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『今後のクリエイターズスタンプに求められるものは何か?』 LINEコンテンツ事業部スタンプ企画チームマネージャー 渡辺 尚誠さん

スマートフォンをはじめ、フィーチャーフォンやタブレット 、パソコンを通して、24時間いつでもどこでも無料で好きなだけ通話やメールが楽しめるコミュニケーションアプリ『LINE(ライン)』。

また、LINEのメール機能「トーク」では様々なキャラクターが登場する表情豊かな“スタンプ”の利用が可能。

さらに2014年の4月より、誰でも自作のスタンプを制作して販売することができる『LINE Creators Market』が、登録を開始。クリエイターが手掛けるオリジナルスタンプの応募が殺到している今、LINEのスタンプ企画を担当されている渡辺尚誠さんに、LINE Creators Marketについてお話をうかがいました。

 

■ LINEというサービスとスタンプの誕生

img01 今や私たちの生活に欠かすことのできなくなった携帯電話ですが、フィーチャーフォンといわれるものからスマートフォンにシフトしていった時期に、会社事業の一環としてユーザーに楽しんでもらえる便利なスマートフォンサービスを立ち上げたいという思いから、方向性の一つとしてコミュニケーションについてのサービスを企画していました。

そこから、LINEが誕生した背景には、東日本大震災が大きく影響しています。震災が起こった時、通話やメールといった携帯電話の通信サービスが一切使えなくなってしまいました。メールを送っても相手に届いているかどうかわからないといった状況の中で、災害用伝言板サービスがあったものの、当時はあまり周知されていなかったので、安否の確認をとるためにはインターネットを経由した手段が有効でした。

これを機に、ユーザー同士のコミュニケーションは非常に大切だということを再認識し、一刻も早く新しいサービスをリリースしなくてはと、開発のスピードを上げ、震災から3ヶ月後の2011年6月にLINEをリリースすることになりました。ただ、当初はテキストしか送受信できないいわゆるメッセンジャーサービスでした。

© LINE Corporation

© LINE Corporation

スマートフォンに最適化したサービスにしたいという思いから、テキストだけではなく感情をもっと豊かに表現するにはどうしたらいいか。模索していく中で、それまでの主流である絵文字やデコメールに着目し、「絵文字を大きくしてみよう」という意見が出ました。

ただ単に大きくするわけではなく、従来の絵文字を徹底的に研究した結果、できあがったものが今のスタンプです。表情が豊富で感情表現に最適なものにしようと最初に誕生したのが、白い丸顔“ムーン”などのキャラクターでした。

スタンプだけでなく、無料通話機能もリリース4ヶ月後の10月のアップデートで提供を開始し、爆発的に広まり我々が想像していた以上にLINEは多くの方々に利用されています。当時は同じ様なサービスがあまりなかったからかもしれません。その後も改良を重ね、新しい機能もどんどん追加していきました。

最初から完璧なものを時間をかけて制作することよりも、まずは一旦リリースをして、ユーザーの反応を見ながら、より良いものに改良をしていくということは、LINEのアプリだけでなく、会社全体として行っています。

Webの文化自体がそうですが、サービスにおいてのスピード感というのはとても大事で、これが数ヶ月後にリリースしていたら、今のLINEはなかったかもしれませんし、遅れた分だけ他社が同様のサービスを先に開始してしまう可能性も高まります。

 

■ LINEのキャラクターについて

“ムーン”だけでなく、クマの“ブラウン”やウサギの“コニー”、ヒヨコの“サリー”といったキャラクターのスタンプがどんどん増えていったのですが、表情の豊かなものから無表情なものまで、それぞれのキャラクターの特徴を生かして様々なスタンプが登場しています。

例えば季節によって、このキャラクターにはこんな格好をさせてみようとか、こういったテイストは今までに無いから新しく投入してみようとか、常にフランクな会話の上に決めていますね。

ダイレクトな表現のものだけでなく、無表情だけど微妙なニュアンスを表してくれるものだったり、自分の今の最適な気持ちを代弁してくれるのがスタンプの役割なので、感情移入ができるものということが大前提にあります。他社が持つキャラクターだと表情や服装にもある程度の制限があることもあるのですが、自社でキャラクターを持っていると、豊富なバリエーションを投入する事もできるんです。

© LINE Corporation

© LINE Corporation

また国によっても人気のキャラクターがそれぞれ変わってきます。例えば“ジェームス”は、イタリアで人気があったり、ブラジルではマッチョな“ブラウン”が存在したりと、国や地域ごとに異なるスタンプを配信しています。

ただ弊社の中でのスタンプの概念は、キャラクタービジネスではなくベースにあるのはユーザーのコミュニケーションとして会話に登場するものなので、感情表現が最適化されていくことが第一にあります。

© LINE Corporation

© LINE Corporation

スタンプにおけるビジネス的な取り組みは2パターンあって、ひとつは広告主となる企業からお金を頂戴して、ユーザーは無料でスタンプをダウンロードできるスポンサードスタンプという取り組みと、もうひとつは各企業が持つ既存のキャラクターのスタンプを販売する公式スタンプです。

 

© LINE Corporation

© LINE Corporation

“ムーン”が代表するように、表情が豊かで大笑いしているキャラクターの方が利用頻度は高い傾向があるので、クライアントさんには可能な限りアクティブなスタンプにしてもらうようにしています。スタンプは使ってもらえればもらえるほど広がっていくものなので、それぞれキャラクターの世界観を可能な限り踏み越えて、アクティブな表情豊かなスタンプになるよう、どうしたらいいかを徹底的に考えて頻繁に打ち合わせをしていますね。

