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~ 飛躍するクリエイター ~ 第35回 星野 安規 CGクリエイター

人気舞台「銀河英雄伝説」シリーズで、背景や舞台装置を3DCGで表現する星野安規。 生き方の芯には常に“好きなもの”があった。やがてそれが星野を大舞台へと導く。 「自分の好きなものを人に知ってもらうことは、好きなものを持つのと同じぐらい大事だと思います。YouTubeやニコニコ動画に作品を投稿することもその手段のひとつです。自分の得意を人に伝える、そんな人との付き合いでチャンスがぐっと広がるはずです」

 

■ CGの力で舞台を彩る

 2012年の「銀河英雄伝説 第二章 自由惑星同盟」から、3DCGで舞台背景や劇中で流れる映像をデザインから制作までひとりで担当しています。大変な面もありますけど、すごくやりがいがあります。それまでは、役者さん同士が殴り合うことで、戦闘戦をイメージで表現していたんですが、3DCGで戦闘シーンを見せることができるようになったことで、多少なりとも舞台のクオリティを上げることに貢献できていればうれしいのですが。
 使っているソフトはMayaです。宇宙空母から、山や家具まで、必要とあればなんでもつくります。最近はプロジェクションマッピングという立体的に見せる技術を使用するなど、新しい試みにも挑戦しています。実はメカデザインをいちからおこすという作業をやったのは、「銀河英雄伝説」の舞台が初めてだったんです。いきなり大きな仕事とプレッシャーが舞い込んできた(笑)。いろいろなことが直前まで決まらなかったり、急遽オーダーされ仕上がったばかりのCGデータを持って劇場にかけつけたり、初めはなんでこんなに舞台って流動的なんだろう?って不安や不満ばかりでしたが、この1年半で5公演担当させていただき、ようやく慣れてきたところです。舞台を見てくれたお客さんの「映像がリアルだった」「俳優さんが手を下ろした瞬間に戦艦の攻撃が始まったり、お芝居と映像がマッチしてた」といった感想を劇場で耳にしたときは、本当に幸せを感じます。
 3DCGをやろうと思ったのは、「TVチャンピオン」の全国プロモデラー選手権に出演されていた山田卓司さんらを見てプロモデラーにあこがれたからです。昔から手先は器用でした。絵を描いたりするのも好きだったから、図画工作の授業は楽しい時間でした。
 小学生のときはプラモデルに熱中していました。タミヤから出ているウォーターラインシリーズを必死で集めてました。幼稚園のときは粘土です。園長先生に粘土でつくった戦艦をほめられたこともありました。3DCGで必要なのは、デッサン力と光のセンス、あと空間把握能力だと思うんですが、僕の場合、子供の頃の粘土遊びが活きた(笑)。中学時代は一度プラモデルから離れ、家にあったWindowsのペイントソフトで絵を描いて掲示板に投稿したりしてました。マウスの操作方法やソフトの使い方だとかパソコンの基礎の基礎には、そこで触れられたような気がします。

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ドラゴンと兵士
 

 

■ プラモ+PC=3DCG!?

 高校は工業高校の情報処理科に進みました。これからはパソコンの時代だと考えSEを目指して入学したんですが、全然向いてなくて。プログラミング言語を見ているだけで頭が痛くなってくるんです。これはSEはダメだと悟りました。そこから将来についてもう一度真剣に考え、昔から好きだったプラモデルのほうに進めないかなと思ったんです。でもプラモデルってすごくお金がかかるし、しかも僕の技術ではプロでは通用しない。だけどCGならどうだろうと。それならパソコンとプラモデルが好きという両方が活かせるんじゃないかと考えたんです。
 それでCGに学科を絞って何校か専門学校を回りました。そんな中で、一番わかりやすく、何も知らない僕らと同じ目線でCGについて話してくれたのが日本工学院でした。この学校だったらCG制作をきちんとマスターできるんじゃないかと感じ、コンピューターグラフィックス科(現クリエイターズカレッジCG映像科)に進みました。
 入学して初めてMayaを触ったんですが、もう難しくて。謎の言語が飛び交い、慣れるまでに1年かかりました。唯一得意だったのはデッサンの授業。ただメカは描けるんですが、人物で合格点をもらうまでにやっぱり1年かかりました。2年になってからは映像制作の勉強が始まり、この段階で落ちぶれたらもう終わりだと、授業の復習をしたり、他の方のCG映像作品を研究したり、必死でした。あの時期にずいぶん成長できたと思うし、いま考えると、日本工学院時代の経験が僕の一番の糧になっています。課題もカリキュラムにも自由度があったので、僕は好きな戦艦や船を題材に選んで、思う存分突き詰めていくことができたんです。自分の得意を磨くチャンスを得たことが、いまにつながっています。

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大空の鎮魂歌

 

■ 満足してはダメだ

 卒業制作では、空中戦を描いた『大空のレクイエム』という5分のショートフィルムをひとりでつくりました。船を走らせるより、飛行機を飛ばすほうが動きが出せるし、いい作品にできると考えたんです。松本零士さんの『ザ・コックピットシリーズ』を子供のときに見ていてすごく影響を受けたので、かなわないだろうけど近いものはつくりたいと、4カ月間かけて取り組みました。うれしいことにその作品が評価され、東京国際アニメフェアの日本工学院のブースでプレゼンテーションする機会もいただきました。
 その後、研究科で1年、教育アシスタントを3年間務めながらCGのスキルを磨きました。2011年の秋に「銀河英雄伝説」の舞台で3DCGクリエイターを探していると、日本工学院の先生から情報をもらい、ポートフォリオを提出したところ採用が決まりました。あの「銀河英雄伝説」の舞台に参加できるなんて夢にも思ってなかったので、興奮でいっぱいでした。
 あるとき「銀河英雄伝説」が上演されている劇場に、僕がデザインした戦艦や要塞がキット化されて飾られたんです。子供の頃の夢がすべてかなったようで、ものすごく感動しました。僕がここまでこられたのは、とにかくメカ系が好きで、それに特化してやってきたからだと思います。なにかひとつ熱中できるものを持っていればチャンスは訪れると思います。作品の質やスキルを高めるには常に“満足しないこと”が大切だと思います。完成したときはよくても、翌週に見ると、なんでこんなのつくっちゃったんだろう、次はもっと頑張らなくちゃって思う。それが積み重なってここまで来たような気がします。いまはひとりですが、今後は同じ志を持った人たちとチームを組んで、より3DCGのクオリティを上げられるよう、環境を整えもっともっと貪欲に突き進んでいきたいと考えています。

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銀河英雄伝説 第四章 前篇 激突前夜

場所:東京国際フォーラム ホールC
日程:2013年11月29日(金)~12月2日(月)

 

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星野 安規(ほしの・やすのり)

CGクリエイター
1987年東京都生まれ。高校卒業後、2006年 日本工学院専門学校コンピューターグラフィックス科(現クリエイターズカレッジCG映像科)に入学。同学科の研究科、教育アシスタントをへて、2012年株式会社キティ入社、 クリエイターチームに所属し、舞台やイベントでの3DCG映像を手がける。主な作品に、舞台「銀河英雄伝説」シリーズ:「第二章 自由惑星同盟」「撃墜王」「輝く星 闇を裂いて」(12)、「第三章 内乱」「初陣 もうひとつの敵」(13)。最新作「銀河英雄伝説 第四章 前篇 激突前夜」が2013年11月29日(金)から上演。

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