近年、地方テレビ局が制作したドキュメンタリー番組を映画化して劇場公開することが増えてきました。例えば東京の映画館、ポレポレ東中野では、本年だけでも『ヤクザと憲法』(東海テレビ)、『ふたりの死刑囚』(東海テレビ)、『ふたりの桃源郷』(山口放送)、『いしぶみ』(広島テレビ)、『五島のトラさん』(テレビ長崎)、『クワイ河に虹をかけた男』(瀬戸内海放送)と6本の地方局ドキュメンタリーの劇場版が公開されています。

ポレポレ東中野によると、作品が持ち込まれる機会も多くなっているとのこと。そして、その監督やテレビ局の方々は皆、丹念に時間をかけて取材をしています。ただ、完成したものを地元で放送して好評を得ても、国内コンテストや海外のテレビ祭などで評価されても、全国放送は深夜の時間帯に一度きりということが多いそうです。
そのため、もっと多くの人に観てほしい、作品として記録に残るものにしたい、という想いから劇場公開を目指すケースが多く見られるとのこと。

そして実際に公開してみると、どの制作者の方々も、劇場で観客と一緒に鑑賞したときのダイレクトな反応に驚き、拍手喝采に感激したと言います。電波放送という作り手と受け手の顔が見えない関係性ではなく、制作者と観客として顔を合わせられる喜びは、他には代えがたいものがあるようです。

また、ドキュメンタリー番組の劇場公開は、テレビ局のネットワークを越えた、地方から直接発信されるコンテンツとしても注目されていて、近年では劇場公開だけでなく、DVD化や、各地での上映会、ケーブルテレビ局での放送など、可能性はますます広がっています。
今後のテレビドキュメンタリーの劇場公開は数、質ともに向上していくことが期待されます。

このタイミングで近年の作品群を観返してみようと、この度ポレポレ東中野では、近年のテレビドキュメンタリーの劇場版から、地元の反対をも顧みず自衛隊のヘリコプターまでも投入し、強行な工事が進められている沖縄県高江のヘリパッド建設を追った2013年の『標的の村』(琉球朝日放送)を中心に、各地の放送局が製作した劇場版ドキュメンタリーを集めて上映します。

同時期には他の局より圧倒的に多い9本のドキュメンタリーを劇場公開している東海テレビ放送の作品を集めた特集上映も行います。地元に根付いたテレビ局だからできた記録の数々に触れられる機会となりそうです。

上映作品

沖縄/琉球朝日放送『標的の村』(2013)
2013年キネマ旬報ベスト・テン 文化記録映画第1位

愛媛/南海放送『放射線を浴びたX年後』(2012)
第50回ギャラクシー賞報道活動部門大賞

愛媛/南海放送『放射線を浴びたX年後2』(2015)
2015年キネマ旬報ベスト・テン 文化記録映画3位

新潟/TeNYテレビ新潟『夢は牛のお医者さん』(2014)
2016年サンディエゴ国際子ども映画祭最優秀ドキュメンタリー賞

大阪/関西テレビ放送『みんなの学校』(2014)
平成25年度文化庁芸術祭賞 ドキュメンタリー部門大賞

2016年11月12日(土)~11月18日(金) 連日13:00/15:30
日替わり上映 1,300円均一 @ポレポレ東中野

同時期開催企画

特集上映<東海テレビドキュメンタリーの世界>
東海テレビは、2011年2月に公開された『平成ジレンマ』以降、『死刑弁護人』や『ヤクザと憲法』といったドキュメンタリーの劇場公開を続けてきました。本特集上映は、その第10弾となる『人生フルーツ』が2017年正月に公開されることを記念したもので、ビデオグラム化の予定のないこれまでの劇場公開作を再びご覧いただく機会をと企画されたものです。その他、東海テレビドキュメンタリーの代名詞とも言える「司法シリーズ」や、戦後70 年の年に制作・放送されたシリーズ『戦後70 年 樹木希林ドキュメンタリーの旅』など、劇場初上映となる番組を含めた、全22作を一挙上映します。

~11月18日(金) 1,300円均一 @ポレポレ東中野
全16プログラム・22作品一挙上映!

上映タイトルや詳細は下記公式サイトにて
http://www.tokaidoc.com/

(2016年11月9日 CREATIVE VILLAGE編集部)