、非常に貴重であり、「普段決して出会うことがないような人とつながりをつくってくれている」ということでした。

「ウチの事務所に来て、こんな中古家具とかを見ながら“funky office!”と言って喜んでいるわ。彼らには珍しいみたい」とか。

そうか。
アメリカでも、NPOと企業人とは、近くにはいるけれども、交わりあっているわけではないんだ・・・。
そう聞くと、ちょっと安心するというか、NPOの存在がまだまだ社会の中でマイナーと思われる日本でもサービスグラントをやれる可能性があるのかな、という気もしてきました。

短期間の滞在でしたが、おぼろげな印象はつかめました。
それから約半年後の12月、はじめての説明会を開催。 翌2005年1月から、試験的なプロジェクトをスタートさせることになります。

ここからのお話は、次回の連載で。

【お知らせ】
サービスグラントLOUNGE SPECIAL開催!
4年半の活動を経て、サービスグラントは「NPO法人」として新たなスタートを切ります。
NPO法人のお披露目となる交流イベントを開催。

5月27日(水)19:00-22:00、六本木のMUJI studio
参加費は500円(1ドリンク付き)です。定員150名。

サービスグラントを知る場として、また、よきネットワーキングの場として、お気軽にご参加ください。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://svgt.jp/event.php?id=10

■サービスグラント
http://svgt.jp/

 

sagaprof

嵯峨 生馬

NPO法人サービスグラント代表


東京大学教養学部卒。日本総合研究所の研究員として、ICカード、決済、ポイントプログラム、地域通貨、NPOなどに関連する調査研究業務に従事。
2001年、渋谷を拠点とする地域通貨「アースデイマネー」を共同で設立。
2003年よりアースデイマネー代表に就任。
2004年、出張で訪問したサンフランシスコでサービスグラントを知り、その年の暮れに日本で「サービスグラント」を立ち上げ。
以来、進行中も含めて22のNPO団体に対してホームページやパンフレット等のサービスグラントを提供。

関連記事