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~飛躍するクリエイター~第28回 片野 裕史 カメラマン

カメラマン片野裕史のiPhoneには膨大な音楽映像が入っている。「毎日通勤のときに見て、復習したり、反省したり、この人の演出やっぱりカッコいい、いつか一緒にやりたい!と夢見たりしています」
フジテレビを代表する音楽番組「MUSIC FAIR」で初めてカメラをやらせてもらったときの感激が焼きついている。無数に書き込まれた台本、止まらなかった手の震え、記憶も飛ぶほどに無我夢中でカメラを構えた瞬間。「たったワンカット、1、2秒なんですけど、あの感動が忘れられないんです」。何十回、何百回見ても、そのワンカットは心に響く。
カメラマンとして生きていきたいという夢と覚悟がしっかりと根づいた瞬間だった。

 

■ 見えなかった未来に光が差した

 たいした夢もなく、なんとなく工学部系の大学に通っていたんですが、全然授業が面白くなくて、「このままだと人生どうなるんだろう」とすごく将来に不安を感じていました。それが大学で入っていたブラスバンド部で芸術学部の人たちと仲良くなり、みんなでものをつくったり、表現をする世界に興味を持つようになりました。それで2年生のときに大学を中退し、1年間バイトしてお金を貯め、日本工学院八王子専門学校放送芸術科(現クリエイターズカレッジ 放送・映画科)に入学しました。専門学校を選んだのは、業界の専門知識を得たかったのと、環境も変えたかったんです。1年間バイトをしたのも、自分が本当に何をやりたいのかを真剣に見つめ直したかったからでもありました。業界でやっていける自信もなかったし不安だらけでしたが、1年たっても放送業界で仕事をしたいという気持ちに変わりはありませんでした。
 現在はカメラマンとして音楽番組を中心にやっていますが、最初は音声志望でした。クラシックもジャズも音楽は大好きでなんでも聴いていたんですが、あるときテレビを見ていて、自分でミックスできたら気持ちいいだろうなと思ったことがきっかけでした。日本工学院は大学とは比べ物にならないほど楽しかった。音声志望だったので、講師で来てくださっていたサラウンド業界で有名な方に弟子入りするぐらいの勢いでみっちり教えてもらいましたし、いろんな現場にも連れていってもらいました。明確な目標があれば、それに応えてくれる講師の方も環境も、チャンスもたくさんある。現場への心構えもできたし、日本工学院での経験はすべて有意義でした。

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MUSIC FAIR
(フジテレビ系にて毎週土曜日夜6時から放送中)

 

■ 楽しくて楽しくてしようがない

 卒業後はニュービデオに所属し、現在は八峯テレビに出向しています。音声志望だったんですが、この業界はまずお試しでカメラアシスタントをやらすことが多いんです。ケーブルさばきから始まり、いろいろな機材を覚え、収録がうまく進むようにカメラのシミュレーションを考え・・・・・・初めてのことばかりで大変でした。でも下準備や指示出しがうまくできるようになると、カメラを持たせてもらえるようになるんです。初めてカメラを持たせてもらったときはとてもうれしくて、自分はカメラに向いているんだと気づきました。
 最初から歌番組を志望していて、1年目からフジテレビの「MUSIC FAIR」「HEY!HEY!HEY!」「僕らの音楽」をやらせてもらっています。「HEY!HEY!HEY!」は学生のときに観覧に行っていた番組で、そこにスタッフとして参加できるなんて、すごく幸せです。仕事ですけど、歌番組は楽しくてしようがないんです。どんなに疲れていても楽しいし、どう撮ろうかなって考えることが楽しい。自分のカメラの画(え)が使われているかどうかは、ファインダーに赤いランプがつくのでわかるんです。ライヴはカット割りが決まってないことが多く、その瞬間瞬間でいい画を撮っていて、スイッチャーの目に留まれば拾ってもらえる。すごく勝負のしがいがあります。僕はそういうのにけっこう燃えるタイプなんです。サビが始まる前に、「絶対オレの画が一番いいぞ!」って思いながら構えて撮っていて、本当にパッと自分の画が拾われたときなんか、「ほらね!」って(笑)。
 2011年に初めて「FNS歌謡祭」に呼んでもらい、一番若手でカメラを持たせてもらいました。4時間半の生放送で6カットでしたが、本当に楽しかったです。「FNS歌謡祭」は歌番組が得意なカメラマンが集められているから、その中でやれるというのはすごく勉強になるし、刺激があります。しかもその中で自分の画が使われたなんて感激でした。

