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株式会社SPRING Managing Director/ Web Creator 京野 文彦さん

スマホの画面に3回タッチしてできた3つの点(ドット)が目や鼻となり、みるみるうちに表情豊かな犬の顔が描かれる。どんな場所に点ができてもちゃんと犬の顔になる「ドッツドッグ」は、1~3歳むけのアプリ。

「Yahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード2013」一般の部で、「シンプルなロジックの上に積み上げられた徹底的なつくりこみ」(審査員評)と満場一致でグランプリを受賞。その制作者である京野文彦さんに、受賞作のコンセプトや魅力について語っていただきました。

 

■ 受賞作「ドッツドッグ」について語っていただく前に、ご自身のクリエイター歴について教えていただけますか?大学は映像学科出身ですね。

ええ、高校時代から自主映画を制作していて、その流れで大学へ入学。卒業後は映像技術系の会社に入社しカメラアシスタントやビデオエンジニアを務めましたが、技術的な仕事に対して自分のやりたいことと違うなと疑問を感じていました。そこで子供の頃から絵を描くのが好きだったことを思い出し、印刷会社へ転職。グラフィックとWebのデザイナー兼イラストレーターとしてさまざまな印刷物を制作しました。

その時がちょうどアナログからコンピュータへ移行する過渡期で、Macが非常におもしろく、プログラミングを覚えるのも楽しい。フラッシュをつくるのも楽しい。どんどん吸収していきました。ただ、やはりソフトで制作してもアナログ時代に培ったデザインの勘というものが役立ちましたから、両方を経験できたことは幸運でした。

その頃フラッシュによるインタラクティブコンテンツに大変魅力を感じ、のめり込んだのですが、当時の会社では需要がなかった。そこで思い切って独立したのです。しかしインタラクティブな表現も大規模化し、どうしても部分作業になっていく。しかしフラッシュによるスマホアプリの作成が可能となり、これなら一人でもできそうということで始めました。

 

■ そのようなプロセスを経て「ドッツドッグ」が誕生しました。なぜ子供用にこだわられたのですか?

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もともと以前から子供用フラッシュゲームを作っていた経験がありました。又スマホが普及し、幼児にとってそれほど楽しくない場所で親があてがっている光景なども良く見かけます。スマホが不可欠になればなるほど、幼児にとっても切り離せない。ならばそれを前提に親と子とその関係がプラスに働けば、それはそれで決して無意味ではないと。むしろ子育て支援の観点では許容できると考えたのです。

あと自分の年代を活かしたいな、と。昭和40年代生まれの僕達は『ピンポンパン』というテレビ番組を観ていた世代です。そのなかに、子供がホワイトボードに書いたデタラメなカタチから、カータンというキャラクターが動物や車を描いていくというお絵かきコーナーがありました。無意味な何かが意味のある何かに変わっていくのは楽しいですね。そこにヒントを得て、3つの点から犬を描くアプリを思いつきました。

 

■ 制作するなかで試行錯誤されたことはありますか?

試作品をつくってみたんですが、どうも、こぢんまりとしたものになってしまう。どうしても職業柄うちにこもりがちでアイディアが何も出てこない時があります。そういう時は本屋へ行くようにしていて、そこで絵本を読みまくりました。最初はピンクや青色の犬があってもいいなと思いましたが、絵本に描かれている動物は実物とかけ離れた色を使っていない。子供が勘違いしてはいけないという知育の観点からでしょう。仕掛けのある絵本も素晴らしかったし、子供が好む色遣いや構図を絵本が一番よく表現していてとても参考になりました。

もうひとつ、試行錯誤というと、3つのうちどの点が目になるのか、鼻になるのかという条件をつくることです。どれでもよかったら変な顔になってしまう。他の2つから離れた点や一番大きい点は鼻、3つが横並びになったら横顔になるなどを条件に、どんな点からでも顔になるようにいろんなパターンをつくりました。ちょっと変わった犬の顔というか、想像と違う顔になった時に子供は喜ぶみたいですね。

 

■今回「Yahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード2013」でグランプリを受賞されましたが、どのような点が評価されたと思われますか?

幼児用アプリをいろいろと見てきましたが、子供が面白くても親はそうでもないというものがたくさんありました。そこで、親子で夢中になれるものをつくろうという思いがありました。今回の受賞では審査員も親子で楽しめるところを評価してくださって、大変嬉しかったです。

また、「ドッツドッグ」を制作している間は、本当に子供にとって楽しいものなのか確信できないでいました。そのため受賞することで多くの子供達がこのアプリで遊んでくれ、「楽しい」という声が聞けたこともよかったです。今後は「ドッツドッグ」のiPhone5でのサイズの適正化や、犬の色や形のバリエーションを増やしていきたいです。さらに親子で楽しめるアプリをどんどん制作していきたいですね。

 

■ 最後に、クリエイターをめざす方々にアドバイスをお願いいたします。

img02 アプリ制作に関していえば、そのアプリを“使うシーン”を想像してみること。どんな時にどんな場所で使うものか。「ドッツドッグ」はむしろ、買い物や公共交通機関での移動など子供が楽しくなく、なおかつ親があまりかまってあげられないシーンを想定してみました。子供用に留まらず子育て支援からのアプローチがあっても良いのではないかと。

そうやって、今回の作品は一人で1年がかりでつくったものです。自分でアクションスクリプトを使ってプログラミングをして動きをつけ、同時にデザインもする。1つの作品を一人で完結する面白さがありました。大規模コンテンツになるほど技術が多岐にわたり、役割に特化する事も大切ですが、同時にチーム制作による意向を共有する事も重要となってきます。しかし役割に固着せず、畑違いと思われる技術でも色々興味を持ち、チャレンジする事はとても大切ではないでしょうか。なぜならディレクション、グラフィック、イラストレーション、プログラミングを自己完結する事により、そこからでしか生まれないアイデアが必ずあるからです。それは逆にチーム制作の時にはとても役に立つものと思います。

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「ドッツドッグ」アプリ詳細ページ
http://www.s-p-r-i-n-g.com/detail/dotsdog.html
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京野 文彦(きょうの・ふみひこ)

株式会社SPRING代表取締役。
大阪芸術大学映像学科卒。映像技術系会社、印刷会社勤務を経て、2006年より株式会社SPRING設立。おもにFlash使用の広告やインタラクティブコンテンツ、アニメーションなどの制作のかたわら、2012年より幼児、子供対象のスマートフォンむけアプリケーションを手がける。

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