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映画監督 加藤 直輝さん

12/25(土)より公開する映画『アブラクサスの祭』の監督である加藤 直輝さんに、これまでの生い立ちやクリエイターへのアドバイスなど、お話しを伺いました。

 

■ 人間の“見えない部分”に興味がある

高校時代の部活では空手をやっていたので、“映画少年”とはかけ離れていましたね。
「自分は、集団競技よりも個人競技の方が向いている」と思って空手を始めたんですが、上下関係をはじめ24時間部活の事だけという軍隊生活のようでした。3年間続けて黒帯も取りましたが結局最後までそんな洗脳状態に馴染めませんでした。

卒業後の進路もとくに考えていなくて、予想通り浪人しました(笑)
でも、浪人時代に「自分は何をやりたいのか?」と真剣に考えることができ、「人間の“見えない部分”に興味がある」ことに気づきました。

イメージしかもそれは科学的に心を分析するのではなく、もっと感覚的な視点から学びたい・・・というもの。そして文学部に進むことにしました。僕の映画人生は、ここからスタート。たまたま大学の映画研究会に入り、2年生の頃に、脚本から書いた初めての自主映画を撮りました。

最初の作品は今まで自分の中で溜まっていた“何か”をとにかく全部吐き出したものでした。その後、ドキュメンタリー1本、短編1本撮り、大学生活は授業に出ないで、撮ったり見たり映画漬けの日々でした。

周りの学生がみんな就職先や進路を決めた4年生の12月、僕は何も決まってませんでした。 そんなとき、「東京藝術大学の大学院で映画専攻ができる」と聞き、迷わず受験。

その時の面接官が、映像研究科教授の黒沢清監督で、「きみ、プロになりたいの?」という質問をされ、思わず「・・・はい!」と、少し間の空いた返事をしてしまいました。

今まで好きだから撮ってきただけで、“プロになりたい”なんて全然考えてもいなかったんです(笑) でも、今考えてみるとそれが初めて「映画監督になろう!」と決意した瞬間だったのかもしれません。

はれて第一期生となることができましたが、在学中は実習課題として撮影三昧。ここで学んだことは技術だけではなく「映画をやっていくには一人じゃ何もできない」ということでした。僕は集団作業が苦手だったけど、みんなの力がないと一人では何も創れないということを痛感しました。

 

■ 日本映画ってこんなに面白いんだ!

幼い頃は『グーニーズ』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、そして『プレデター』や『ターミネーター2』など、ハリウッド映画ばかり観ていたのですが、高校生のときに北野武監督の『その男、凶暴につき』を観て、ハリウッドとは違う日本映画独特の表現や緊張感に驚きました。

その後、『HANA-BI』を観て、完全に打ちのめされましたね。「日本映画ってこんなに面白いんだ!」と、衝撃を受けました。

 

■ 初監督映画『アブラクサスの祭』について

イメージもともと、原作は学生時代に読んでいたんです。本を読んだあとに、なぜか原作にはない海のシーンが浮かんできて、これを映画にしたいなぁって思ったんです。それで、企画を持ち込みました。

映画の中でスネオヘアーさんが海岸で波に打たれながらギターをかき鳴らすシーンがまさにそれです。

この映画は、お坊さんという特殊な職業の人だって一人の人間に変わりはなく、病気にもなるし、ロックも好きだし。そういった意味では誰でも共感できるところがあると思います。

また映画というものは“映像”に注目されがちだけど、これは映像と音のコラボレーションにも注目してほしいです。映像だけでなく耳を澄まして音を聞いてほしいですね。

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キャスティングに一番苦労したのは、人物ではなく犬(役名:ナム)。それも、死にそうな演技をしてくれる老犬で(できれば日本犬)、なんて動物プロダクションにいるはずもなく、「監督、元気な洋犬でも我慢してね」。なんて言われて諦めかけていたとき、押田プロデューサーから「ナムが見つかった!」っていうメールがきたんです。偶然ロケ地で見つけてくれた時は本当に嬉しかったですね。

また大勢の人が集まって作品をつくることは想像以上に大変でした。

でもやっぱり一番印象に残っているシーンは、スネオヘアーさん率いる元メンバーのライヴ風景ですね。

 

■ 最後の一日にすること

音楽が好きなんですが、聴く専門で自分では弾くことができないんです。

だからギターとアンプを買って、世界最後のこの世で一番大きな音を出してみたいですね。

 

■ 自分なりの“まなざし”

僕が在学中に黒沢清監督に教わった「続けること、自分からは諦めないこと」。
これを映像の仕事に携わる方にも伝えたいです。2年間通って監督から教わったことで覚えているのはこれだけです(笑)

それから、人間の“眼”は自分の見たいものだけを選択して世界を見ていますが、“カメラ”は映像として世界を等価に写します。
映画や映像を目指す方にはそんな人間が見ている世界とは違う映像という世界について自分なりの“まなざし”が必要だと思います。


 

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12/25(土)よりテアトル新宿ほか 全国順次ロードショー
10/9(土)より福島県先行ロードショー

監督・脚本:加藤直輝

原作:
玄侑宗久『アブラクサスの祭』(新潮文庫刊)

エンディングテーマ:「ハレルヤ」(曲レナード・コーエン)
歌=スネオヘアー+ともさかりえ

出演者:
スネオヘアー、ともさかりえ、本上まなみ
小林薫、村井良大、ほっしゃん。

かつて元ミュージシャンだった禅僧・浄念は、音楽への狂おしい思いからノイズが聞こえるようになり、ウツ病患者として入院した過去を持つ。
禅僧になっても自分の「役割」を考え続けているが、なかなか思うように答えはでない。

そんなある日、とある講演会で大失敗して落ち込んだ浄念は、自分の中で音楽への想いがたち切れていなかったことに気付く。この町でライブをやりたいと、強く思いはじめる浄念。住職の玄宗は良き理解者だが、地元ライブには困惑顔。妻の多恵も大反対。

そんななか、ある事件をきっかけにショックを受けた浄念は自分をコントロールできなくなるが―果たして浄念は答えを見出すことができるのか?本作品にちりばめられているのは「自分」をまるごと受け入れる“禅”的ヒント。

悩める浄念の生き方に心ゆさぶられる、まっすぐな映画が誕生しました。

正式招待決定!サンダンス映画祭2011
「ワールドシネマ・ドラマティック・コンペティション部門」
この映画際は、クエンティン・タランティーノやジム・ジャームッシュ、ロバート・ロドリゲスなどの映画監督や、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や 『SAW』が発掘された映画祭です。

オフィシャルサイト
http://www.aburakusasu.com/index.html
©「アブラクサスの祭」パートナーズ

katouprof

加藤 直輝(かとう・なおき)

1980年、東京都出身。立教大学文学部フランス文学科卒業、05年に東京藝術大学大学院映像研究科の監督領域の第一期生(6名)となり黒沢清、北野武らに学ぶ。修了制作である『A Bao A Qu』(07)は、第12回釜山国際映画祭のコンペ部門“New Currents”に出品されたのをはじめ、その他ドイツやオーストラリアなど世界の映画祭で上映された。

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