 

■ 本当にやりたいことは譲れない

 3年目に疲労が重なり腰を痛め、1カ月間の休養を会社から命じられました。現場を離れているあいだ、自分がカメラをやっていた番組のオンエアーを見るのは本当に辛かったです。自分がやる予定の映像のできがあまりよくなかったときは、テレビを見ながら泣きました。こんなにいい曲なのに、それが全然伝えきれてないことが悔しかった。どれだけ自分がカメラを好きなのか、歌番組に賭けているかを再認識しました。しかもその休養が原因で、ポジションを外されかけたんです。それで僕の代わりにつくことになっていた後輩に、「腰をやっちゃったのは自分の責任だからしようがないけれど、僕は遠慮しないよ」と宣戦布告しました。次の日にディレクターとチーフカメラマンに会いにいき、関係部署を回り、もう一度自分を戻してほしいとお願いしました。みなさん喜んでくれて結果的に戻ることができたんですが、本当にやりたいなら遠慮なんてしてられません。「どのカメラやりたい?」って聞かれたときに、「どこでもいいです」じゃなくて、「このカメラがやりたいです」ときちんとアピールすべきだと思います。僕は人前に出るのも、人と話すのも苦手だったのに、業界に入ってから変わりました。親も高校時代の友だちも、「人が変わっちゃった」ってびっくりしています。
 僕は、本番が終わったらディレクターとチーフカメラマンに必ずお礼を言うようにしています。たとえ次は呼ばれなかったとしても、自分が撮ったものがテレビに流れ大勢の人に見てもらえる、そのチャンスをもらえたってことはすごいことだから、きちんとお礼を言いたいんです。アーティストが表現したいと思っているものをしっかり撮ってあげられるように、ディレクターの意向にきちんと応えられるように、そして自分の思いもそこに込められるように、その瞬間に一番撮るべき画を撮り逃さないよう、音楽番組やPVなども研究し、しっかりイメージして撮影に臨むようにしています。「僕らの音楽」ではクレーンカメラを動かすクレーンマンを担当させてもらっているんですが、一緒にやらせてもらっているステディカムの先輩が、技術、センスともに素晴らしくて、いまいろいろと教えてもらっているところです。いつでも声をかけてもらえれば、すぐに撮れるよう着々と準備を進めています。いつか先輩を倒してその枠に入りたいと秘かに狙っているんです(笑)。先輩たちは仕事になったときの目つきが違う。近くにいるからこそわかるそんな気迫みたいなものも、貪欲に吸収していきたいと思っています。すごい人たちに囲まれ、レベルの高い現場に立たせてもらい、人にも、環境にも恵まれた。とても感謝しています。

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僕らの音楽 Our Music
(フジテレビ系にて毎週金曜日夜11時半から放送中)
※クレーンマンとして参加

 
この記事に関するお問合せは、こちらまで
info@c-place.ne.jp

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片野 裕史(かたの・ひろし)

カメラマン
1984年東京都生まれ。大学を2年で中退し、ミキサーを目指し日本工学院八王子専門学校放送芸術科(現クリエイターズカレッジ 放送・映画科)に入学する。企画、プロデュース、テクニカルディレクターを務めた卒業制作作品「もしもライブに行けたなら」(07)がJPPAアワード学生部門でシルバー賞を受賞。卒業後は番組制作会社ニュービデオに入社。カメラマンとしてフジテレビ系の音楽番組を中心に、ライヴ、イベント中継などでも活躍している。主な参加番組に、フジテレビ「MUSIC FAIR」「HEY!HEY!HEY!」「僕らの音楽 Our Music」「FNS歌謡祭」ほか、ロック・フェスティバルに、「イナズマロック フェス」「ap bank fes」など。

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