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~飛躍するクリエイター~ 第22回 深澤 慎也 MA(マルチオーディオ)エンジニア

“音”により、映像の力は大きく左右される。その重要な役割を担うMA。セリフ・ナレーション・BGM・効果音などの音素材をさまざまに処理・調整し、映像にのせていく。
人一倍熱心で責任感が強く、ドラマや映画に強い想いを持っていると、周囲から期待を集めるMAがいる。深澤慎也28歳。「目指した以上は走り切らないと、とにかく形にしなきゃダメだって思ってやってきました。それでも、これまでも、いまだって挫折続きです。でもたどってきた道に何ひとつ間違いはなかったと言えます」

 

■ 監督の要求にいかに応えられるか

 現在、TBSのドラマを中心に MAを担当しています。名だたる監督(演出)やプロデューサーの方々と仕事をさせていただき、やりがいはありますが、ものすごく緊張感もあります。どのような要求が来ても、監督の一言で「こういうことですよね?」って、監督の望み通り、もしくはそれ以上のものを即座に提示しなければならない。監督の好みを知って意思疎通できないとダメだし、何を要求されるかわからない中ですぐに応えるためには何通りも引き出しをもってなきゃいけない。技術だけではダメで、どうすれば監督に気持ちよく現場に臨んでもらえるか、居心地のよい環境をつくるための総合的な気配りも求められます。そういったすべての面で、いかに監督の求めるものをちゃんと出せるか、要求を満たしているかが重要な仕事です。
 物心ついた頃からドラマとスポーツ中継を見るのが好きでした。高校で放送部に入り本格的にテレビ業界を目指すようになり、日本工学院専門学校放送芸術科(現クリエイターズカレッジ 放送・映画科)に入学しました。楽しい雰囲気やノリを売りにする学校もある中で、日本工学院の厳格さや生真面目さが気に入りました。大学進学も考えましたが、業界を目指すのであれば、1歳でも若いうちに現場に出たほうが得策だろうと思いました。実際、技術部に関してはそこまで学歴は関係ないと思います。それより性格やフットワークのよさであったり、人としての内面的なもののほうが大切です。僕が一番重要だと思っているのは、勉強するクセみたいなものです。学生時代にそれが養われていれば大丈夫だと思います。

 

■ 何かやらないとムダだ。ボーっとしていてはもったいない!

 最初はAD(アシスタントディレクター)志望だったんですが、日本工学院のカリキュラムを見たときに、それではもったいないと思いました。というのも、機材がすごく充実していて、技術を学べる環境が整っていたんです。何を学んだら一番コストパフォーマンスがいいのかを考えたときに、もっともとっつきにくいのが音声でした。志望者が少なければそれだけ機材に触れるだろうし、ちゃんとやっていれば注目もされるはずと、したたかに計算して音声コースを選びました。
 そこで並木宣憲(のぶよし)先生、岐田稔(きだみのる)先生、鈴木圭先生に出会えたことが、僕には運命的でした。並木先生は音声コースの講師だったんですが、カメラや照明も、現場のノウハウを総合的に教えてくれました。その後任としてやってきた岐田先生と鈴木先生によって僕はMAを知り、MAの魅力に目覚め引き込まれていきました。
 何かやらないとムダだ、ボーっとしていてはもったいないという精神でした。僕は要領がいいほうじゃないので、早く現場を経験してアドバンテージを得ないと勝てないと思い、入学して2カ月後ぐらいから、東京ドームのカメラアシスタントのバイトを始めました。それを機にいろんな現場でカメラアシスタントをやるようになり、平行して並木先生や岐田先生の現場にも入っていました。業界にきちんと就職することこそがひとまずゴールだと考えていたので、そのために学校をフル活用して、現場の人との人脈を自分で開拓していけば、日本工学院に入った価値は十分にあると思っていました。とにかく顔を広めようと、日本工学院の校名が入った名刺をつくってバイト先で配ってました。
 卒業制作は何本もかけもちでMAをやりました。MAが最高に楽しくて、気持ちは音声に大きく傾いていたんですが、アルバイトで経験を積んでいたこともあり、まずはエヌ・エス・ティーにカメラアシスタントとして就職しました。希望したスポーツ中継の現場に配属され、楽しく一生懸命やっていたんですが、やはりMAへの気持ちが捨てきれず、最初のボーナスでパソコンとMAのソフトPro Toolsを当時50万円ぐらいかけて買って備え、勉強を続けていました。

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■ MAの魅力

 その後MAとしてSKIPシティに転職し、最新の機材が完備された研究所のようなSKIPシティで、優秀なMAの高田義紀(よしのり)さんのアシスタントとして、MAをいちから勉強させてもらいました。映画もドラマもCMも一通り経験し、もう一度都内に戻ってMAで勝負したいと考えていたときに、現在所属しているタムコが新しくスタジオをつくるのでドラマがやれるMAのオペレーターを探しているということで採用されました。
 MAの仕事は地味だし一般的にわかりにくい作業ですが、若くてもメインでやれる可能性があるので、僕の年なら本来は直接口もきけないような監督と肩を並べて仕事ができる。責任は大きいですけど、音の部分で演出に絡んでいけるというのは大きいです。
 あとMAの一番の魅力は、有名な監督の演出を間近で見ることができることです。「歸國(きこく)」で、鴨下信一さんとやらせていただいたとき、小栗旬さんと八千草薫さんが再会し、八千草さんがピアノを弾くシーンがあるんですけど、プレビュー後に怒鳴られたんです。「ここはピアノで語るんだよ。それくらい台本見て気づきなさい!」って。そのときのMIXはセリフがちゃんと聞こえるようにピアノの音を抑えていたんです。セリフが聞こえないことを不安がる監督が多い中で、すごいなって思いました。そんな経験MAじゃなきゃできないですよ。
 正直、現場は厳しいです。華やかな世界だと誤解されがちですけど、どの仕事もそうですが、お金を稼ぐってそんなラクじゃないですよ。理想と現実のギャップでみんな辞めていくけど、きつい仕事の中には必ず楽しいこともあるし、理想と現実のギャップは、いつか自然に自分の力で乗り越えられる。頑張っていれば最初に描いた理想に必ずたどり着けます。アドバイスとして、学生時代に自分なりの目標を持つといいと思います。友だち100人つくるとか、僕でいえば現場で活躍している講師の先生と仲良くなるとか。ひとつでいいから自分で狙って行動し結果を出す。そのインプットとアウトプットの経験が、現場で自信となって活きてくると思います。

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深澤 慎也(ふかさわ・しんや)

MA(マルチオーディオ)エンジニア
1984年神奈川県生まれ。高校卒業後、日本工学院専門学校放送芸術科(現クリエイターズカレッジ 放送・映画科)に入学し映像制作全般を学ぶ。卒業後、2005年に制作プロダクション エヌ・エス・ティーでカメラアシスタントとして経験を積んだのち、2006年よりスキップシティでMAとして活動を始める。2008年タムコ入社。テレビドラマを中心に多数の番組を手がける。主な作品に、テレビドラマ「スマイル」(TBS、09)、「歸國(きこく)」(TBS、10)、「SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~」(TBS、10)、「南極大陸」(TBS、11)、「99年の愛~JAPANESE AMERICANS~」(TBS、10)、「ATARU」(TBS、12)ほか。

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