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映画づくりの舞台裏 「脚本は撮影当日に!独自のスタイルを貫き通す監督」

商業性を重視せず、こだわりをもって作られた作品には、何度観ても新しい発見があり感銘を受けることがあります。

今回は一貫したテーマを持った作品を作り続ける、韓国の奇才ホン・サンス監督の映画制作に対するこだわりや、10月17日公開の最新作『アバンチュールはパリで』の裏話も含めご紹介していきたいと思います。

 

■当日つくられた脚本のシチュエーションを監督自らが経験

恋人や友達、同僚など日常の人間関係の中で起きる些細な出来事から、人間の本質をみせていくのがホン監督作品の一貫したテーマ。
絶妙なテンポで繰り広げられる会話にはたまらない可笑しさが含まれており、時にいたたまれない気持ちになるほど辛辣です。
鋭い観察眼を武器にした制作方法は、独特で徹底してリアルさにこだわっています。

韓国では「ホン・サンス式」と評され、批評家だけでなく、ホ・ジノ監督やキム・ギドク監督といった韓国を代表する映画作家からも一目置かれる存在になっています。

制作過程を説明すると、まず撮影前に役者と沢山コミュニケーションをとり、役者自身をよく知ってから、登場人物のキャラクターを構築する所から始まります。そして、その人物が何か行動しているところを想像し、撮影場所を決めます。
『アバンチュールはパリで』(原題Night and Day)の舞台がパリになっているのも、そもそもの着想点が海外とソウル、ふたつの場所を結ぶ電話ということで、1年程滞在したことがあり、題材にもふさわしいパリでの撮影になりました。
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脚本については、撮影を進めながら、その場所や人が自然に持っているディティールを取り入れて、当日に作り上げられます。
当日に作られるとはいえ、役者の即興で作られるわけではなく、台詞は計算し尽くされたものであるため、役者は一言一句間違えられません。
監督自身の頭の中で作品は詳細にわたって構築されていて、時には監督自らがそのシチュエーションを経験することもあります。

■撮影はコーヒー一杯とノーギャランティ

“韓国のゴダール”“エリック・ロメールの従兄弟”と評されるように、韓国版ヌーベルバーグといえる様な作風は、ヨーロッパで圧倒的な支持を受けています。

『アバンチュールはパリで』では、めったに撮影許可が取れないことで有名なオルセー美術館。その館長がホン・サンスの大ファンだったため、クールベの絵を鑑賞する場面を無償での撮影許可が出ました。そのくらいヨーロッパにはファンが多いのです。
そのときのたった一つの条件は、「コーヒーを一杯一緒に飲むこと」だったそうです。

またカンヌ国際映画祭には、ある視点部門に『江原道の力』(1998)『秘花~スジョンの愛~』(2000)、コンペティション部門に、『女は男の未来だ』(2004)『映画館の恋』(2005)、監督週間に「Like You Know It All」(2009)を正式出品、『江原道の力』はスペシャル・メンション、青龍賞、監督賞、脚本賞を受賞。2003年春にはパリで3作品が同時公開され、映画誌がこぞって掲載するなど、フランスを中心にヨーロッパで絶大な人気を誇っています。

また今回作のヒロイン役、パク・ウネも韓国では有名な女優で、日本でも「宮廷女官チャングムの誓い」でチャングムの親友イ・ヨンセ役で出演していたためご存知の方も少なくないと思いますが、彼女もまたホン・サンスの大ファンで、ギャランティ無しでの出演です。
映画の撮影期間中にギャラが発生しないということは、役者にとっては大変なはずですが、彼らの意思で申し出てくれるほどに愛されている監督なのです。

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恋愛会話劇の天才、ホン・サンス。
初めてご覧頂く方には、今まで味わったことのない、不思議な魅力、面白さがあるかと思います。

随所にちりばめられた計算しつくされた演出、絶妙なテンポと間合いで繰り広げられる男女のやりとり。きっと1つ作品を観てみると癖になるような面白さにはまり、全作品を観たくなること間違いなしです。

『アバンチュールはパリで』は、本編の90%がパリで撮影されており、カフェや駅前、公園といったパリの街角から、郊外のドーヴィル、名門美術学校エコール・デ・ボザールといった“普段着のパリ”を楽しむことができるのも魅力の一つ。

観光映画よりディープなパリの魅力と、ホン・サンス監督の絶妙な会話劇とのマリアージュを楽しめる作品です。 是非劇場でこの魅力に酔いしれてみてください!

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2009年10月、シネカノン有楽町2丁目他全国順次ロードショー!

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監督・脚本:ホン・サンス
1961年10月25日、ソウル生まれ。
韓国中央大学で映画制作を学び、85年カリフォルニア芸術工科大学で美術学士号(BFA)、89年シカゴ芸術学院で美術修士号(MFA)を取得。留学中に数多くの短編実験映画を手がける。

その後、フランスに数ヶ月滞在。韓国に戻り、96年に最初の長編映画『豚が井戸に落ちた日』を発表。
バンクーバー国際映画祭でドラゴン&タイガー賞を、ロッテルダム国際映画祭でグランプリを受賞する。
以後、多くの作品がカンヌ国際映画祭に出品され、高い評価を受ける。
03年春、パリで3作品が同時公開されたことをきっかけに、映画誌はこぞってホン・サンスの特集を組み、ヨーロッパで話題をさらった。04年、フランスとの共同製作で『女は男の未来だ』を発表。カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、“韓国のゴダール”、“エリック・ロメールの従弟”などと形容され大絶賛される。

本作『アバンチュールはパリで』は08年ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品され、公式上映されるや「グランプリ候補の筆頭!」と各国のメディアで絶賛された。

【主演】
キム・ヨンホ、パク・ウネ、ファン・スジョン、イ・ソンギュン、キ・ジュポン

【ストーリー】
旅先で思いがけなくおとずれた恋。
徐々にあらわれる「男と女の本音」を描く小粋な恋の駆け引き劇。

妻をソウルに残し一人パリを訪れた画家のソンナム。パリの日々を怠惰に過ごす彼の目の前に、ある日太陽のように溌剌とした魅力を放つ画学生ユジョンが現れる。
妻を気に掛けながらもソンナムはユジョンに心を奪われてしまう。直球で思いをぶつけるソンナムに対して最初はそっけないユジョンだったが―。

“恋の街”フランス・パリを舞台に、お互いの気持ちをカードのように見せあいながら男と女が繰り広げるかけひきが、ウィットに富んだ会話で軽やかに綴られるロマンス・コメディの傑作が誕生した。

思いがけずおとずれた恋があらわにしてゆく男と女のホントの気持ち、本当の自分。
何度恋を繰り返し、いくつ歳を重ねても、やっぱり恋に落ちてしまう彼らの姿に、誰もが愛おしさを感じずにはいられない。

 

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後藤 真理子(ごとう・まりこ)

1980年東京生まれ。


文具メーカー退社後、2008年にビターズ・エンドに入社。
配給会社のパブリシティを担当している。

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