クリエイティブ業界の注目情報や求人情報などを発信する、クリエイターのための総合情報サイトです。

~飛躍するクリエイター~ 第29回 金原 聖 照明

「照明は照らすだけのものではなく、画(え)をよりよくする、プラスαの役割を担っていると思います」。キャッチライトで演者の目に光を入れ目力を強めて感情表現を高める。あえて髪だけにライトを当てシーンの重さを増す。光源を調整し影を演出することで、画のトーンをつくる。照明とは、プロとしての技と才能が要求される最たる仕事だ。
だが若手照明マンの金原聖は、技術や技量は当たり前、現場で一番大切なのは”気配り”だと語る。「照明部が現場を動かすんです」――その言葉に照明マンの矜恃(きょうじ)を見た。

 

■ 答えのない面白さに魅せられた

 現在、フジテレビ系、TBS 系、テレビ朝日系のドラマの照明を担当しています。実は最初、ゲームプログラマーかゲームデザイナーになりたいと思っていたんです。それで工業高校の情報システム科に進学しプログラミングの勉強をしていました。そんな中、山崎貴監督の映画「リターナー」(02)のDVD でメイキングを見て、すごく映画の現場に興味を持ったんです。親父が映画好きで小さい頃から一緒に見に行ったりしていたし、コンピュータの勉強をしている自分がいま映画に携われるとしたらCG だと思いました。それでいろいろ調べて日本工学院八王子専門学校を見つけ、オープンキャンパスに参加しました。
 八王子校は敷地がでかいし自然もいっぱいで、生まれ育った長野に雰囲気が似ていました。それで決めました。だけどよく考えてみたらCG だと現場に行けないってことに気づいて、それでカメラマンに志望変更し、放送芸術科(現クリエイターズカレッジ 放送・映画科)に入学しました。そこで劇的な経験をしたんです。1 年時は映像制作について広く学ぶんですが、一番最初の実習が照明でした。照明ってとても難しいんですけど、僕のライティングセンスひとつでまったく違う画になる。奥が深いし、しかも答えがない。一気に照明の魅力に取りつかれました。
 2年からは照明コースに進み、実習では可能な限り技師をやりました。技師とは映画やドラマの現場の照明のトップのことで、LD(ライティング・ディレクター)とも言われます。通常ドラマは、技師とフロアで動くチーフ、セカンド、サードの4人体制で、技師がライティングプランを考え、撮影も技師の指示で動くんです。実習をやればやるほど照明の面白さを感じましたし、絶対にこの世界でやっていきたいと思っていました。
 映画はキャリアも実力もあるフリーの照明が多いので、まずはドラマの現場を目指して就職活動をしました。会社を絞って受けていて手応えもあったのですが、志望の会社に落ちてしまって。そんなときに現在所属しているケーカンパニー   を先輩が紹介してくれて、念願のドラマの現場につくことができました。

 

■ 照明部が現場を回す

 2 年生の12 月から研修でドラマの現場に入りました。朝6 時から始まって、翌日の朝の6 時に終わる。そこからタクシーで当時住んでいた八王子校の寮に戻り、シャワーだけあびてまたすぐ出る。壮絶でした。研修のときが一番大変でしたね。何がなんだかわからない中で、とにかくがむしゃらにやっていました。なんとか仕事を覚えようと必死でしたし、好きな照明で夢だった現場に入れたうれしさもあって、仕事だと思わなかったんです。
 2年目ぐらいまではそんな感じでした。怒られないことが目標でしたけど、毎日のように怒られてました。よく言われたのは、「耳をダンボにして、視野を広くしろ」ってことです。カメラマンの「あっち向きで撮ろうかな」ってつぶやきも聞き逃さないで、あらゆる場合を想定した照明を組む。いまだれが何をやっているのか、何を思っているのかを考えてやるのが照明の仕事だということです。最初は余裕も技術もないから自分のことしか考えられないし、目の前の仕事をこなすのに必死なんだけど、それではダメで、照明部は一番客観的でなきゃいけないし、現場を把握して、照明部が現場を回すんだと言われました。
 尊敬する先輩に、映画もCM もドラマもできる、年中無休でいろんな現場をやってる方がいるんですが、その先輩につくと辞めたいなってよく思っていました。先輩のライティングの発想はすごい。全シーンの画の構想が頭の中でできているし、あらゆる場合に対応できる照明が組めるんです。2年目までの僕は、先輩の要求に応えることができず、自分が向上しない情けなさで、何度も向いてない、辞めたいと思いました。いまはある程度照明がわかり、自分のライティングプランを考えることが面白くてしかたがない。ほかの人のやり方を参考にしつつ、僕だったらこうするなって思うこともある。大事なのは、常に自分だったらどうするかを考えることだと思います。

