山外翼は大人気バラエティ「アメトーーク!」のADとして奮闘している。気づけば18日間家に帰ってなかったり、体重が激減していたり、使うひまがないので貯金だけは増えていたりする。「好き」に囲まれ、「好き」に悩まされ、「好き」に忙殺される。それでも大好きなお笑いが生まれる場所にいたい。「ずっと寝ないでやっていて体力的に辛いこともあるけど、どんなに大変でも本気で辞めたいと思ったことはないんです」山外の学生時代を知る日本工学院八王子専門学校の高沢敦博教諭は言う。「ほかの人とリズムが違うんです。異色を放ってましたね。最初は無口だったし、みんなを引っ張って前に出るタイプでもないから、一見やる気なさそう・・・・・・と思いきやまったくそんなことなくて。何かをやるぞーってときには、必ず手を挙げているんです」山外はブレることのない、不滅の「好き」を持っている。それをつくり手にとっての「才能」という。

 

■ お笑いオタクです

「アメトーーク!」(テレビ朝日)のADを2007年4月からやっていま す。子供の頃からお笑いは大好きでした。よく見ていたのは「笑う犬の生活 -YARANEVA!!-」(フジテレビ)や、「爆笑オンエアバトル」(NHK)もめちゃくちゃ好きで、毎週録画して全部保存していました。ホントお笑いオタク。お笑いと、あとプロレス・格闘技大好きっていうすごく偏った人間なんです。
中学生になってからは番組の観覧にも行くようになりました。ADになれると決まったときから、一番やりたかったのは「アメトーーク!」だったんです。でも希望者も多かったし、経験者じゃないとダメだって言われていた。それで、「ロンドンハーツ」の面接で加地(倫三)さんに会ったときに、加地さんは「アメトーーク!」の総合演出でもあるから、「加地さんのこと見たことあります!『アメトーーク!』の観覧には何度も行ってますから!」ってアピールしたんです。そのことを加地さんが覚えていてくれて、「アメトーーク!」のADが足りないってなったときに、「あいつでいいじゃん」ってことになった。結果的に観覧がすごくプラスになりました。
最初から大学に行く気はありませんでした。高校卒業してすぐに働くことも考えましたが、テレビ業界で働くための勉強ができる専門学校に行ったほうがいいんじゃないかと親とも相談し、日本工学院専門学校放送芸術科(現クリエイターズカレッジ放送・映画科)に進みました。体験入学のときに、ほかの専門学校よりも学生たちが仲良くやっていて、いいなと思ったんです。
授業で番組をつくったり、「ズームイン!!SUPER」(日本テレビ)や「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」(日本テレビ)、「リンカーン」(TBS)などで制作のバイトをやったり、何かをやるってときには必ず参加してました。よかったのはたくさん怒ってもらったことです。工学院時代に怒られることに免疫力がついたから、ADになってもメゲないでやれたんだと思います。

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■ やる気があれば勝てる!

就職活動は、まずクリーク・アンド・リバー社の映像制作専門職を受験しました。1次面接は集団面接で、早稲田大学の学生と一緒だったんですが、自分のほうがやりたいことを熱く語れたし、絶対に勝ったって思いました。この世界は、やる気があればちゃんと認めてもらえるってことです。
最初1カ月だけ「ロンドンハーツ」(テレビ朝日)で、その後「アメトーーク!」に入りました。現場でも戸惑いはなかったです。覚悟してましたし、AD始めてすぐの頃の、編集場にいる先輩ADにサンダルを持っていくなんて雑用も、いま思えばフザケンナーって気もするけど、苦じゃなかったんです。でも「アメトーーク!」に入って3カ月で9キロやせました。原因はほとんど食ってなかったから。忙しかったのと、食事に行くタイミングがわからなかったんです。家に帰らないことも多かったですね。毎日局のお風呂に入って、家に帰ってもちょっと寝てまた仕事に行ってって感じで、何カ月も家のガスを使ってなくて、ある日ガス会社から「しばらくゼロミリですけど、ちゃんとガス出てますか」って手紙が入ってました。「生きてますか?」って(笑)。

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雨上がり決死隊のトーク番組 アメトーーク!
(テレビ朝日系にて木曜よる11:15から絶賛放送中)

雨上がり決死隊をMCに、同じ趣味や共通点を持つゲストが集結し、ときにあきれるほど熱くトークを繰り広げる。

 

■ やっぱり好きなんです

「アメトーーク!」はアットホームな現場で、そういった雰囲気が大事だし、それが画面にも映るというのが演出の考えなんです。スタッフも少人数で、ADが10人以上いる番組もあるけど、「アメトーーク!」はAD5人、ディレクター4人で、そのうちひとりは総合演出の加地さんで。加地さんは「ロンドンハーツ」もやっているから、本当に少数精鋭です。そのぶんやることも多くて大変ですが、それだけチャンスがある、相当スキルアップできるなと思いました。頭が回らなくて、やるべきことを忘れていたり、最初は怒られてばっかりでしたけど、いまは重要度の高い仕事を任せてもらっています。
「アメトーーク!」は編集が大変なんですが、すごくこだわりがあるし、1回の収録で多いときにはカメラ9台、スイッチングなしで全部パラで回すので、アビットに落とすだけでも2日ぐらいかかる。フォトショップで色を加工したり切り抜いたり、テロップも全部ADが打っていて、フォントもいろいろ工夫して使うし、「!」と「!」のあいだの文字間やカタカナはちょっと文字サイズを大きくするだとか、細かい決まりもたくさんある。毎週企画は変わるし、マニアックなものもあるから調べるだけでも必死で。いきなり「ジョジョの奇妙な冒険」のこととか聞かれても僕はわからないわけですよ。「グラップラー刃牙」も大変でしたし、「ガンダム」はホント難しくて、苦でした。
思い出深いのはプロレスの企画です。これまで3回やったんですが、僕はプロレス大好きだし、学生のときは年間60興行ぐらい行ってたから、「プロレスならオレでしょ」って担当させてもらったんです。だけど映像探しがめっちゃ大変で、昔の映像って検索しても詳細が出ないから実際に見るしかなくて、700本ぐらい過去の試合映像を見ました。藤波辰爾さんの「ドラゴン・リングイン」も藤波さんのタッグマッチを全部見て、それで面白いシーンをたくさん見つけたんです。それがすごくウケて、芸人さんも「面白い編集だ」って言ってくれたし、ディレクターにも「よく探した」ってほめてもらった。BBSでも「スタッフ、いい仕事するな」って。大変な思いをしながら準備して、収録して、編集やって、それで面白いものができたときは幸せだなって感じますね。ちょっとしたインサート映像ひとつにしても、“もっと面白いものを”って粘って探して、番組のクオリティを高めたいと思っています。
僕は高校時代までガラスのハートだった気がするんですけど、いまは“鋼鉄の心臓”だって言われています。喜怒哀楽が顔に出ないから、感情の起伏が人にわかりづらいようです。確かに打たれ強いし、怒られることにそんなにストレスを感じない。慣れもあるだろうけど、やっぱり好きなんです。いつかはディレクターとして、芸人さんたちに喜んで出てもらえるようなお笑い番組をつくりたい。これからもバラエティの道を突き進んでいきます。

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「アメトーーク!」DVDシリーズ
100万枚突破の大人気シリーズ。大好評発売中!

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