2017年5月29日~6月1日、アドバタイジングウィーク・アジアが六本木・東京ミッドタウン内で開催されました。
今回は、その中からリクルートコミュニケーションズの『広く告げる「広告」が効かない時代に、 個を動かす「個・動く」をつくり出す方法2.0』についてのレポートです。
意思決定を行うチャネルの複雑化、情報メディアの多様化・複合化が加速していく現在。
生活者に自身のベネフィットやメッセージを伝えるだけではマーケティングゴールへ導きづらくなっています。
同社の講演では生活者のニーズを細やかに把握し、より最適な体験を提供するための事例が紹介されました。

消費者の行動のミニマム化・多様化、情報の変化によって起こるサービスの変化

国内外に多領域の事業会社と、機能会社を展開するリクルートグループ。そのなかにおいてリクルートコミュニケーションズは、クライアント企業の集客ソリューションやWebマーケティング、メディアの制作・流通・宣伝などを担当している機能会社になります。
「クライアント・ユーザー双方へのチャネル」を活かしベストマッチングを追及する、リクルートグループ各社の事業の多くに取り入れられているビジネスモデル「リボンモデル」において、同社は、ユーザーとクライアント企業とをつなぎ合わせ出会いを創出するソリューションの強化・創出を探求しています。

そこで「生活者の行動や情報流通に変化が起きている」と語るのは、同社マーケティング局コミュニケーションデザイン部・部次長の萩原氏。

生活者の変化については、行動のミニマム化・多様化に加え、ソーシャルメディアの普及により、身近な家族や友人とのコミュニケーションが増えています。一方、マスや企業情報への接触が減っているとのことです。

また、情報量が圧倒的に増えてきているため、ユーザー(生活者)個人単位でフィルタリングが起き、マーケターらが送りたいような情報がより届かなくなってきている、そんな状況であるとのこと。
個が多様化し、情報があふれる中で「広く告げる」だけの広告では中々効かない。そもそも広告の功績は事業成功であり、ゴールは生活者の意思決定と選択に関与することであると考えているといいます。

また広告の領域における認知から意思決定のプロセスには境界線がどんどんなくなってきており、そこでは今回の講演テーマである新たなソリューションの創出を日々探求しているとのことです。

デジタルマーケティング組織の役割について

次に、同社ICTソリューション局・デジタルマーケティング推進部より鶴見氏が登壇。リクルートコミュニケーションズのデジタルマーケティング組織の役割について以下のように説明しました。

「役割としては大きく2つです。1つは、リクルートグループの各メディアに対するデジタルマーケティングの支援です。リクルートグループ各社で提供しているメディアのサイト、アプリ、キャンペーンのLP(ランディング・ページ)などに対してユーザーを送客する手伝いをしています。
もう1つは、各リクルートメディアが取引させていただいている先のクライアント企業を対象にした、デジタルマーケティング商品開発・提供です。」

「マーケティングの対象は、マスから個へと変わってきました。ユーザー個人を動かすために、マーケターは膨大なデータと、それを扱うテクノロジーを駆使する必要がありますが、リテラシー、コスト、リソースなどの問題からハードルが高く、現在は大手企業様中心の活用に留まっている状況です。
これに対して、同社では『誰もが手軽にデジタルマーケティングを活用できる』世界を作れないか、そんな思いを実現させるソリューションとして、デジタルマーケティングのプロダクトを自ら開発し、クライアント企業への導入を進めているといいます。当日は、そのプロダクトについての共有が行われました。

誰もが手軽にデジタルマーケティングを活用できる世界への挑戦

少額な予算からでも効果が出せるマーケティングツール

まずプロダクト開発の背景について鶴見氏より以下のように説明がありました。

「本当は導入したい広告メニューがあるものの、最低配信予算などの制約から実施できない」という悩みを抱えるクライアント企業に対し、我々は、数万円という少額の予算からでもデジタルマーケティングを利用できるツール「Lierco」(リエルコ)を開発しました。アカウント開設、タグ設計、リスティングのキーワード設計や入稿作業などあらゆる作業をテクノロジーで代用し、機械学習による運用で完全自動化を実現。これによって、マーケターは全体予算と目標を「Lierco」に設定するだけで、配信から運用までワンストップで安定した効果を得ることができるようになり、多くのマーケティング担当者が抱える悩みを解消しました。リリースした2012年当時、その時期で世界初のデジタル領域における統合マーケティングツールだった「Lierco」。現在、主にリクルートグループの各社の取引先、数万社を超えるクライアント企業で利用されています。

「手間なく負荷なく」最新のHPを保持しながら集客課題もあわせて解決したソリューション

続いて、「Web上の集客において昨今、HP(ホーム・ページ)の重要性が増しており、強い課題感を持つ企業も多い」と語るのは同社、ICTソリューション局・デジタルマーケティング推進部の大城氏。

「リクルートグループが支援させていただいている様々な事業領域で横断的に起こっている現象として、大手企業様以外の企業では自社HPが未整備というところが多くみられました。その結果自社の情報を満足にユーザーへ届けることができていないという状態が発生しています。」
というのも、ユーザーがメディアやSNS等で情報を収集し、さらに情報を得たいと思った際の行動は、Googleなどの検索エンジンへの接触です。検索で一次情報となるHPを探すものの、そこで企業や店舗のHPがないなどの事態が発生しており、ユーザーが離脱してしまっているのです。

「こういった企業の課題に対して、負荷を最小限に抑えながら、安価にHPを構築でき、しかも集客機能まで実装できる、そんなソリューションを提供できないか・・・そんな思いから、独自のソリューション(HP構築プロダクト)を開発しました。」
このHP構築プロダクトの特長は2点あるといいます。1つ目はすでにリクルートグループのメディアに掲載いただいている広告原稿情報を自社HPに活用することで、スピーディーかつ簡単にHPの立ち上げができる点。
2つ目は、「Lierco」を組み合わせることで、広告設定・配信までも一気通貫して行えるよう連携している点です。

こちらもリクルートの各事業領域に対して展開を始めており、すでに万単位の企業に対してHPの提供ができている状況。利用企業からは「気になってはいたものの、手をつけられていなかったHPの改修ができた」「集客までセットになっているので、ユーザーに届いていると感じる」などの声があり、満足度が高いといいます。

デジタル・マーケティングの進化と「個」を動かす・「個」が動く世界

これらの講演会の締めくくりとして、大城氏が以下のように述べました。

「今回紹介した事例は、デジタルマーケティングに企業の大小を問わず参加できる世界をつくることを意図して取り組んだものです。リクルートグループの既存アセットに、テクノロジーの力を掛け合わせることで新たな価値を生み出すことができました。」
加えて、同社の組織構造も強みになったといいます。「エンジニアやITプランナー、マーケターなど異なる職種のプロフェッショナルが同じ組織内にいることで、マーケットの課題を深いレベルで共有でき、かつ最適なテクノロジーを結合させながら自らプロダクトを創り出していくことができるのです」。

「大手偏重型」であったデジタルマーケティングから、規模問わずあらゆる企業が活用できる世界にシフトしていけば、さらに多様なデータが集まり、最適化が加速していく。こうしたデジタルマーケティングの進化から「個・動く」世界が実現されるのかもしれません。