pec29_01

GTO
「GTO 卒業スペシャル」2013 年春フジテレビ系で放送予定!

 

■ どれだけ気づけるか

 僕はいつも現場で声を出すようにしています。そう教えられてきたし、後輩にも指導しています。大きな声で「確認させてください!」って言うと、みんなも「じゃあ、確認しようか」って雰囲気にもなるし、「お待たせしました!」って言うと、「よし、行こう!」って流れにもなる。現場を回していくのに声を出すってすごく大事なことなんです。
尊敬する先輩はもっとすごくて、カメラの足を運んだり、特機撮影のためのレール引きを率先してやったり、みんなを誘導したり、やっていることがもう照明部の仕事じゃないんです。そうやって先輩は現場を動かしていく。本当にすごいなって思います。そんな先輩につかせてもらったことで、とにかく周りを見て動くことを自然と身に付けることができました。現場で大事なのは、どれだけ自分が気づけるかです。照明にとっては不要な仕事かもしれないけど、現場を動かすために必要なことは先頭に立ってやる。自分だけの利益を求めないで動く、いま、何をすべきか、その判断力が求められると思います。
 将来的には、規模の大きな映画に参加したいと思っています。自分の技術を高めたいし、知らない機材もあるはずだから、新しいことを学べる現場ってワクワクしますよね。目の前の目標としては、技師を目指してやっていきたいと思っています。技師だからこそやれることはもちろん、もし挫折したとしても、そこから学べることもあるし、それこそが次のステップに繋がると思うんです。
 この現場はどれだけ勉強したかじゃなくて、どれだけ現場を経験したかなので、18 歳から現場でやっている人と専門学校卒の僕らでは2 年間の差がある。実際その差は大きい。だけど僕は日本工学院に行って何がよかったかというと、同じ夢を持った仲間と出会えたことなんです。地元の友だちはカッコいい仕事だねって言ってくれるけど、正直辛いことだって多い。それをわかって本音で話せる仲間たちがいるから、ここまでやってくることができた。照明を好きだという気持ちと現場で頑張っている仲間の存在が僕の支えです。

pec29_02カラマーゾフの兄弟
フジテレビ系にて毎週土曜日夜11 時10 分から放送中

 
この記事に関するお問合せは、こちらまで
info@c-place.ne.jp

pec29_164

金原 聖(きんばら・さとる)

照明
1985 年長野県生まれ。高校卒業後、2004年に日本工学院八王子専門学校放送芸術科(現クリエイターズカレッジ 放送・映画科)入学。卒業後、2006 年から照明や録音を手がけるケーカンパニーに入社し、ドラマの現場を中心に照明を手がける。主な作品に、ドラマ「だいすき !!」(08、TBS 系)、「リアル・クローズ」(09、フジテレビ系)、「チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋」(10、フジテレビ系)、「東野圭吾ミステリー 浪花少年探偵団」(12、TBS 系)、「GTO」(12 ほか、フジテレビ系)、「カラマーゾフの兄弟」(13、フジテレビ系)など。

関連記事