 

■ クリエイターズスタンプについて

企業と企業の取り組みだと実現できることも限られていて、自由な発想もなかなか反映できず、幅広いユーザーが求めている細かいニーズを拾い上げて実現していくことは困難な側面もありました。

国内であれば、このような表現が流行っているという事もある程度は判るのですが、グローバルとなると、例えばこの国の人達はどのような挨拶をしていて、どういった表情をしたりサインを送ったりするのか、またこのサインはNGだとか、世界各国の事情の吸い上げには限界もあります。グローバルにスタンプの表現の幅を広げて行くためにも、世界各国のユーザーにスタンプづくりに参加してもらおうと、『LINE Creators Market』という新たなサービスを立ち上げました。

また、これまでユーザーさんから、「こういったスタンプが欲しい」といった要望が非常に多かったということも一因としてあります。まずは使い易いスタンプというのが大前提にあって、幅広く使ってもらいたいというものが多い企業が作るスタンプに対して、例えば彼女にプロポーズする時に、「自分だけのスタンプを送りたい」というようなたった一人の人にプレゼントしたいから、その人のためだけに作るという私的利用や狭い範囲の利用とかでも構わないんです。むしろそういったことを実現できる場所としても共に成長できるといいですね。

© MORI MORIKO

© MORI MORIKO

クリエイターズスタンプの中には、返事をくれない彼氏を追い込むためのスタンプという狭いテーマ設定のものや、キャラクターの裏に請求書が透けて見えるものもあったり、かなり特徴的なスタンプが既にたくさん登録されています。これまで受け入れられてきたスタンプがどういったものが多いかというマーケティング上のリサーチも勿論大事ですが、クリエイターズマーケットで人気があるものは、そういった従来の概念を飛び越えてくる様なアイデアのものが多く見受けられます。

© Yoshinaga(bokuchitsu @dfnt)

© Yoshinaga(bokuchitsu @dfnt)

またクリエイターが活躍できる場として、プラットフォームを開放したという理由もあります。ある程度のマネタイズの仕組みがなければ、クリエイターとしても制作のモチベーションはあがらないでしょうし、40個という数はそれなりに大変な労力が必要になってくるで、それを乗り越えて制作していただければ、それなりの見返りは受けられる状況になっています。

現状でもクリエイターズスタンプは、想定を上回る反響になっているので、今後も幅広い方のスタンプに光をあてられるような取り組みをしていきたいと思っています。

 

■ クリエイターズスタンプを作りたいクリエイターへのアドバイス

クリエイターズスタンプは、おもしろいアイデアのスタンプであれば、世界各国のどんな方でも、企業でも個人でもプロもアマも問わず登録する事が可能です。だから絵のうまい下手は関係ないですね。まずは画像や表現に問題がないか、他者の権利を侵害していないか、最低限のガイドラインを設けてはいますが、会話で使われるものを想定したものであれば特に問題はありません。

2014年8月現在で6,000件を超えるクリエイターズスタンプが販売されていますが、スタンプをどのようなシーンで使うのか、また自分がユーザーとしてこういったスタンプがあったらいいということを想像していただいた上で、「今までのLINEにはこういうスタイルは無いよね」といった新しい概念を、逆にユーザーから提案していただきたいです。

イメージ例えば、若いユーザーが文章を一切使わずにスタンプだけで会話するといったことは、提供者側の私たちにとっても当初は想像もつかなかったことでしたし、そういった発想も含めて、スタンプの新しい表現や使われ方、また斬新なスタンプを作ってもらえるんじゃないかという期待をしています。

現在登録されているものでいうと、埋もれない工夫を施すことが第一に求められます。自分がこれまであたためてきたキャラクターで勝負するのもいいですが、そこで重要になってくるのが“オリジナリティ”です。だから何かしらターゲットを決めて作った方がおもしろいものが生まれやすいのかもしれません。

40個あるスタンプ中に“喜怒哀楽”を満遍なく投入するのはロジカルな手法としても有りですが、例えば40個すべてが哀しいスタンプだったり、そういった発想もありだと思います。

既存にありそうなものではなく、スタンプを通して新しい表現や概念を変えてくれる様なものがユーザーからは重要視され、またコミュニケーションがとりやすい内容のものかというベースになる部分は抑えつつ、作り手も使い手もスタンプでいかに遊べるかがキーポイントになってくると思いますね。

また販売後に大事になってくるのが、制作者自身での告知です。FacebookやTwitter、ブログなどで自ら宣伝をされたり、早い段階からの告知が鍵になるので、マーケティングの工夫もある程度は必要になってきます。

私たちは売れるスタンプだけを抽出したいのではなく、またグッズに向いているキャラクターを求めているわけではありません。大切なのは、いかにそのスタンプがユーザーに受け入れられてコミュニケーションを豊かにしてくれるのかどうかです。

ですから、クリエイターズスタンプをきっかけにクリエイターとして芽を出してもらえると私たちも嬉しいですし、例えば未成年の方がクリエイティブな仕事を目指すきっかけにもなるかも知れません。今後もLINEのスタンプを通して楽しめるコミュニケーションがどんどん活発化していってほしいですね。

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渡辺 尚誠(わたなべ・なおとも)

福島県生まれ。大学卒業後、雑誌社にて女性誌の編集担当を経験した後、Tokyo Girls Collectionの企画運営に従事。
2010年ライブドア(現LINE株式会社)入社。ポータルサービス、ニュース、ブログ事業を経て、LINEスタンプ事業に携わる。
現在では、スタンプに関する企画・分析業務や、国内外100社前後のアライアンスを担当。

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